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第1話 聖帝
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この状況、どうしたらいいのだろうか。
今、俺の目の前に目をハートにしている女の子がいる。
その相手はただの女ではない。
あの世界最強と言われ、人間の間では最も恐れられている人物、魔王である。
「お願いです!私のそばに居てください!」
「えぇ……」
◇◇◇
俺の名前はルーカス・アンワル。18歳。
アーリア王国の守神に位置づけられる最高職『七帝』の一人だった。
だったと言うことは今は『七帝』では無いということだ。
それはなぜか。
答えは単純だ。俺より実力のある者が現れたからだ。
そもそも、七帝には
『剣帝』、『炎帝』、『氷帝』、『雷帝』、『木帝』、『土帝』、そして俺がいた『聖帝』がいる。
先ほども言った通り、俺以外は全員異界人だ。
異界人は転生時、神からの御加護を授かる。
いわゆる特権というやつだ。
中には地形を変化させてしまうものや、生態系を変化させてしまうもの、この世界を滅亡させてしまうようなものまであるらしい。
俺はというと、この世界の出身のため特権は持ってはいないが、それに匹敵するような技は持っている。
それに、今まで聖帝を超えるような異界人はいなかった。
属性は6つあるのだが、俺が操る『光』は6属性のどれにも入らない、かなりレアなケースだ。
光属性はとても強力で、6属性には比較にならない位の力を持っている。
異界人も例外ではなく、光属性はほとんど授かることはないらしい。
俺は運良く、光属性の力をこの世界で授かったため、すぐに王国の上位にのぼり詰めた。
しかし、転機が起きた。
異界人で光属性を授かった者が現れた。
そいつは俺と同じようにすぐに王国の上位にのぼり詰めた。
この地位は譲りたくなかったが、この世界で生まれ育った俺には異界人に勝てるはずもなかった。
光属性の魔法は他の属性に比べて強いということだけでここにいただけで、実際は異界人より弱いのは自分でもわかっていた。
そして、国王から追放を言い渡された。
アーリア王国を守ることが出来ない弱者として。
そして、俺はここで気づいてしまったのだ。
国王は異界人を信用しすぎていることに。
追放を言い渡され城を出た時、俺の中に後悔は全くなく、逆にこの国を軽蔑する事にした。
俺の中に残ったのは、
この国には二度と戻ってこない
そして、この国を滅亡させる
それだけだった。
◇◇◇
あの出来事からしばらくの間、俺は復讐するためにアーリア王国人には恐れられている狂獣の森で訓練していた。
狂獣の森は高レベルなモンスターが多く、冒険者ランクが最低でもA+以上ないと命の危険がある難易度の高いエリアだ。
ワーウルフ、ブラックスネークなど、危険度が高いモンスターを3日間全く休まずに次々倒していたが、休暇を全く入れていなかったことが原因で体は悲鳴をあげていた。
そしてついに俺は歩くことも出来なくなってしまい、倒れてしまった。
そして最悪なことに、どんどんモンスターが集まってくる。
あぁ、俺はこんな無様な姿で死ぬんだな。
そう思いながら俺の意識は薄らいでいった。
◇◇◇
「うっ……ここはどこだ?」
俺が意識を取り戻した時は暗闇の中にいた。
手には手錠がかけられ、壁に固定されていることから何者かに捕らえられたことがわかった。
うん、やっぱり魔力制御の付与がかけられた手錠のようだ。
魔法が使えない。
しばらくすると、奥にある扉が開いた。
暗いせいで誰かは分からないが、影は何となく見えた。
どう見ても人間の形をしていなかった。
「立て」
俺は、手錠をかけられたまま指示された通りに立ち、そして扉の方へと誘導された。
扉を抜けると……
「な、なんだここは!?」
そこには沢山のモンスターたち、魔族、そして立派な黒城が建っていたのだ。
「な、なぜこんな所に城が……?」
「うるさい!黙って歩け!」
怒られてしまったので俺は黙って歩くことにした。
てか、モンスターって喋れるんだな。
モンスター達や魔族達が楽しそうに城下町の大通りを歩いていく。
大通り沿いの店も繁盛しているようだ。
そうして街の様子を観察しているうちに黒城の前に着いた。
頑丈で分厚く、見上げるほどの高い城壁が黒城をぐるっと円を描くように囲まれており、城壁と黒城の間には水で満たされた縦幅のある巨大な濠がある。
その濠の上に架かる簡易的な吊り橋は、多分敵から侵入されそうになったらすぐに外せるようにするためだろう。
