魔王に見初められる

うまチャン

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第40話 久しぶりのデート2

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「俺は本当に一目惚れだったんだよな」

「えっ?」

「あの時、アンラの存在を初めて知った。魔王がいるとは聞いていたけど、本当にいるだなんて思ってもいなかったんだ。1番びっくりしたのは魔王が女だっていうことだったな。本物は見たことなかったし、言い伝えで男だったとしか聞いたことがなかったからな。今考えたら、それは多分アンラの父親なんだろうけど」

「男というのなら、間違いなくそうね」

 アンラは紅茶を一口飲んだ後にそう言った。

「だから、あの場所に跪いた時、結構ドキドキしててさ。相手は男だろうし、他国の人間だから絶対に処刑されると思ってた。でも、声を聞いたら女だし、接し方が妙に優しいと思ったら、目の前にはめちゃくちゃ綺麗な人いるし……。最初は本当に一目惚れだったよ。でも、一目惚れじゃ本当にアンラを好きになったかなんて確信ないから自分を疑ってた。でも、ここで住むようになって普段のアンラを見ていたら、自然と本気でアンラを好きになってしまった。だから……今こうして、アンラの傍に居られることが嬉しいんだ」

「ルーカス……。もう、いっつもそうやって不意打ちついてくるんだから……」

 アンラは頬を赤くしながら、また紅茶を飲む。
恐らく気を紛らそうとしているのだろうが、バレバレだし紛れていない。
でも、俺はその表情が好きだ。
市民に見せることは絶対にない、俺にしか見せてくれない表情だからだ。

「ルーカスはかっこいい」

「は?」

「何でも出来るし、優しいし、イケメンだし」

「ティ、ティナ……?」

 突然おかしな発言をし始めたアンラに、俺は動揺した。
しかし、アンラはお構いなく続けた。

「でも1番かっこいいと思う時は、ルーカスが守ろうとしているものがあったら、それを全力で守ろうとするところ」

「―――!」

「ルーカスはそうだよね? アーリア王国との戦いでもそうだった。シャイタンのために、そして自分の故郷が平和に出来るようにっていう思いが強く感じたの」

「アンラ……」

 アンラの言う通り、俺は性格上、守らなくてはいけないものがあったら、絶対に守り抜く。
自分で言うのもあれだが、正義感が強いのだろう。
アーリア王国が腐敗しきっている時も、俺はなんとかして変えて、幼少期の頃に戻してあげたいという思いが強かった。
 シャイタンという国に連れ去られ、アンラの好意でここで過ごすことになったが、すぐにこの国は素晴らしいと思うようになって、すごく好きになった。
そうなると、今度はこの国も守っていきたいと思うようになった。

「俺は欲張りなんだろうなあ……」

「そうね、ルーカスは欲張りね」

「ふぐっ……!」

 アンラは遠慮なくズバッと言われ、俺の心臓に矢が刺さる。

「でもね、わたしは決めたことは全力で向かう人が好きなの。もちろん魔族やモンスターたちにもそんな者はいっぱいいるけど、ルーカスは飛び抜けてた。ルーカスを初めて見た時、すぐに分かったの。剣を振っている時のあの目が、わたしにそう感じさせられた」

 アンラは俺の手を握り、それを見ながら言った。
本当にアンラは性格が良すぎると思う。
だが、その性格がこの国の見本となっていることで、この国も安定しているのだろう。
 俺もアンラのような、みんなのために考えてくれるような人が好きだ。
それもあって、俺はアンラに自然と惹かれていった。

「ルーカス」

「なんだ?」

「この後、ちょっとだけまた街の中を歩こう? 何だかこういう話が出来て嬉しいから、もっとルーカスと一緒に満喫したい!」

 アンラは俺の手をギュッと握って、楽しそうな顔をしながら言った。
それを見た俺はふっと笑った。

「ああ、もちろんだ! もっとデートを楽しもうか!」

「うん!」











◇◇◇










 たっぷりとアンラとのデートを楽しみ、俺たちは城へ戻ってきた。
サエイダの遊び相手を頼んでいたミライと、彼女の付き添いで乗り気になっていた、あのイチャイチャ変態カップルはどうしてるのか気になるところだ。

「おーい、今帰ったぞ……。おっと……」

「どうしたの?」

「しー。静かに入ってくれ」

 部屋の扉を開けると、ベットの上ではサエイダが、そしてサエイダの近くで見守るように座りながらベットの縁で寝ているホムラとミライがいた。
多分遊び疲れてしまったのだろう。
寝てしまうくらいに疲れてしまったとしたら、ミライにとっては良い勉強になったと思う。

「ふふっ……。何だか懐かしさを感じるわね」

「ああ、サエイダが走り回るようになってからの俺たちみたいだな……」

 ホムラとミライも、いつかは夫婦として過ごしていくことになるだろう。
もし2人の間に子どもが生まれてたとしても、予めこういう経験を積んでおけば、少しは子育てでも気を楽にすることが出来るだろう。
 子どもを育てるというのは本当に大変なことだ。
特に生まれたばかりの頃は、赤ちゃんは言葉を発さないで要求をしてくる。
それを十二分に理解する必要にあるため、ものすごい勢いで精神力を削がれることになる。
それに加え、常識も教えていかなければならない。

「わたしたちも、最初は本当に大変だったよね……。毎日こんな感じだったかも」

「そうだな……。それに、俺たちはお互い兄弟がいないってこともあって、子どもを育てることに苦労したよな」

「でも、ルーカスと協力しながらサエイダを育てて……。大変だけど楽しい! 自分の子どもがすくすくと大きくなっていくところを見れるのは、何だかんだ嬉しいもの」

「―――! ふっ、そうだな」

 アンラの言う通りだった。
大変だったけど、何だかんだ楽しかった。
俺とアンラは、子どもと接するのが好きなんだろうな。

「しばらくはそっとしとこう? わたしはちょっとだけお仕事してくるね」

「じゃあ、俺はセイフたちの様子を見てくる」

「分かったわ。じゃあ、また後でね」

 俺たちは短めに唇を重ねると、それぞれの場所へと向かった。
アンラと久しぶりにデートが出来て、今は気分がとても良い。
2人でしか話せないことを話すのもサエイダが生まれる直前が最後だったため、夫婦らしい会話が出来たと思う。
2人きりの休息も、案外悪くないものだな……。
 十分堪能できたところで、少しだけセイフたちの様子を見ていくか。

「『ワラムカリス』!」

 俺は魔法を詠唱して、国の国境を守っている者たちへと移動した。
目標を指定して詠唱すれば、一瞬で目的地に移動できるこの魔法は、光属性の魔法を持っている俺、コウキ、そして何故かティフィーが習得している。

「おう、調子はどうだ?」

「―――!? な、なんだルーカスか……。びっくりさせないでよ……」

「ごめんごめん」

 最初に訪ねた人物は、アーリア王国で剣帝の称号を持っていた、セイフ・フォスターだ。
その称号の名の通り、剣術に優れた才能を持っている男だ。
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