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第13話 元公爵令嬢カトレア

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 奴隷、いやメイドを雇おうと思ったレンヤ。
 このフィオナ王国城下町に住み始めて、はや一週間。絵画を始め、最近は陶芸もし始めた。それが芸術ギルドに売れた。しかも高値で。自宅の他に、アトリエ兼工房も購入したレンヤ。最初は趣味の範囲に留めようとしたが、自分でも惚れ惚れする作品が出来たので本格的な生業にした。

 ちなみに、何故レンヤにメイドを雇うまで金銭的に余裕があるかといえば、治癒師や指導者として得る収入は家の金でギルドの口座に入っていた。それをシュウの妻たちカナ、ユイ、エレノアが預かって家を営んでいた。
 だが、箪笥預金ならぬ収納魔法預金と言うのもあった。それはどういう収入かと言うと、シュウはギルドでは手に負えない案件を秘密裏にギルドから依頼されていた。それは盗賊や山賊などの賊徒討伐である。レンヤは姿も見せずに賊徒を討てる。
 その報酬により得たゴルダーが収納魔法預金だ。それが現在も魔法内にある。ゴルダーと言う通貨価値は世界共通だからレンヤはかなりの資産家と言える。

 異世界転生ものの定番、メイドを雇おうとするなら奴隷商館だ。
 グランシアでも、よく奴隷は買った。治癒師と指導者として働き、金銭的な余裕はあったので見込みのある奴隷はどんどん買って教育して解放した。
 グランシアでレンヤは『義勇の士』として称えられているが、彼の後半生シュウは『王国の師父』として称えられ、南門のレンヤ像、北門にシュウの像が建てられている。いまだにレンヤはシュウ像を見たことがない。いや正確には見られないのだろう、恥ずかしくて。

 話を戻す。フィオナの城下町でもっとも評判のいい奴隷商館を訪ねたレンヤ。
「いらっしゃいませ」
 店主のケムラーが応対。レンヤは
「自宅の他にアトリエ兼工房、窯などがある。二つの建物があって掃除が俺一人では手に負えない。料理や掃除が出来る分別を弁えた者が欲しい。出来れば女が良いが該当が無ければ執事として雇うので男でもいい」

 ケムラーは奴隷たちが待機している部屋へと連れて行ったが、レンヤはこれという者が無い。そして
(人体腐臭…)
 敏感にそれを感じ取ったレンヤ。前世消防士であったころ、さんざん嗅いできた臭いだ。
 腐乱死体の領域まで至らない。床ずれか、火傷により壊死した、そのくらいだ。
 だが、それでも強烈なにおいを放つもの。商館側はにおい袋か魔道具で、悪臭が広がらないようにしていたようだが、この人体腐臭のにおい。元消防士には誤魔化せないか。

「店主、あの向こうの部屋にいる者は?」
 眉を顰めるケムラー
「あれはですね…。王室で公開刑に処せられた元公爵令嬢ですよ。何でも王太子殿下の元婚約者だったそうですが、それを解消され、取って代わられた婚約者を害そうとして失敗、家からは勘当、貴族籍も剥奪され、顔と体に大やけどを負わされる火刑、そして右腕と両下肢を切断される断刑、そのうえで当商館に押し付けられました」

「ほう、見せてくれないか」
「え?」
「そういう不幸な生い立ちの女は興味ある」
「おやめになった方がいいかと。その女の顔貌は醜く…それがため婚約解消されたので」
「いいから見せてほしい」
 地下牢のような室内、一番奥の部屋、枷に手を拘束された元公爵令嬢がいた。すべてに絶望した目をしている。
 レンヤは鑑定した。

名前 カトレア・セナ・キュイジーヌ
年齢 16歳
身分 元王立学園学生 キュイジーヌ公爵家長女
魔法 治癒 水(本人未周知)

 レンヤはニィと笑った。異世界転生もの物語の定番、奴隷商館の売れ残りには大当たりがいるもの。治癒魔法と水魔法が使えるのは強みだ。

「俺はレンヤ、この町で絵と陶芸を生業としている」
「…………」
「俺の身の回りの世話をしてくれればいい。夜の相手は望まない。女が欲しければ色町に行くからな」
「…………」
 女は喉も焼かれて話すことは出来ない。レンヤは思念を飛ばす。

