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第三章 第六節

レナの気持ち

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マリアは二人に促す。
「取り敢えず、紅茶でも一口飲んで落ち着いてから、二人の話を聞かせて頂戴。今日お出ししたのは、英国ブランドの特別なフレーバーティーのアップルティーよ。」

二人は言われた通り一口飲む。

タカシは目を丸くして云う。
「なる程。飲んだ事の無い味だ。美味しいですよコレ。」

シゲノブは何かに気付いたように見える。それを見て、マリアはもしかしてと云う感じで尋ねる。
「シゲノブさんは、もしかして飲んだ事お有りでしょうか?」

シゲノブは頷き、続ける。
「はい。以前英国の親戚の家で頂いたのと、とても似ている味です。只、コチラの方が美味しい様な気がします。なんでだろう?」

マリアはニコッとして。
「おそらくは、入れ方と温度ね。きっと、シゲノブさんが英国の親戚の家で頂いたのと茶葉は同じでも、フレーバーティーは普通の茶葉よりも、入れ方と温度で凄い差が出るのよ。」

二人も落ち着き、さて本題に入りましょうと云う感じで三人共仕切り直し始める。背筋を伸ばし、顔を緊張させる。

タカシから切り出しす。
「シゲノブ、俺から話して良いかな?」

シゲノブは頷く。
「あぁ。今日は元々タカシとレナとの事の相談で、此処へ来てるからな。お前から相談した方が良いだろ。」

タカシ
「そうだな。ありがとう。」

マリアは、やはりと解っていた様で、ある本を取り出し、こう続ける。
「レナさんと云うのね、タカシさんの中にいるもう一人さんは。それで相談とはどんな事でしょう?」

タカシ
「俺の中にいる、召喚した女の子のレナを帰還させるか否か。その相談です。」

マリア
「分かったわ。先ず、レナさんと話してみても良い?レナさんは如何したいですか?自分の元居た処へ帰りたいですか?」

レナの気持ちは決まっていた。
「はじめまして。私、レナです。タカシさんのお身体をお借りしています。私は、転生する為にとある仙人様にお願いに伺う為に、旅に出たばかりの処で突然此処へ来ていました。何が何だか分らないまま、此処へ来ています。でも、確かに言える事があります。私はこのまま、タカシさんと共に生きてみたいです。此の、視える眼と共に。」

マリア
「そう。レナさんはこう言ってますけど、二人は如何すべきと思う?」

シゲノブは悩ましい顔つきで
「でも、レナの人生もあるし、帰してあげたほうが良いんじゃないかな」

タカシは意外にもあっさりしていて
「只なぁ。本人が居たいと言うなら俺はOKだな。それに、レナの記憶からすると、帰すと良くない様な気がしてならないんだよ。」

マリア
「そうね。おそらく、レナさんのお身体はもう既に亡くなっているかもしれないわね。帰す、イコール成仏させる事になるかもしれないわね。」

そう言うと、マリアは取り出した本を開き、二人に見せながら
「これを見て頂戴。一つの身体に二つの魂魄が入った場合、此の本によると、魂魄の融合が起こる事が有るらしいの。そうならない為に、どちらかを成仏させる必要があると。でも、こうも書かれています。融合してた後でも分離は可能で、その場合お互いの魂魄は、より早い成長を成し遂げると。どう?参考になりましたか?」

タカシ
「そう云う事なら、決まりだな。一緒に生きよう。レナ。」

レナ
「うん。ありがとうね。タカシさん。」

シゲノブは未だ不安なようだ。
「良いのか?それで。」

レナ
「改めて、シゲノブさん、これから宜しくお願いします」

シゲノブは未だオドオドしている
「良かったのか?これで?」

マリアは微笑んでいる。きっと、こうなる筈だと解っていた様である。
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