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王城にて11

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「直人様、誰かお待ちでしたか?」

クレアお姉ちゃんがそう聞いた。


「誰かって言われるとミコを待ってたかな~。」


やっぱり私の事待ってたんだ。
でも、なんの用だろう?
今日あったばかりの私に話すことなんてある?のかな?



「クレアさん、ちょっとでいいからミコを貸してくれない?」



直人お兄ちゃんはそんなことを言う。


「ミコ様がよろしいのでしたら少しくらいなら構いませんが…。」


そう言ってチラッと私のことを見るクレアお姉ちゃん。


「うん、私も直人お兄ちゃんとお話したいなっ。」



そりゃあ王城にいる同じ勇者なんて話を聞きたいし、これを逃したらなかなか話せるタイミングもないだろうしね。

直人お兄ちゃんなら私の知らない情報も持ってそうだし。



「それじゃ、決まりだね。
僕の部屋でいい?」

にっこりと微笑んで直人お兄ちゃんが言う。

「構いませんが私も同席してもよろしいでしょうか?
ミコ様の護衛が仕事ですし。」


「もちろんいいよぉ、じゃあ行こっか。」


スタスタととても上機嫌そうな直人お兄ちゃんについて行く。


部屋にはすぐに着き、3人でテーブルを囲み込むように座った。



「直人お兄ちゃんは、私に何を話したかったの?」


気になったことを聞いてみる。


「いや、これといって特に話したいことがあった訳じゃないんだけどねぇ。
ただミコちゃんみたいに子供と話したかったかな。」

私と話したいと言うより子供と話したかったのかな?

「子供、好きなの?」


「…僕、前の世界で子供の時に事故にあっちゃってさぁ。
ほんとに死にかけたんだ。」


遠くのことを懐かしむ目で直人お兄ちゃんはそう言った。
事故、かぁ。
事故で死んだ私にはなんとも言えない!


「その時に庇ってくれた人がいるんだけど、その人は僕を守ったせいで死んじゃったんだ。
僕が7歳くらいの出来事だったよ。
その人にも、その人を大切に思っていた家族の人にもものすごく申し訳なくて、僕があの時あんなことをしなければって何度も思ったよ。」


…子供の頃にそれは重くない?
聞いてる側も辛いよ?

「その人の家族の人がさ、その人のこと沢山教えてくれたんだ。
色んな人に好かれていて、家事が得意で、今年大学に進学するんだって喜んで言っていたって。」


…ん?今年、大学に進学する?
家事が得意?

「その人が守ってくれたように僕もたくさんの人を、子供たちを守りたくて警察官っていう職業になったんだぁ。
その仕事をしていくうちに次第に子供が好きになっちゃってさぁ、」


「…1個質問いい?」



何となく、予感がした。
この話はもしかして、


「その事故はどんな事故で、その人はどんな名前だったの?」



「んー?
電車の事故…この世界で言うものすごい早い馬車に引かれるみたいな事故だったよ。
僕の飼い犬がそこに飛び出して轢かれそうになっていて僕も一緒になって飛び出してさぁ。
轢かれる直前に僕たちを突き飛ばして庇ってくれたんだぁ。」

予感が的中した、そう察する。

「その人の名前はねぇ…すごいことにミコと同じ名前なんだ~。」

やっぱり直人お兄ちゃんは、私が死ぬ前に庇った男の子だ。
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