濠に架かる吊り橋を渡ると、俺の身長より低い入口に分厚い扉が目に入る。
なるほど、入口が低いのは敵が来た時に城内に入りにくくするためか。
魔族って結構頭のいいことするじゃねぇか。
城内に入る。
中も黒い石壁、入口から奥に向かって真っ直ぐ絨毯がひかれていて、それに沿って魔族、モンスターたちがずらりと少しもずれることなく並んでいる。
なんかすげぇ……よく分からないけど感動する。
さて、大広間を通り過ぎると大きな扉が見えてきた。
そういえばさっき思い出したんだが、多分俺がいる場所は魔物の国、シャイタン。
モンスター、魔族が中心の国で、人間で最も恐れられている者、魔王がいる場所だ。
まさか、本当にあるとは……。
大きな扉がゆっくりと開く。
ふむ……中はアーリア王城の構造と差程変わらないが天井が高く、とても広い。
先には玉座が見え、誰かが座っている。
多分魔王だろうが、玉座にはレースがかかっていて顔は見えない。
玉座の前の4段ある階段の前で止まった。
「跪け」
モンスターにそう言われ、俺は玉座の方向に跪く。
「……あなたの名は?何処の人間ですか?」
――ん?声が女のような気がする……。
「私はルーカス・アンワルと申します。
アーリア王国の者です。」
「ルーカス・アンワル、ですか……
もしかして聖帝と呼ばれた男の?」
「えぇ、その通りでございます。」
おぉ、まさか俺の名前が魔王にまで知れ渡ってたとは。
我ながら少し感動。
「そうですか、面を上げてください」
顔を上げると玉座にかかるレースがあがる。
魔王の姿が露わになると、思わず口を開けてしまった。
そこに居たのは絶世の美女と言えるほどの、黒い髪、頭に生えている角、細い体を持つ美少女だった。
しかし、あくまで相手は魔王だ。
魔族と対立している人間に、俺にどんな罰を言い渡すのだろうか……。
「私の部屋まで連れて来なさい」
「は」
え?俺殺されるんじゃないの?
あ、そう言い聞かせておいて安心させて処刑するってことか。
そんな回りくどいこと言わなくても……。
そんなことよりも、俺の隣にいるモンスターが羨ましそうな顔してるのは気のせいか?
「入れ」
「あ、あぁ」
部屋の中に入るとそこには魔王が窓の外を見ている。
本当に魔王の部屋だな。
「あなたは本当にあの聖帝のルーカス・アンワルなんですね?」
「えぇ、そうです。」
「……かっこいいですぅ!」
「はっ?」
今、俺の目の前に目をハートにしている女の子がいる。
その相手はただの女ではない。
あの世界最強と言われ、人間の間では最も恐れられている人物、魔王である。
「お願いです!私のそばに居てください!」
「えぇ……」
◇◇◇
俺の名前はルーカス・アンワル。18歳。
アーリア王国の守神に位置づけられる最高職『七帝』の一人だった。
だったと言うことは今は『七帝』では無いということだ。
それはなぜか。
答えは単純だ。俺より実力のある者が現れたからだ。
そもそも、七帝には
『剣帝』、『炎帝』、『氷帝』、『雷帝』、『木帝』、『土帝』、そして俺がいた『聖帝』がいる。
先ほども言った通り、俺以外は全員異界人だ。
異界人は転生時、神からの御加護を授かる。
いわゆる特権というやつだ。
中には地形を変化させてしまうものや、生態系を変化させてしまうもの、この世界を滅亡させてしまうようなものまであるらしい。
俺はというと、この世界の出身のため特権は持ってはいないが、それに匹敵するような技は持っている。
それに、今まで聖帝を超えるような異界人はいなかった。
属性は6つあるのだが、俺が操る『光』は6属性のどれにも入らない、かなりレアなケースだ。
光属性はとても強力で、6属性には比較にならない位の力を持っている。
異界人も例外ではなく、光属性はほとんど授かることはないらしい。
俺は運良く、光属性の力をこの世界で授かったため、すぐに王国の上位にのぼり詰めた。
しかし、転機が起きた。
異界人で光属性を授かった者が現れた。
そいつは俺と同じようにすぐに王国の上位にのぼり詰めた。
この地位は譲りたくなかったが、この世界で生まれ育った俺には異界人に勝てるはずもなかった。
光属性の魔法は他の属性に比べて強いということだけでここにいただけで、実際は異界人より弱いのは自分でもわかっていた。
そして、国王から追放を言い渡された。
アーリア王国を守ることが出来ない弱者として。
そして、俺はここで気づいてしまったのだ。
国王は異界人を信用しすぎていることに。
追放を言い渡され城を出た時、俺の中に後悔は全くなく、逆にこの国を軽蔑する事にした。
俺の中に残ったのは、
この国には二度と戻ってこない
