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第二章 死する狼のための鎮魂歌
秘密③
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カーテンに遮られたアーチ状の開口部を潜り抜けると、そこは殺風景な広間になっていた。
床には滑らかな平たい石が敷き詰められており、部屋の中央には腰掛けるのに丁度良い高さの窪みがある。部屋中を満たす真っ白な湯気から、木枠で囲われたその窪みに張られているのがお湯だとわかった。
「お風呂って言うんだって」
後方から声を掛けられて、レティシアは驚いて振り返った。隙を見せるわけにはいかないと思っていた矢先だというのに、初めて目にする光景にすっかり我を忘れていた。
警戒心を剥き出しにしたレティシアと目が合うと、朱紅い髪の女性――マリアンルージュはふわりと柔らかな笑みを見せた。予想外の反応に面食らったレティシアを気に留めるでもなく、捻り上げた長い髪を器用に後頭部で纏めると、彼女はレティシアを手招いた。
驚くほど無防備で隙だらけのその態度に、嫌でも気が緩んでしまう。
躊躇いがちに、レティシアはマリアンルージュの傍へ歩み寄った。
「さ、服を脱いで。レティは女の子なんだから、綺麗にしておかなきゃ」
マリアンルージュに促され、レティシアは自身の身体へ視線を落とした。
昨夜マリアンルージュに貸し与えられたブラウスは、まだ成長しきっていないその身体には大き過ぎて、まるで丈の短いワンピースのようだ。
レティシアが躊躇いがちにブラウスを脱いで手渡すと、マリアンルージュはそのブラウスをカーテンの向こうに放り込み、花柄の小瓶を手に戻ってきた。
木製の小椅子に勧められるままに腰掛けると、マリアンルージュは窪みからたらいでお湯を汲み取り、レティシアの背中を丁寧に流した。柔らかいスポンジで背中をこすられるのがなんともくすぐったくて、レティシアの口から思わず笑い声が溢れる。
「恥ずかしい話、わたしの故郷にはお風呂という習慣がなくてね。どんな季節でも川や湖で水浴びをするのが普通だったから、だから数日前、初めてこの部屋に通されたとき、本当にびっくりしたんだ」
レティシアが笑ったことに気を良くしたのか、マリアンルージュが楽しそうに言った。
髪と身体を流し終えたレティシアは、マリアンルージュに言われるがままに窪みに入り、肩までお湯に浸かった。疲れきった身体が芯まで温まるようで、とても気分が良い。
ほっと息を吐き、レティシアはぼんやりと天井を見上げた。
程なくして、マリアンルージュが先程の小瓶を持ってやってきた。小首を傾げるレティシアの目の前で、
マリアンルージュは小瓶の蓋を開けてみせた。ほのかに甘い花の香りが、ふわりと浴室に広がっていく。
「これ、香油って言うんだって。良い香りがするし身体の疲れが取れるらしくて、おばさんが勧めてくれたんだ」
興味津々に小瓶をみつめるレティシアにそう説明すると、マリアンルージュはレティシアの手を取り、手のひらに香油を少量垂らした。
香油から漂う甘い香りを、レティシアは胸いっぱいに吸い込んだ。
「髪でも身体でも、好きなところに塗って良いんだって。たくさん塗りすぎるとべとべとになるから気をつけてね」
マリアンルージュの言葉に大きく頷くと、レティシアは指先で香油を掬い取り、馴染ませるように丁寧に素肌に塗り込んだ。マリアンルージュに対して先程まで警戒心を抱いていたことを、レティシアはすっかり忘れていた。
年相応にはしゃぐレティシアの様子を、マリアンルージュは頬杖をついて嬉しそうに眺めていた。瞳を輝かせて顔を上げたレティシアと目が合うと、無邪気に笑うレティシアに、ゆったりとした優しい口調で語りかけた。
「ねぇ、レティ。リュックが言うように、きみは村を襲った犯人が何者なのか、知ってるんだよね? きっと犯人は盗賊なんかじゃなくて、村を訪れた旅人か何かで、だからきみはすべての人間が信用できない。そうなんだよね?」
マリアンルージュの話を聞いて、レティシアは動きを止めた。思い出したくない記憶が脳裏にちらついて、胸の奥がざわざわと騒ぎ始めた。マリアンルージュから顔を背け、耳を塞ぐと、レティシアは縮こまるように湯船に身を沈めた。
明らかに様子が変わったレティシアに、マリアンルージュは親身に話し続けた。
「わたしはきみとリュックを助けたい。でも、一体何からきみたちを守れば良いのかわからないんだ。今すぐにとは言わないから。だから、そのときがきたら、犯人が何者なのか、わたしに教えて欲しいんだ」
レティシアをみつめ、懇願するようにマリアンルージュは告げた。真剣な眼差しが背に刺さる。心が揺さぶられるようで、レティシアは無意識に小さく頷いていた。
僅かな間をおいて、冷たい指先が肩に触れた。びくりと身体を震わせて、レティシアは恐る恐る振り返った。
真っ直ぐにレティシアをみつめるマリアンルージュの視線と、レティシアの視線が交わった。
(もしも話してくれる気になったら、わたしの身体に触れて、わたしの目を見て。そうすればきっと、きみの聲が聞こえるから……)
不思議な感覚だった。
その声は、レティシアの精神に直接届いたようだった。
驚いて目を見張るレティシアに再び優しく微笑んでみせると、マリアンルージュはゆっくりと立ち上がり、声を潜めて囁いた。
「わたしの秘密を教えてあげる。だから、わたしとゼノのことを信用してほしい」
――秘密?
