レオン〜騎士道を知らずに騎士になった少年〜

お茶会の日

　お茶会当日。レオンは王子さまに失礼のないよう、いつも教会の礼拝に行くときに着ているよそ行きに着替えて屋敷を出た。まだ平民だし、非公式のお茶会だからこれで十分だ。床屋には昨日行ったし、あんまり生えてないけど髭も剃ってもらったから、顔全体がツルツルピカピカしてる。靴もピカピカに磨いてある。爪もきちんと切って、握手する際にお手を傷つけないようにやすりもかけておいた。「もしかしたら握手を求められるかもしれないよ」って母さんが言ってたから……。
　のどかな田園風景の広がる男爵領を通り抜け、かつて暮らしていた「土曜市の街」の外周の石畳の道を半周ぐるっと回って、馬車はお城へひた走る。この馬車は、以前の領主が残して行った立派な馬車だ。御しているのはレオンの父、息子のレオンは馬車の中。父はお城の正面玄関の車寄せまで来ると、御者台から降りて馬車のドアを開ける。
「レオン、ゆっくり愉しんでおいで。父さんは馬に水を飲ませて、すぐそこで待っているから」
「ありがとう、父さん。行ってきます」
　父は温かい笑顔でレオンを見送った。