そして、この国を滅亡させる
それだけだった。
◇◇◇
あの出来事からしばらくの間、俺は復讐するためにアーリア王国人には恐れられている狂獣の森で訓練していた。
狂獣の森は高レベルなモンスターが多く、冒険者ランクが最低でもA+以上ないと命の危険がある難易度の高いエリアだ。
ワーウルフ、ブラックスネークなど、危険度が高いモンスターを3日間全く休まずに次々倒していたが、休暇を全く入れていなかったことが原因で体は悲鳴をあげていた。
そしてついに俺は歩くことも出来なくなってしまい、倒れてしまった。
そして最悪なことに、どんどんモンスターが集まってくる。
あぁ、俺はこんな無様な姿で死ぬんだな。
そう思いながら俺の意識は薄らいでいった。
◇◇◇
「うっ……ここはどこだ?」
俺が意識を取り戻した時は暗闇の中にいた。
手には手錠がかけられ、壁に固定されていることから何者かに捕らえられたことがわかった。
うん、やっぱり魔力制御の付与がかけられた手錠のようだ。
魔法が使えない。
しばらくすると、奥にある扉が開いた。
暗いせいで誰かは分からないが、影は何となく見えた。
どう見ても人間の形をしていなかった。
「立て」
俺は、手錠をかけられたまま指示された通りに立ち、そして扉の方へと誘導された。
扉を抜けると……
「な、なんだここは!?」
そこには沢山のモンスターたち、魔族、そして立派な黒城が建っていたのだ。
「な、なぜこんな所に城が……?」
「うるさい!黙って歩け!」
怒られてしまったので俺は黙って歩くことにした。
てか、モンスターって喋れるんだな。
モンスター達や魔族達が楽しそうに城下町の大通りを歩いていく。
大通り沿いの店も繁盛しているようだ。
そうして街の様子を観察しているうちに黒城の前に着いた。
頑丈で分厚く、見上げるほどの高い城壁が黒城をぐるっと円を描くように囲まれており、城壁と黒城の間には水で満たされた縦幅のある巨大な濠がある。
その濠の上に架かる簡易的な吊り橋は、多分敵から侵入されそうになったらすぐに外せるようにするためだろう。
濠に架かる吊り橋を渡ると、俺の身長より低い入口に分厚い扉が目に入る。
なるほど、入口が低いのは敵が来た時に城内に入りにくくするためか。
魔族って結構頭のいいことするじゃねぇか。
城内に入る。
中も黒い石壁、入口から奥に向かって真っ直ぐ絨毯がひかれていて、それに沿って魔族、モンスターたちがずらりと少しもずれることなく並んでいる。
なんかすげぇ……よく分からないけど感動する。
さて、大広間を通り過ぎると大きな扉が見えてきた。
そういえばさっき思い出したんだが、多分俺がいる場所は魔物の国、シャイタン。
モンスター、魔族が中心の国で、人間で最も恐れられている者、魔王がいる場所だ。
まさか、本当にあるとは……。
大きな扉がゆっくりと開く。
ふむ……中はアーリア王城の構造と差程変わらないが天井が高く、とても広い。
先には玉座が見え、誰かが座っている。
多分魔王だろうが、玉座にはレースがかかっていて顔は見えない。
玉座の前の4段ある階段の前で止まった。
「跪け」
モンスターにそう言われ、俺は玉座の方向に跪く。
「……あなたの名は?何処の人間ですか?」
――ん?声が女のような気がする……。
「私はルーカス・アンワルと申します。
アーリア王国の者です。」
「ルーカス・アンワル、ですか……
もしかして聖帝と呼ばれた男の?」
「えぇ、その通りでございます。」
おぉ、まさか俺の名前が魔王にまで知れ渡ってたとは。
我ながら少し感動。
「そうですか、面を上げてください」
顔を上げると玉座にかかるレースがあがる。
魔王の姿が露わになると、思わず口を開けてしまった。
そこに居たのは絶世の美女と言えるほどの、黒い髪、頭に生えている角、細い体を持つ美少女だった。
しかし、あくまで相手は魔王だ。
魔族と対立している人間に、俺にどんな罰を言い渡すのだろうか……。
「私の部屋まで連れて来なさい」
「は」
え?俺殺されるんじゃないの?
あ、そう言い聞かせておいて安心させて処刑するってことか。
そんな回りくどいこと言わなくても……。
そんなことよりも、俺の隣にいるモンスターが羨ましそうな顔してるのは気のせいか?
「入れ」
「あ、あぁ」
部屋の中に入るとそこには魔王が窓の外を見ている。
本当に魔王の部屋だな。
「あなたは本当にあの聖帝のルーカス・アンワルなんですね?」
「えぇ、そうです。」
「……かっこいいですぅ!」
「はっ?」
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