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いかがわしいの、たくさん。
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「ね、ねね、閨授業って……」
あぁもう口が回らないわ。
でもそうだ。そういえばそんなもの一回目もあったわ。
「リザ王女殿下の婚約から結婚、そして世継ぎを作るという過密スケジュールが決まった以上、閨教育を早急に行う必要があります。今までは極力好いた男と、という陛下の自由恋愛主義に則りそういう教育を施されませんでしたが、今回ばかりはそうも言ってはいられないということで、せめて初夜で恐れの無いよう、しっかりとした閨教育を施すようにとご命令になりました」
有難迷惑だわ!!
ていうか親に閨の心配とかされたくないわ!!
「大丈夫。その道のプロを用意しております」
そ、その道のプロって……まさか……。
「高級娼館の一番人気の男娼、レイゼル・グリンフィードでございます」
やっぱり前世の夫の一人ぃぃいいいいい!!
「娼館って……大丈夫なのか、宰相。そんな輩にリザ王女の身体を任せて……」
セイシスが珍しく私の心配をしてる……!!
あなた、私を心配するという心があったのね……!!
「えぇ、大丈夫です。レイゼルは一番人気と言えど、最後までは行うことのない高級男娼。もちろん病気や素行についてもしっかりと検査と調査をしております」
最後まで行うことのない男娼……って……それまでの過程でしっかりと満足させてるからこその一番人気ってことよね?
あらためて聞くとすごすぎるわ……。
まぁ、それもそうよね。何を隠そうこのレイゼルこそが、一度目の人生での私の閨授業の相手でもあり、初めての相手でもあり、私を色欲に落としビッチ悪役王女にしたてあげた張本人なのだから。
もう決して落とされたりしないわ!!
こっちは命がかかってるんだから!!
「今夜から10回の授業で、このレイゼルがリザ王女の寝所に通います。その際に、閨の手ほどきを受けてください」
「こ、今夜から!?」
急すぎない!?
心の準備とか出来てないんだけど!?
「はい。それまでにしっかりと心の準備をしておいてくださいね。では失礼」
「え!? ちょ、ちょっと!?」
戸惑う私をそのままにして、テレンシー宰相は綺麗な一礼をすると部屋から去っていった。
「……嘘でしょぉ……?」
***
何の対策もないままに日は落ち、夜が来てしまった。
私はお風呂に入れられピッカピカに磨き上げられると、ぴらっぴらの薄い肌着に着替えさせられた。
いや、無理。
一回目の私はこれを受け入れて成すがままだったけれど、今回は違う。
命がかかってるんだから、このまま成されてたまるもんですか。
薄い肌着の上から黒のワンピースを着て少しでも布面積を増やしてその時を待つ。
そして──コンコンコン、と小さなノック音。
キタァァァアアアア!!
「ひゃ、ひゃいっ!!」
緊張のあまり噛んでしまったけれど通じたようで、扉がゆっくりと開く。
けれど、部屋に入ってきたのは私が待っていた人物ではなく──。
「セイ……シス?」
「よっ」
よっ、じゃねぇぇぇええええ!!
私の緊張返せ!!
「何でセイシスがここに来るのよ!?」
今から閨授業だってのに!!
「いや、緊張してんのかなーって思ってさ。結局何も考えがまとまってなさそうだったし……」
私の、ために?
「で、閨教育、どうだ?」
「どうだ? じゃないわよ!! だいたい、私には閨教育なんて必要ないんだから」
だって人生二度目だし。
しかも一度目は夫五人持ちのビッチ王女……。
いやいらん。
閨教育とか、今更いらん。
「……は?」
セイシスの低い声が冷たさを帯びて、部屋に響いた──刹那。
ドサッ……。
「ひゃっ!?」
私の身体がぐるりと回転し、視界いっぱいに広がったのは、表情を失くした、見慣れたはずのセイシスの顔。
「せ、セイシ……」
「どこで覚えた?」
「はい?」
「俺の目をかいくぐって、一体どこの誰と? 相手は誰だ?」
何か目が怖いんだけど!?
ソファに組み敷かれ黒曜石が私を見下ろす。
こんな、こんな顔、私、知らない。
こんな……男の人、みたいな……。
「この白い肌に、誰が触れた? 俺以外にこの髪に触れるのを許したのは誰だ?」
首筋に、そして髪に、なぞるように這い上がるセイシスの長い指先。
「せっかく、俺が守ってきたのに……。いつの間に……」
ま、まずい、セイシスがなんかおかしいわ!!
と、とにかく、何とか誤解を解かないと!!
「だ、誰ともそんな関係にはなってないわよ!! あんた常に私にくっついてるでしょ!? 私に男っ気がないの一番よく知ってるでしょ!! その……あれよ!! 本!! 本で読んだの!! たくさん!! そういう……なんか……いかがわしいやつ!!」
「……」
「……」
あぁ……これはひどい言い訳だ。
何だ、いかがわしいやつって。
しかもたくさん読んだとか……。
ただの欲求不満王女じゃない。
そんなので納得するわけが──。
「……そっか」
したぁぁあああああ!?
腕をつかんでいた手の力が抜け、私の上からゆっくりと起き上がるセイシス。
なんかまた別の誤解を受けたみたいだけど、まぁ、落ち着いてくれたみたいでひとまずはよかった、のかしら?
「じゃぁ、お前、実経験は……」
「(二度目の人生では)ないわよ馬鹿!!」
「そっか……そう、か、うん、なら、いい」
いい、じゃないわぁぁあああ!!
こいつは私の何なの!?
保護者か!?
ゆっくりと起き上がった私を見て、セイシスがやたら嬉しそうに笑った。
「ていうか、いかがわしい本たくさんって……やらし」
「~~~~~~っ!?」
一体何なのよぉぉおおお!?
