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俺が全部、消毒してやるから
しおりを挟む「はぁ……」
カインに続いてレイゼルまで……二人とも一回目と同じように私を……。
何で?
私、二人に何もしてないのに。
むしろフラグ折にかかってるっていうのに、何で、どうしてこうなった?
わからない。
わからな過ぎて脳みそ膿んで沸きそう。
「……大丈夫か?」
「へ?」
部屋に入ったところでセイシスが私に声をかけ、思考の渦に沈みかけていた私は我に返って立ち止まる。
「な、何が?」
「いや、朝からなんか変だろ? 朝食中も、三回もフォークを落とすし、サラダを口じゃなくて目に入れようとしてたし、シロップだってミルクに入れるんじゃなくて直飲みしようとしてただろうが」
「うっ……」
よく見てるわね、この男。
どれもすんでのところで気づいて、バレないように振舞ったというのに……!!
さすが自称私のお守役だわ。
「まさかお前……昨日の夜レイゼルと何か……!!」
「ないないないないっ!! レ、レイゼルが迫ってくるとか、そんなことあったわけじゃないからぁぁあっ!! ……ぁ……」
「……」
「……」
「……迫られたな?」
私のポンコツーーーーっ!!
「……はい……」
面目ない。
あぁ、これでまたセイシスに小馬鹿にされ──「!?」
「すまん」
突然腕を惹かれてすっぽりとセイシスに抱きしめられた私の身体。
え、何?
一体どうなって……。
「俺が油断したばっかりに……」
静かにかすれた声が耳のすぐ近くで響く。
「せ、セイシ──っ!?」
抱きしめられたまま反転した私は、ボスン、とベッドへと押し倒された。
自分の状況に気づいた時には、セイシスは私の首元へとその綺麗な形の唇を近づけていった。
「ひゃっ!?」
な、何!?
「どこ、触られた? ここ? それとも──こっち? 俺にちゃんと教えろ。全部消毒してやるから」
「んっ」
長い指が唇に触れる。
何考えてるのセイシス!?
そんなことされたら、し、心臓が……!!
ていうかこんな展開初めてすぎてで予習もできてないんだけど!!
「まさかお前……最後まで……?」
「す、するわけないでしょ!! 頭突きで退治したわ!!」
私の叫びが部屋に響いて、セイシスが動きを止め、場がしんっ……と静まり返った。
目の前にはぽかんと口を開けて固まるセイシスの顔。
「ず……つき……? ……ぷっ、はっはははははっ!!」
さっきまでの大人な顔が嘘のように腹を抱えて笑い出したセイシス。それはもう目に涙まで浮かべて、盛大に。
あまりのさっきまでとのギャップに今度は私の方がぽかんと口を開いたまま動きを止めた。
「な、何よ!? 私は、私を守ろうと必死に──!!」
「いや悪かったって。うん、よくやった。頭突きは予想外だったろうな、レイゼルも」
手を引いてベッドから私を引き起こすと、セイシスは私の頭をくしゃくしゃと撫でて言った。
「何はともあれ、無事でよかったよ。……リザ。お前を守るのは俺の仕事だなんて言いながら、ちゃんと守れなくてごめん」
「仕方ないでしょ? セイシスはお父様の呼び出しを受けていたんだから」
国王からの呼び出しに応じないわけにはいかないし、何よりレイゼルには婚約者候補の思いを受ける気はないと話していたのに、向き合うことにしただなんて、迂闊なことを話した私にも責任はある。
油断しすぎたのは、私も同じだ。
「いや。それでも俺が一番優先するのは陛下じゃない。ごめんな、不安にさせて」
「っ……」
何でこんな時ばっかり優しくするのよ、セイシスのくせに。
何か……胸がざらっとする。
いや、ぞくっと?
どっちみち変な感じだわ。
「そ、それじゃもうこの話は終わり!! セイシス、少し図書室に行くわ」
「図書室に?」
とりあえずカイン王子との貿易は順調だからいいとして、フロウ王子のフローリアンの問題をきちんと解決してあげたい。
「調べものよ」
正直花とか詳しくないから、まずはフローリアンの花について調べないとね。
「別についてこなくてもいいけど?」
「はいはい。可愛くないこと言わない。もちろん、お供しますよ。俺のトンデモ姫様」
セイシスはそう呆れたように言いながら立ち上がると、取ったままの私の手の甲へとわざとらしく1つ口づけた。
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