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追及偏
語られました
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「この先……? それって、どういう意味ですか?」
「言葉通り、そのままの意味ですよ? 未来のアキラさんが1人の男性を愛している可能性は0なのか、それとも1パーセントでもありえるのかを訊いているです」
「それは……0とは言い切れないですけれど……」
この世に100パーセントがありえないのなら、0パーセントだってありえない。
しかもツキが訊いているのは未来のことについてだ。
人の心なんて1時間程度でも移り変わってしまうのだから、
未来なんて広いくくりで質問されてしまったら断言なんてできるはずがない。
「つまり、アキラさんは将来男性とお付き合いする可能性も、男性とセックスする可能性も、男性と結婚する可能性もあるわけですよね?」
「……可能性は否定できませんね」
「つまり、アキラさんはゲイ予備群ってことでいいですよね?」
「それは違くないですか!?」
「え? あー……そうですね……バイセクシャル予備群の方がいいですか?」
「そうじゃなくて!」
「何が違うと言うんですか? 可能性を否定できない以上、予備群であることだって否定できなくないですか?」
「それは……」
ツキの言葉は正しい。
しかしそれを認めてしまうと、LGBTという言葉自体が意味をなさなくなる。
「……それなら、全ての人達がバイセクシャル予備群になるじゃないですか。誰一人として、同性愛に目覚める可能性を否定することは絶対にできないんですから」
名前というのは区別するためにあるものだ。
ツキの言い分を認めた場合、この世にはバイセクシャルとバイセクシャル予備軍の2種類の人間しかいないことになってしまう。
それでは両性愛が恋愛の前提となってしまい、バイセクシャルという言葉すら必要ない。
「はい、私はそう思っていますよ? アキラさんがバイセクシャルじゃないと言えるのは今この瞬間だけです。人の中身の定義なんて、それくらいあやふやなんです。それなのに、アキラさんはそんなふわふわとしたものに拘るんですか? 今バイセクシャルではないというだけで、アキラさんは私を拒絶するんですか?」
「……いや、ツキさんとの間にある問題は、身体的なものもありますし……」
ツキとセックスをするということは、肉体を本来想定されているものとは違う使い方をするということだ。
入れられることだけでなく、入れることにも抵抗感はある。
「それなら、私とセックス無しのお付き合いをしていただけますか? 私のこと、嫌いじゃないんですよね?」
「そうですけど……」
「別れたくなったらいつでも相談してもらって大丈夫ですよ。付き合ってみたら馬が合わなかった、なんてこともありえるでしょうから。なんなら、キスも無しでいいです」
「……それは、恋人と言えるのですか?」
肉体関係が無くて、いつでも別れ話ができる関係は、はたして恋人と言えるのだろうか。
どちらかと言うと、友人に近いような気がしてしまうのだけれど。
「それを確かめるために付き合うというのもいいですね。どうですか、アキラさん? 私のプラトニックな彼氏になっていただけますか?」
「言葉通り、そのままの意味ですよ? 未来のアキラさんが1人の男性を愛している可能性は0なのか、それとも1パーセントでもありえるのかを訊いているです」
「それは……0とは言い切れないですけれど……」
この世に100パーセントがありえないのなら、0パーセントだってありえない。
しかもツキが訊いているのは未来のことについてだ。
人の心なんて1時間程度でも移り変わってしまうのだから、
未来なんて広いくくりで質問されてしまったら断言なんてできるはずがない。
「つまり、アキラさんは将来男性とお付き合いする可能性も、男性とセックスする可能性も、男性と結婚する可能性もあるわけですよね?」
「……可能性は否定できませんね」
「つまり、アキラさんはゲイ予備群ってことでいいですよね?」
「それは違くないですか!?」
「え? あー……そうですね……バイセクシャル予備群の方がいいですか?」
「そうじゃなくて!」
「何が違うと言うんですか? 可能性を否定できない以上、予備群であることだって否定できなくないですか?」
「それは……」
ツキの言葉は正しい。
しかしそれを認めてしまうと、LGBTという言葉自体が意味をなさなくなる。
「……それなら、全ての人達がバイセクシャル予備群になるじゃないですか。誰一人として、同性愛に目覚める可能性を否定することは絶対にできないんですから」
名前というのは区別するためにあるものだ。
ツキの言い分を認めた場合、この世にはバイセクシャルとバイセクシャル予備軍の2種類の人間しかいないことになってしまう。
それでは両性愛が恋愛の前提となってしまい、バイセクシャルという言葉すら必要ない。
「はい、私はそう思っていますよ? アキラさんがバイセクシャルじゃないと言えるのは今この瞬間だけです。人の中身の定義なんて、それくらいあやふやなんです。それなのに、アキラさんはそんなふわふわとしたものに拘るんですか? 今バイセクシャルではないというだけで、アキラさんは私を拒絶するんですか?」
「……いや、ツキさんとの間にある問題は、身体的なものもありますし……」
ツキとセックスをするということは、肉体を本来想定されているものとは違う使い方をするということだ。
入れられることだけでなく、入れることにも抵抗感はある。
「それなら、私とセックス無しのお付き合いをしていただけますか? 私のこと、嫌いじゃないんですよね?」
「そうですけど……」
「別れたくなったらいつでも相談してもらって大丈夫ですよ。付き合ってみたら馬が合わなかった、なんてこともありえるでしょうから。なんなら、キスも無しでいいです」
「……それは、恋人と言えるのですか?」
肉体関係が無くて、いつでも別れ話ができる関係は、はたして恋人と言えるのだろうか。
どちらかと言うと、友人に近いような気がしてしまうのだけれど。
「それを確かめるために付き合うというのもいいですね。どうですか、アキラさん? 私のプラトニックな彼氏になっていただけますか?」
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