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追及偏
飲まれました
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「お待たせしました」
ツキがお盆を持って戻って来る。
お盆の上にはカルーア、牛乳、おつまみの盛り合わせ、そして――
「ああ、すみません。飲みかけを持ってこさせてしまって」
カウンターに放置してしまっていたウーロン茶も乗せられていた。
「いえ、私が強引に引っ張ってきてしまったのが悪いので。チェイサーとしてお飲みになられますか?」
昨日のように酔い潰れるわけにはいかない。
悪酔い防止として、ソフトドリンクは手元に置いておいた方がいいだろう。
「はい、いただ――」
「あの……もしよければ、私がいただいてもいいですか……このウーロン茶」
「え?」
「喉が渇いちゃって……だめでしょうか?」
お盆をテーブルに置いたツキが、ウーロン茶の入ったグラスを両手で持った。
熱っぽい瞳に赤らんだ頬は、喉が渇いても仕方ないと思えるほどに火照っているように見えてしまう。
「い、いや、それは飲みかけですから。新しいのを注文しますよ」
「……これがいいんです。これを、私にいただけませんか?」
「で、でも……き、汚いですよ……」
「……くすっ♡ 昨日あんなことまでしておいて、今さらそれを言っちゃうんですか?」
「っ!」
それは、昨日も見たツキの笑顔。
可憐さと恐ろしさを併せ持った、小悪魔/捕食者の微笑み。
昨日ツキと体を重ねたのだとしたら、唇だって重ねていてもおかしくない。
口でも、きっと下でも、体液の交換は行われていて。
間接キスで動揺している姿は滑稽でしかないのだろう。
グラスを持ったツキが隣に座る。
これでもかとツキは体を密着させて、耳元へ口を寄せると――
「……いただきますね♡」
殆ど吐息でしかなかったその宣言は、
止める間もなく脳の中へとすり抜けていって――
ツキは両手で持ったグラスを見せつけるようにして、茶褐色の液体を呷った。
「んっ……んっ……んくっ♡」
こくこくと、飲んでることを強調するかのように喉を鳴らして。
味わうかのように瞳を閉じながら。
飲みかけのウーロン茶をツキは体内へと流しこんでいく。
止めることもできずに、ただ眺めていることしかできない。
魅了されるというのは、きっとこういうことなのだ。
頭ではツキにペースを握られていることがわかっていても、
心が屈服し始めているのを理解していても、
気持ちよすぎて思考が服従に傾いてしまっている。
脳をツキに侵されているというのに、
むしろもっと犯してとせがんでしまいたくなるような、
そんな感覚だ。
「ぷはっ……ごちそうさまでした♡」
空になったグラスを、ツキはこつんとテーブルに置いた。
「アキラさんのウーロン茶、とっても美味しかったです……♡」
「そっ、それならよかったです」
「それじゃあ、すぐにアキラさんの為にカルーアミルクをお作りしますね。アキラさんは私の作ったカルーアミルクがお好きですもんね?」
「え、ええ……好きですよ」
「……ちゃんと、言ってほしいです」
「え?」
「むーっ……アキラさんは、誰の作ったカルーアミルクでもいいんですか?」
唇を尖らせて、頬を膨らませて、ツキはわかりやすく不満を示して見せた。
その仕草は見た目通りの天真爛漫さで、不満気なのに愛らしさが隠しきれていない。
「えっと……ツキさんの作ってくれるカルーアミルクが好き、です……」
「……えへへっ……ありがとうございます……」
照れ笑いを浮かべながら、ツキは新しいグラスにカルーアミルクを作り始めた。
昨日の時点では、ツキはどちらかというと人見知りな部類だと思っていた。
しかし、今日のツキはあまりにも人懐っこくて甘え上手だ。
親しい相手にはこうなる、ということなのだろうか。
「……あの、アキラさん。私も、飲んでいいですか?」
「ええ、もちろん。牛乳でもウーロン茶でも、ツキさんもお好きに――」
「これ、飲んでもいいですか?」
そう言ってツキが掲げたのは作ったばかりのカルーアミルクだった。
「お酒ですか? でも、ツキさんはお酒は飲めないって……」
「飲めないですけど……飲んじゃいけないわけではないので……今日は飲みたいなーって思って……」
どうやらツキは未成年ではなかったようだ。
未成年と性行為に至った可能性がゼロになったことに安堵していると、