あぁもう口が回らないわ。
でもそうだ。そういえばそんなもの一回目もあったわ。
「リザ王女殿下の婚約から結婚、そして世継ぎを作るという過密スケジュールが決まった以上、閨教育を早急に行う必要があります。今までは極力好いた男と、という陛下の自由恋愛主義に則りそういう教育を施されませんでしたが、今回ばかりはそうも言ってはいられないということで、せめて初夜で恐れの無いよう、しっかりとした閨教育を施すようにとご命令になりました」
有難迷惑だわ!!
ていうか親に閨の心配とかされたくないわ!!
「大丈夫。その道のプロを用意しております」
そ、その道のプロって……まさか……。
「高級娼館の一番人気の男娼、レイゼル・グリンフィードでございます」
やっぱり前世の夫の一人ぃぃいいいいい!!
「娼館って……大丈夫なのか、宰相。そんな輩にリザ王女の身体を任せて……」
セイシスが珍しく私の心配をしてる……!!
あなた、私を心配するという心があったのね……!!
「えぇ、大丈夫です。レイゼルは一番人気と言えど、最後までは行うことのない高級男娼。もちろん病気や素行についてもしっかりと検査と調査をしております」
最後まで行うことのない男娼……って……それまでの過程でしっかりと満足させてるからこその一番人気ってことよね?
あらためて聞くとすごすぎるわ……。
まぁ、それもそうよね。何を隠そうこのレイゼルこそが、一度目の人生での私の閨授業の相手でもあり、初めての相手でもあり、私を色欲に落としビッチ悪役王女にしたてあげた張本人なのだから。
もう決して落とされたりしないわ!!
こっちは命がかかってるんだから!!
「今夜から10回の授業で、このレイゼルがリザ王女の寝所に通います。その際に、閨の手ほどきを受けてください」
「こ、今夜から!?」
急すぎない!?
心の準備とか出来てないんだけど!?
「はい。それまでにしっかりと心の準備をしておいてくださいね。では失礼」
「え!? ちょ、ちょっと!?」
戸惑う私をそのままにして、テレンシー宰相は綺麗な一礼をすると部屋から去っていった。
「……嘘でしょぉ……?」
***
何の対策もないままに日は落ち、夜が来てしまった。
私はお風呂に入れられピッカピカに磨き上げられると、ぴらっぴらの薄い肌着に着替えさせられた。
いや、無理。
一回目の私はこれを受け入れて成すがままだったけれど、今回は違う。
命がかかってるんだから、このまま成されてたまるもんですか。
薄い肌着の上から黒のワンピースを着て少しでも布面積を増やしてその時を待つ。
そして──コンコンコン、と小さなノック音。
キタァァァアアアア!!
「ひゃ、ひゃいっ!!」
緊張のあまり噛んでしまったけれど通じたようで、扉がゆっくりと開く。
けれど、部屋に入ってきたのは私が待っていた人物ではなく──。
「セイ……シス?」
「よっ」
よっ、じゃねぇぇぇええええ!!
私の緊張返せ!!
「何でセイシスがここに来るのよ!?」
今から閨授業だってのに!!
「いや、緊張してんのかなーって思ってさ。結局何も考えがまとまってなさそうだったし……」
私の、ために?
「で、閨教育、どうだ?」
「どうだ? じゃないわよ!! だいたい、私には閨教育なんて必要ないんだから」
だって人生二度目だし。
しかも一度目は夫五人持ちのビッチ王女……。
いやいらん。
閨教育とか、今更いらん。
「……は?」
セイシスの低い声が冷たさを帯びて、部屋に響いた──刹那。
ドサッ……。
「ひゃっ!?」
私の身体がぐるりと回転し、視界いっぱいに広がったのは、表情を失くした、見慣れたはずのセイシスの顔。
「せ、セイシ……」
「どこで覚えた?」
「はい?」
「俺の目をかいくぐって、一体どこの誰と? 相手は誰だ?」
何か目が怖いんだけど!?
ソファに組み敷かれ黒曜石が私を見下ろす。
こんな、こんな顔、私、知らない。
こんな……男の人、みたいな……。
「この白い肌に、誰が触れた? 俺以外にこの髪に触れるのを許したのは誰だ?」
首筋に、そして髪に、なぞるように這い上がるセイシスの長い指先。
「せっかく、俺が守ってきたのに……。いつの間に……」
ま、まずい、セイシスがなんかおかしいわ!!
と、とにかく、何とか誤解を解かないと!!
「だ、誰ともそんな関係にはなってないわよ!! あんた常に私にくっついてるでしょ!? 私に男っ気がないの一番よく知ってるでしょ!! その……あれよ!! 本!! 本で読んだの!! たくさん!! そういう……なんか……いかがわしいやつ!!」
「……」
「……」
あぁ……これはひどい言い訳だ。
何だ、いかがわしいやつって。
しかもたくさん読んだとか……。
ただの欲求不満王女じゃない。
そんなので納得するわけが──。
「……そっか」
したぁぁあああああ!?
腕をつかんでいた手の力が抜け、私の上からゆっくりと起き上がるセイシス。
なんかまた別の誤解を受けたみたいだけど、まぁ、落ち着いてくれたみたいでひとまずはよかった、のかしら?
「じゃぁ、お前、実経験は……」
「(二度目の人生では)ないわよ馬鹿!!」
「そっか……そう、か、うん、なら、いい」
いい、じゃないわぁぁあああ!!
こいつは私の何なの!?
保護者か!?
ゆっくりと起き上がった私を見て、セイシスがやたら嬉しそうに笑った。
「ていうか、いかがわしい本たくさんって……やらし」
「~~~~~~っ!?」
一体何なのよぉぉおおお!?
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