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国王と不忠者
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ランヒルド王国国王アンドリュー・マーカス・ランヒルディアは、赤みがかった金髪にゴールドアンバーの瞳を持つ、おっとりと穏やかな風采の人物だ。
アレクシアは、彼の人となりをよく知らない。だが、王都で暮らしている人々が、明るい笑顔で幸せそうに生きていることは知っている。国王の膝元である王都に希望と活気が満ちているのは、彼が『善き王』であるという証左だ。
また、この国の王立魔導研究所で開発される公共基盤制御魔導具によって、王都から遠く離れた土地に生きる国民の生活水準が、目を瞠る勢いで向上しているのも事実である。毎日嘆願書に目を通すという国王が、南方の山村で発生した伝染性の疫病に対し、即座に現地へ最先端医療チームを派遣し、悲劇を最小限で食い止めたという逸話も耳に新しい。
ただ、他人にとってどれほど立派な国王であろうとも、アレクシアにとってはすでに赤の他人以下の相手である。今更、話したいことなど何もない。王太子がよけいな真似をしなければ、彼にすべてを丸投げして知らぬ顔をできたものを、つくづく面倒なことだ。
戦場帰りの三人は、王宮最深部にある豪奢極まりない会議室へ通されるなり、立ち上がった国王に人好きのする柔らかな笑顔で迎えられ――
「ご苦労だったね、アレクシア嬢。ウィルフレッドくん。そちらの少年が、保護したという民間人かい?」
「……ふぅ」
あやうく魔導武器に手を伸ばしそうになったアレクシアは、深呼吸ひとつでどうにか堪えた。ウィルフレッドが「よくできました」と真顔で褒める。
一方、王宮へ来る前に武装解除させた少年は、暑苦しい飛行服を脱いでバックパックにしまっていた。非常に動きやすそうな素材ではあるものの、これといった特徴のないシンプルな衣服だけになると、細身の体つきと相俟って、とてもエース級の戦闘員には見えない。
念のため、もし彼が敵対行動に出た場合には、問答無用で処分するとは言ってあるが、よほど疲れ切っているのか、今にも寝落ちしそうな様子である。敵陣の中枢に連行されているというのに、まったく肝の据わった子どもだ。
そんな彼女たちの様子をにこにこと眺め、国王は言った。
「三人とも、疲れただろう。まずは、座ってお茶でも飲みなさい」
示されたのは、円状の会議卓に三つ並んだ椅子だ。磨き抜かれた会議卓には、国王を中心に半円を描くように、王宮の重鎮たちが顔を揃えている。ローレンスの席は、国王の左隣だ。
彼らと相対する形で用意された席につくと、すぐに温かなお茶と手の込んだ軽食が運ばれてきた。
彼女の右隣に座ったウィルフレッドが、静かな声で問うてくる。
「アレクシアさま。これらに問題はありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ。――おまえも、腹が減っているなら食え。おかしなものは入っていないぞ」
左隣でぼんやりとしている少年に言うと、瞬きをして首をかしげた。
「……腹は、減ってる。けど、眠い」
人間の睡眠欲は、食欲に優先する。そうか、とアレクシアはうなずいた。
「現在、おまえの身柄はわたしの管理下にある。悪いが、処分が決定するまで、わたしはおまえから目を離すわけにはいかない。眠りたいのなら、その辺で転がっていろ」
「……うん」
幼子のような返事をして、少年はのそのそと椅子から降りると、膨らんだバックパックを枕に目を閉じる。すぐに、深い寝息が聞こえてきた。もしかしたら、眠ったというよりも気絶したと言ったほうが正しいのかもしれない。
そのあどけない寝顔だけを見ていれば、本当にただの子どものようだ。ひとつため息をつき、アレクシアは改めて国王に向き直った。