『聞こえるか?』
『……!聞こえるわ』
 女も頭の中で言葉を返した。
『…君を買おうと思う』
『…何を言っているの?私は見ての通り、右腕と両足がなく、大火傷も負っている。こんな私をどうしようと?』
『考えがあってのことだ。君に拒否権はないよ?』
『…もう、どうでもいい。好きにしてよ…。でも、外には出たい。買ってくれたら嬉しいわ』
『分かった』「店主、この女はいくらだ?」

 まさか売れるとは思わなかった店主のケムラー、王室から売ってはいけないとは指示されていない。というより買う者などいるはずないと思っているのだろう。
「い、一万ゴルダーですが…」
「買った」(元公爵令嬢が一万ゴルダーか)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 レンヤはカトレアを背負い、自宅へと歩いた。マントは元から持っていたのでカトレアにかぶせた状態で歩く。
『…公開刑のあと、さらに念入りにやられたわ。膣と肛門に焼けた鉄棒を入れられて…私はいま放屁と便の区別もつかないのよ』
『ひどいな…』
『私は性奴隷にもなれない。でも』
『でも?』
『歯ぁ全部抜かれたから、歯茎と舌を使ったフェラチオくらいは出来るかな。それで許してよ』
『そうヤケになるな。女として君を選んだわけじゃない』
『…………』

 レンヤの自宅に着いた。
『二人では手狭かもしれないが、仕事場は広いからな。君も掃除が大変だと思う』
『掃除なんて出来るわけないでしょ。こんな芋虫みたいな体で』
「さて…。始めるか」
『……?』
「『睡眠』」
 カトレアはすぐに深い眠りへと落ちた。

 しばらくして目を覚ました。同じ部屋にいたレンヤ、机に向かい、何かを描いている。
「……あの」
 ……!?カトレアは驚いた。声が出たのだ。
「起きたか『鏡』」

 レンヤのベッドで横になっていたカトレアの前に鏡が。カトレアは茫然としている。
 火傷の痕がすべて消滅しており、失った四肢が戻っている。
 歯も戻っていて、そして茫然としているうち、無意識に可愛い放屁をしてしまった。肛門の機能も元に戻っている。金色の美しい髪も、何もかも戻っている。ボロの下にある乳房は光沢を放ち、手で触れてみると膣も元に戻っていた。首にあった奴隷環も外れている。頬を抓った。鏡に映るカトレアも同じことをしている。カトレアは

「あ、あああ、ああああああああ!」

 大粒の涙を流した。レンヤがしてくれたこと、全部わかった。レンヤは
「いや、俺じゃない。俺が知らないうちに親切な人が来て施してくれたんだ」
 と、一秒で嘘だと分かることを言うが、恩に着せようとしない姿勢にもしびれたカトレア。
「ありがとう…!ありがとう!」
「いや、奴隷商館の店主の目は俺の魔法でも治せんな。君のどこが醜女なのか」
 カトレアが醜女と称されていたのは何てことはない、病による痘痕だ。他に染みもあれば吹き出物だってある。しかし、それが一斉に消えたらどうなるか。それはもう、女神の領域の美貌だ。

 そしてレンヤは今さっき描いていたものをカトレアに見せた。
 それはカトレアの美人画である。しかしモナリザのように座して佇んでいるものではなく、レンヤが知るスマートフォンアプリゲーム『アイドル☆DREAM!!』のSSRカードのような躍動感ある絵だ。

 最高のプレゼントと言える。カトレアはスケッチブックを握って涙を落とした。
 そしてボロを完全に脱いだカトレア
「私を抱いて。貴方に仕えるのはそれが条件」
「女は娼婦でいい。何かの代償で女を抱くのは好まない」
「…女に恥をかかすの?女は娼婦でいいと言うなら私は娼婦になってでも貴方に抱かれることを望むわ」
 頭を掻いたレンヤ。
「君、生娘だろう」
「ええ、でも私にとって処女を捧げるのは貴方しかいない」
「そうか…。素人娘は久しぶりだ。激しくなるぞ」
「ふふっ、望むところよ、ご主人様」


 レンヤはカトレアを堪能、最初は痛がったが、それからは乱れに乱れまくった。
「上手なのね…。何度イッたか分かんない」
「女は娼婦でいいと言ったが女は好きだからな。今まで何人ともしているから、おのずと閨房も上手くなったよ」
「…私はメイドとして貴方に仕える。伴侶を得て、私との関係を終えても文句を言う気はないわ。奥方と子供に誠心誠意仕える」
「そうか」
 気だるそうにベッドから起きたカトレアは改めて頭を垂れた。
「これからよろしくお願いいたします。ご主人様」
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