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もう少しだけ、皆のそばで

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ただいま私はライお兄ちゃんの部屋の中…というかこれは執務室みたいな感じだ。
中には私とクレアお姉ちゃんとライお兄ちゃん、そこにプラスでケイトお兄ちゃんがいる。


「で、ミコ。
2日半部屋から出なかった事情を聞いてもいいか?」


ライお兄ちゃんが心配そうな顔で聞いてくる。
…なんだこれ胸が痛い!



「ええっとですねぇ、そのぉ…。
…魔力切れしました。」


うっわ申し訳なさで言いずらいよ!



「魔力切れって…ミコがか?」



呆れたような反応が返ってくるかと思えば、返ってきた反応は驚きだった。
ライお兄ちゃんだけじゃなくクレアお姉ちゃんも、ケイトお兄ちゃんも驚いた表情だった。

…なんで?


「えっと、うん。」


「ミコさんはほんとにどんな大魔法を使ったんですか…?」


ケイトお兄ちゃんに言われて気づく。
…私魔力量は化け物なんだった…!


通常私が魔力切れを起こすほどの魔法は、とんでもない威力の魔法を連射するくらいしか方法がない。

そして私は五大属性はへっぽこ魔法使いの威力なので丸一日使い続けても魔力が切れることはないだろう。



…そりゃ魔力切れはおかしいよね!


ここで馬鹿正直に勇者なので勇者の魔法を試してたら魔力の9割が無くなりましたって言えば話は早いのかもしれない。
でも、私は。


「…ハルに魔力を吸われすぎちゃって、えへへ。」



きっと、本当の事を口にするとこの騎士寮での生活が、この皆との関係が、終わってしまう、そう感じた。


腕の中のハルを見る。
ハルは何か言いたげな顔をしながら私を見つめていた。



「ハル様ですか…精霊のことは分からないことだらけですから、そのような事があってもおかしくありませんね…ましてや契約精霊なんてもっと謎ですから。」 


クレアお姉ちゃんは納得したようにそう言った。


「まあ、精霊はよくわかってないしなぁ…。
食事に魔力を与えることすらミコとあって初めて知ったぞ俺は。」


「学者とかが知ったら喜びそうですねこの情報。」


うんうんと頷き合うケイトお兄ちゃんとライお兄ちゃん。


「まあミコ、危ない目に遭ったり怪我とかはしてないんだな?」



ライお兄ちゃんにそう問われる。



「う、うん!」



「なら俺たちはいいんだ。
今度は魔力切れになる前に事前に一言あると嬉しいが。」


そう言って頭を撫でられる。
その様子に…チクリと胸が痛んだ。

「ところでミコさん、髪型変えたんですか?
いつもの髪型も可愛らしいですが、今日の髪型も大人っぽくて可愛らしいですね。」


「ケイトはほんとに息をするように人を褒めるよな。」


「貴族社会の常の会話なので。」


「礼儀作法まで完璧とは…流石ですケイト兄様!」


「ブラコン…。」


なんてことない日常の会話。
なんてことない日常の風景。


いつかそう遠くない未来に、私は勇者だと話さなければいけないのかもしれない。

この光景が終わってしまうかもしれない。


でもどうか、その時まではこうしてみんなのそばに、ただの獣人のミコとしていさせて欲しい。

私は3人の会話を聞きながらそう思ったのだった。
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