意外な言葉にレティシアは首を傾げた。
マリアンルージュは小さく頷くと、ナイトドレスの胸元の紐を指先でするりと解いた。支えるものを無くしたドレスが、引き寄せられるように床の上にはらりと舞い落ちる。
曝け出された裸体を前に、レティシアは思わず目を背けた。
例え同性だとしても、家族でもない大人の女性の裸を見るのはとても恥ずかしいような、後ろめたいような気がした。身体を洗いにきたのだから、何もおかしいことではないはずなのに。
「レティ、ちゃんと見て」
マリアンルージュに促され、レティシアは躊躇いがちに顔を上げた。
かたちの良い足先と、程よい筋肉のついたふくらはぎが目に映る。太腿から腰へと至る柔らかな曲線を辿り、引き締まった腹部のその先に視線を向けたレティシアは、息を呑み、両の眼を見開いた。
マリアンルージュの左側の胸の下。その一部に、鮮血を思わせる朱紅い色の鱗が、びっしりと張り付いていた。
「わたしは人の姿をしているけど、本当は人間じゃないんだ。この鱗がその証拠。……人の姿を真似ることはできても、この鱗だけは隠すことができない。この鱗は言うなればわたしの急所で、唯一の弱点でもあるんだよ」
呆然とするレティシアに囁くようにそう告げて、マリアンルージュは愛おしむように、その朱紅い鱗を指先でそっと撫でた。
床には滑らかな平たい石が敷き詰められており、部屋の中央には腰掛けるのに丁度良い高さの窪みがある。部屋中を満たす真っ白な湯気から、木枠で囲われたその窪みに張られているのがお湯だとわかった。
「お風呂って言うんだって」
後方から声を掛けられて、レティシアは驚いて振り返った。隙を見せるわけにはいかないと思っていた矢先だというのに、初めて目にする光景にすっかり我を忘れていた。
警戒心を剥き出しにしたレティシアと目が合うと、朱紅い髪の女性――マリアンルージュはふわりと柔らかな笑みを見せた。予想外の反応に面食らったレティシアを気に留めるでもなく、捻り上げた長い髪を器用に後頭部で纏めると、彼女はレティシアを手招いた。
驚くほど無防備で隙だらけのその態度に、嫌でも気が緩んでしまう。
躊躇いがちに、レティシアはマリアンルージュの傍へ歩み寄った。
「さ、服を脱いで。レティは女の子なんだから、綺麗にしておかなきゃ」
マリアンルージュに促され、レティシアは自身の身体へ視線を落とした。
昨夜マリアンルージュに貸し与えられたブラウスは、まだ成長しきっていないその身体には大き過ぎて、まるで丈の短いワンピースのようだ。
レティシアが躊躇いがちにブラウスを脱いで手渡すと、マリアンルージュはそのブラウスをカーテンの向こうに放り込み、花柄の小瓶を手に戻ってきた。
木製の小椅子に勧められるままに腰掛けると、マリアンルージュは窪みからたらいでお湯を汲み取り、レティシアの背中を丁寧に流した。柔らかいスポンジで背中をこすられるのがなんともくすぐったくて、レティシアの口から思わず笑い声が溢れる。
「恥ずかしい話、わたしの故郷にはお風呂という習慣がなくてね。どんな季節でも川や湖で水浴びをするのが普通だったから、だから数日前、初めてこの部屋に通されたとき、本当にびっくりしたんだ」
レティシアが笑ったことに気を良くしたのか、マリアンルージュが楽しそうに言った。
髪と身体を流し終えたレティシアは、マリアンルージュに言われるがままに窪みに入り、肩までお湯に浸かった。疲れきった身体が芯まで温まるようで、とても気分が良い。
ほっと息を吐き、レティシアはぼんやりと天井を見上げた。
程なくして、マリアンルージュが先程の小瓶を持ってやってきた。小首を傾げるレティシアの目の前で、
マリアンルージュは小瓶の蓋を開けてみせた。ほのかに甘い花の香りが、ふわりと浴室に広がっていく。
「これ、香油って言うんだって。良い香りがするし身体の疲れが取れるらしくて、おばさんが勧めてくれたんだ」