胸にぽてんとツキの頭が降ってきて――
「アキラさん……私、酔っちゃってもいいですか?」
ツキがお盆を持って戻って来る。
お盆の上にはカルーア、牛乳、おつまみの盛り合わせ、そして――
「ああ、すみません。飲みかけを持ってこさせてしまって」
カウンターに放置してしまっていたウーロン茶も乗せられていた。
「いえ、私が強引に引っ張ってきてしまったのが悪いので。チェイサーとしてお飲みになられますか?」
昨日のように酔い潰れるわけにはいかない。
悪酔い防止として、ソフトドリンクは手元に置いておいた方がいいだろう。
「はい、いただ――」
「あの……もしよければ、私がいただいてもいいですか……このウーロン茶」
「え?」
「喉が渇いちゃって……だめでしょうか?」
お盆をテーブルに置いたツキが、ウーロン茶の入ったグラスを両手で持った。
熱っぽい瞳に赤らんだ頬は、喉が渇いても仕方ないと思えるほどに火照っているように見えてしまう。
「い、いや、それは飲みかけですから。新しいのを注文しますよ」
「……これがいいんです。これを、私にいただけませんか?」
「で、でも……き、汚いですよ……」
「……くすっ♡ 昨日あんなことまでしておいて、今さらそれを言っちゃうんですか?」
「っ!」
それは、昨日も見たツキの笑顔。
可憐さと恐ろしさを併せ持った、小悪魔/捕食者の微笑み。
昨日ツキと体を重ねたのだとしたら、唇だって重ねていてもおかしくない。
口でも、きっと下でも、体液の交換は行われていて。
間接キスで動揺している姿は滑稽でしかないのだろう。
グラスを持ったツキが隣に座る。
これでもかとツキは体を密着させて、耳元へ口を寄せると――
「……いただきますね♡」
殆ど吐息でしかなかったその宣言は、
止める間もなく脳の中へとすり抜けていって――
ツキは両手で持ったグラスを見せつけるようにして、茶褐色の液体を呷った。
「んっ……んっ……んくっ♡」
こくこくと、飲んでることを強調するかのように喉を鳴らして。
味わうかのように瞳を閉じながら。
飲みかけのウーロン茶をツキは体内へと流しこんでいく。
止めることもできずに、ただ眺めていることしかできない。
魅了されるというのは、きっとこういうことなのだ。
頭ではツキにペースを握られていることがわかっていても、
心が屈服し始めているのを理解していても、
気持ちよすぎて思考が服従に傾いてしまっている。
脳をツキに侵されているというのに、
むしろもっと犯してとせがんでしまいたくなるような、
そんな感覚だ。
「ぷはっ……ごちそうさまでした♡」
空になったグラスを、ツキはこつんとテーブルに置いた。
「アキラさんのウーロン茶、とっても美味しかったです……♡」
「そっ、それならよかったです」
「それじゃあ、すぐにアキラさんの為にカルーアミルクをお作りしますね。アキラさんは私の作ったカルーアミルクがお好きですもんね?」
「え、ええ……好きですよ」
「……ちゃんと、言ってほしいです」
「え?」
「むーっ……アキラさんは、誰の作ったカルーアミルクでもいいんですか?」
唇を尖らせて、頬を膨らませて、ツキはわかりやすく不満を示して見せた。
その仕草は見た目通りの天真爛漫さで、不満気なのに愛らしさが隠しきれていない。
「えっと……ツキさんの作ってくれるカルーアミルクが好き、です……」
「……えへへっ……ありがとうございます……」
照れ笑いを浮かべながら、ツキは新しいグラスにカルーアミルクを作り始めた。
昨日の時点では、ツキはどちらかというと人見知りな部類だと思っていた。
しかし、今日のツキはあまりにも人懐っこくて甘え上手だ。
親しい相手にはこうなる、ということなのだろうか。
「……あの、アキラさん。私も、飲んでいいですか?」
「ええ、もちろん。牛乳でもウーロン茶でも、ツキさんもお好きに――」
「これ、飲んでもいいですか?」
そう言ってツキが掲げたのは作ったばかりのカルーアミルクだった。
「お酒ですか? でも、ツキさんはお酒は飲めないって……」
「飲めないですけど……飲んじゃいけないわけではないので……今日は飲みたいなーって思って……」
どうやらツキは未成年ではなかったようだ。
未成年と性行為に至った可能性がゼロになったことに安堵していると、
胸にぽてんとツキの頭が降ってきて――
「アキラさん……私、酔っちゃってもいいですか?」
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