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親睦偏
勝手に決められました
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「…………え? 今なんか言った?」
「急な難聴止めてもらっていいですか?」
もちろん聞こえてはいた。
一字一句聞き逃さず。
その同音異義を疑うことすらできない単語を聞き遂げた。
だからこそだ。
その意味を理解したからこそ、意味が分からないのだ。
「……なんで、そうなる?」
「なんでって……むしろそうする以外になくないですか?」
「いやいやいやいやいや。だって今はツキと付き合うかどうかを悩んでるのに、どうしてデートをするってことになるんだ。それは付き合った後の話だろ?」
「は? アキラさん何言ってるんですか? 別に付き合ってなくてもデートくらいしません?」
「するわけないだろ! そっちこそ何言ってる!?」
「えー……? でも、付き合ってなくても男女が2人きりでショッピングとか、映画を観に行くとか、ザラにあることじゃないですか」
「それはただのお出かけだろ。デートじゃないじゃないか」
そう言うと、ツキがじとーっとした視線を向けてきた。
「……アキラさん、デートとお出かけの違いってなんだと思ってます?」
「そんなの……そういうことをするかどうかだろ……」
「そういうことってセックスですか? それともキスですか?」
「……キスとか、そういう恋人っぽいことだよ」
「うわ~……くっさー……」
ツキが顔の前を手で煽る。
今までのような瞳に♡を浮かべたような表情ではなく、心底呆れたような、蔑むような顔をしながら。
「アキラさん、それはさすがにヤバイですよ……。童貞くさいとか通りこして、おじさんくささが凄いことになってますよ……」
「うるさいな……どうせアラサーのおじさんだよ、俺は」
四捨五入して20代でいられる年齢はもうとっくのとうに過ぎている。
この年になってまだ童貞ということは、恋愛脳があまりにも未熟ということなのだろう。
ツキのようなイケイケな恋愛思考回路についていけないことはわかりきっていることだ。
「もう、しょげないでくださいよ。そんなアキラさんも私は好きですよ? 調教しがいがあるので……♡」
「いつも一言余計なんだよ……」
「それは最後の一言が無かったら嬉しかったってことですか? 私に好きって言ってもらえたら喜んじゃうんですか? ねえ、アキラさん?」
「そりゃ、相手の性別に依らず、好意を向けられること自体は嬉しいだろ。その好意が原因で迷惑を被らなければ尚良しだ。どっかの誰かは、勝手に家に侵入してきたけどな」
「そんなことよりアキラさん」
「そんなことって……」
ツキは本当に反省しているのだろうか。
また不法侵入なんてされたらたまったものではないのだが。
「今はそれよりもデートですよデート。この際アキラさんに合わせてお出かけでもいいです。一緒に外に遊びに行きましょう♡」
「えー……」
「ちょうど休日なので明日にしましょうか。アキラさんもそれでいいですよね?」
露骨に嫌そうな反応をしたというのに、ツキは無視してきた。
「いや、明日は……」
「何かあるんですか?」
「……なんもないけど。でも、休日くらい家でゆっくりした――」
「アキラさんが出てきてくれるまで、私玄関の外で待ち続けますから。アキラさんのお隣さんとかに心配されても、警察に通報されても、ずっと玄関の前でアキラさんの事待ち続けますから……♡」
「……目が怖いんだけど」
「急な難聴止めてもらっていいですか?」
もちろん聞こえてはいた。
一字一句聞き逃さず。
その同音異義を疑うことすらできない単語を聞き遂げた。
だからこそだ。
その意味を理解したからこそ、意味が分からないのだ。
「……なんで、そうなる?」
「なんでって……むしろそうする以外になくないですか?」
「いやいやいやいやいや。だって今はツキと付き合うかどうかを悩んでるのに、どうしてデートをするってことになるんだ。それは付き合った後の話だろ?」
「は? アキラさん何言ってるんですか? 別に付き合ってなくてもデートくらいしません?」
「するわけないだろ! そっちこそ何言ってる!?」
「えー……? でも、付き合ってなくても男女が2人きりでショッピングとか、映画を観に行くとか、ザラにあることじゃないですか」
「それはただのお出かけだろ。デートじゃないじゃないか」
そう言うと、ツキがじとーっとした視線を向けてきた。
「……アキラさん、デートとお出かけの違いってなんだと思ってます?」
「そんなの……そういうことをするかどうかだろ……」
「そういうことってセックスですか? それともキスですか?」
「……キスとか、そういう恋人っぽいことだよ」
「うわ~……くっさー……」
ツキが顔の前を手で煽る。
今までのような瞳に♡を浮かべたような表情ではなく、心底呆れたような、蔑むような顔をしながら。
「アキラさん、それはさすがにヤバイですよ……。童貞くさいとか通りこして、おじさんくささが凄いことになってますよ……」
「うるさいな……どうせアラサーのおじさんだよ、俺は」
四捨五入して20代でいられる年齢はもうとっくのとうに過ぎている。
この年になってまだ童貞ということは、恋愛脳があまりにも未熟ということなのだろう。
ツキのようなイケイケな恋愛思考回路についていけないことはわかりきっていることだ。
「もう、しょげないでくださいよ。そんなアキラさんも私は好きですよ? 調教しがいがあるので……♡」
「いつも一言余計なんだよ……」
「それは最後の一言が無かったら嬉しかったってことですか? 私に好きって言ってもらえたら喜んじゃうんですか? ねえ、アキラさん?」
「そりゃ、相手の性別に依らず、好意を向けられること自体は嬉しいだろ。その好意が原因で迷惑を被らなければ尚良しだ。どっかの誰かは、勝手に家に侵入してきたけどな」
「そんなことよりアキラさん」
「そんなことって……」
ツキは本当に反省しているのだろうか。
また不法侵入なんてされたらたまったものではないのだが。
「今はそれよりもデートですよデート。この際アキラさんに合わせてお出かけでもいいです。一緒に外に遊びに行きましょう♡」
「えー……」
「ちょうど休日なので明日にしましょうか。アキラさんもそれでいいですよね?」
露骨に嫌そうな反応をしたというのに、ツキは無視してきた。
「いや、明日は……」
「何かあるんですか?」
「……なんもないけど。でも、休日くらい家でゆっくりした――」
「アキラさんが出てきてくれるまで、私玄関の外で待ち続けますから。アキラさんのお隣さんとかに心配されても、警察に通報されても、ずっと玄関の前でアキラさんの事待ち続けますから……♡」
「……目が怖いんだけど」
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