興味津々に小瓶をみつめるレティシアにそう説明すると、マリアンルージュはレティシアの手を取り、手のひらに香油を少量垂らした。
香油から漂う甘い香りを、レティシアは胸いっぱいに吸い込んだ。
「髪でも身体でも、好きなところに塗って良いんだって。たくさん塗りすぎるとべとべとになるから気をつけてね」
マリアンルージュの言葉に大きく頷くと、レティシアは指先で香油を掬い取り、馴染ませるように丁寧に素肌に塗り込んだ。マリアンルージュに対して先程まで警戒心を抱いていたことを、レティシアはすっかり忘れていた。
年相応にはしゃぐレティシアの様子を、マリアンルージュは頬杖をついて嬉しそうに眺めていた。瞳を輝かせて顔を上げたレティシアと目が合うと、無邪気に笑うレティシアに、ゆったりとした優しい口調で語りかけた。
「ねぇ、レティ。リュックが言うように、きみは村を襲った犯人が何者なのか、知ってるんだよね? きっと犯人は盗賊なんかじゃなくて、村を訪れた旅人か何かで、だからきみはすべての人間が信用できない。そうなんだよね?」
マリアンルージュの話を聞いて、レティシアは動きを止めた。思い出したくない記憶が脳裏にちらついて、胸の奥がざわざわと騒ぎ始めた。マリアンルージュから顔を背け、耳を塞ぐと、レティシアは縮こまるように湯船に身を沈めた。
明らかに様子が変わったレティシアに、マリアンルージュは親身に話し続けた。
「わたしはきみとリュックを助けたい。でも、一体何からきみたちを守れば良いのかわからないんだ。今すぐにとは言わないから。だから、そのときがきたら、犯人が何者なのか、わたしに教えて欲しいんだ」
レティシアをみつめ、懇願するようにマリアンルージュは告げた。真剣な眼差しが背に刺さる。心が揺さぶられるようで、レティシアは無意識に小さく頷いていた。
僅かな間をおいて、冷たい指先が肩に触れた。びくりと身体を震わせて、レティシアは恐る恐る振り返った。
真っ直ぐにレティシアをみつめるマリアンルージュの視線と、レティシアの視線が交わった。
(もしも話してくれる気になったら、わたしの身体に触れて、わたしの目を見て。そうすればきっと、きみの聲が聞こえるから……)
不思議な感覚だった。
その声は、レティシアの精神に直接届いたようだった。
驚いて目を見張るレティシアに再び優しく微笑んでみせると、マリアンルージュはゆっくりと立ち上がり、声を潜めて囁いた。
「わたしの秘密を教えてあげる。だから、わたしとゼノのことを信用してほしい」
――秘密?
意外な言葉にレティシアは首を傾げた。
マリアンルージュは小さく頷くと、ナイトドレスの胸元の紐を指先でするりと解いた。支えるものを無くしたドレスが、引き寄せられるように床の上にはらりと舞い落ちる。
曝け出された裸体を前に、レティシアは思わず目を背けた。
例え同性だとしても、家族でもない大人の女性の裸を見るのはとても恥ずかしいような、後ろめたいような気がした。身体を洗いにきたのだから、何もおかしいことではないはずなのに。
「レティ、ちゃんと見て」
マリアンルージュに促され、レティシアは躊躇いがちに顔を上げた。
かたちの良い足先と、程よい筋肉のついたふくらはぎが目に映る。太腿から腰へと至る柔らかな曲線を辿り、引き締まった腹部のその先に視線を向けたレティシアは、息を呑み、両の眼を見開いた。
マリアンルージュの左側の胸の下。その一部に、鮮血を思わせる朱紅い色の鱗が、びっしりと張り付いていた。
「わたしは人の姿をしているけど、本当は人間じゃないんだ。この鱗がその証拠。……人の姿を真似ることはできても、この鱗だけは隠すことができない。この鱗は言うなればわたしの急所で、唯一の弱点でもあるんだよ」
呆然とするレティシアに囁くようにそう告げて、マリアンルージュは愛おしむように、その朱紅い鱗を指先でそっと撫でた。
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