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春斗兄さんの話

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「その人さぁ、絶望的に料理センスがなかったんだよねぇ。
何故かケーキ作りとかだけ上手かったけど。」


直人お兄ちゃんがポツリポツリと話しだしてくれたことは、やっぱり私の知っている春斗兄さんの話だった。

…春斗兄さんと暮らし始めた時は料理が大変なことになってたんだっけ。
部屋も汚くはないけれど物がごちゃごちゃしていて、その時この人は私生活が残念なタイプの人だって思った記憶がある。
そのせいで料理や家事がメキメキ成長していって今の私があるわけだけど。


でも、私の誕生日のために作ってくれたケーキだけはすごく美味しかった。
最初の頃はただの木炭みたいな色してたけど。


「…ミコ?
どうかしたの?」


懐かしいことを聞いて少し表情が緩んでいたのかもしれない。
直人お兄ちゃんがそんなことを聞いてきた。



「ううん、なんでもない。
…その人、どうしてカルボナーラなんて作っていたの?」


春斗兄さんのことだから、ホイップクリームは泡立てた生クリームだから実質同じとか言って入れそうなのに。


「…好きだったからだと思うよ。」


「…え?」



好きだったから?



「春斗さんにその料理を作った人、死んじゃったんだ。
でも春斗さんはその人のこと、実の妹みたいに思ってたって言ってた。
だからきっと、その人が好きだったからこそその味を求め続けていたんだと思うよ。」


そう言った直人お兄ちゃんが少し申し訳なさそうな表情をしていたのは、私の死因が死因だったからかもしれない。
春斗兄さんは私がいなくなってからどんな生活をしていたのだろう。
聞いていた感じ直人お兄ちゃんとは意外と仲が良かったみたい?だけど。
…なんか複雑な関係だなぁ。


そんなことを考えながらカルボナーラを食べていると、急に窓から風が吹いた。
チラリと窓の方を見ると、そこには小さな影が一つ。


「…ハル?」


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