「さて、国王陛下。すでにスウィングラー辺境伯家より、リベラ平原における戦闘の顛末に関する報告はなされていることと存じますが、まずはその報告の補足からさせていただきたく思います」
時間の無駄になるばかりの挨拶を抜きに告げ、アレクシアは相手の答えを待たずに淡々と事実のみを語っていく。
リベラ平原の空に現れた、十二騎の空飛ぶ魔導兵士たち。彼らが装備していた飛行補助魔導武器。空での戦闘と、その結末。
アレクシアは、テーブルの上に奪取してきた戦利品を載せ、感情の透けない声で言う。
「あぁ、ひとつ言い忘れておりました。わたしとウィルフレッド・オブライエンが、日付が変わるまでにシンフィールド学園の敷地内に戻らなかった場合、警告ののち学園の校舎及び訓練施設がすべて破壊されますので、その旨ご承知おきくださいませ」
それまで黙って彼女の話を聞いていた国王たちが、はじめて顔色を変えた。
胃の辺りを押さえてうつむいたローレンスの隣で、立ち上がって何かを言おうとしかけた重鎮のひとりを、片手を挙げて国王が制する。彼は、ひとつ息を吐いて口を開いた。
「アレクシア嬢。まずは、王太子の願いに応じリベラ平原を守ってくれたこと、心から感謝する。何か要望があるのであれば、なんなりと言ってほしい」
その言葉に、アレクシアははじめてにこりとほほえんだ。
「では、国王陛下。お言葉に甘えて申し上げます。わたしは、我々の生命と尊厳をおびやかされることのない、自由な人生が欲しいのです。――王家とスウィングラー辺境伯家が、今後一切わたしとウィルフレッド・オブライエンに関与しないこと。それを、陛下の御名においてお約束していただきたい」
会議室が、静まり返った。一拍置いて、国王が言う。
「それは……無理というものだ。アレクシア嬢」
「なぜです?」
柔らかな声で、彼女は問う。
「わたしがあなた方に望むことは、何もない。ただ、この国に生まれたほかの子どもたちと同じように、自由に生きていたいだけです。そんなささやかな望みを、なぜ叶えていただけないのでしょう?」
それとも、とアレクシアは首をかしげる。
「あなた方がわたしたちにできることは何もないのに、わたしたちにはあなた方のために命をかけろとでもおっしゃるのですか? それは、駄目です。フェアな取引とは言えません」
彼女は、おかしげに肩を揺らした。
「あなたは、本当に王だ。他人に尽くされ、傅かれることを当然だと思っている。なんて、傲慢。高貴なる者の義務に縛られ、弱者を憐み守っていなければ生きていけない。なんて、哀れ。――今、何を考えているのか当ててあげましょうか。きっと、不思議でたまらないのでしょう? 臣下である我々が、なぜ主君であるあなたにおとなしく従おうとしないのか、と」
目を見開いた国王が、小さく息を呑む。
でも残念、と彼女は笑う。
「わたしは、スウィングラー辺境伯に捨てられたときから――この国の臣下であることの誇りを踏みにじられたあの日から、あなたのために命をかけることが、心底ばかばかしくなったんです。あなたは、この国の光そのものなのかもしれない。ですが、あなたを守り、あなたに守られ、あなたのために命をかけるのは、わたしのような不忠者の役目ではないのですよ」
「アレクシア嬢……!」
ローレンスの掠れた呼び声に、アレクシアはゆっくりと首を横に振る。
「もう、終わりにしていただきたい。国王陛下」
そして、かつての主に静かに告げた。
「あなたは、あなたを信じる者たちとともに、あなたの道を征けばいい。わたしには、あなたと同じものは見られない。……お願いです。どうかもう、我々を自由にしてください」
アレクシアは、彼の人となりをよく知らない。だが、王都で暮らしている人々が、明るい笑顔で幸せそうに生きていることは知っている。国王の膝元である王都に希望と活気が満ちているのは、彼が『善き王』であるという証左だ。
また、この国の王立魔導研究所で開発される公共基盤制御魔導具によって、王都から遠く離れた土地に生きる国民の生活水準が、目を瞠る勢いで向上しているのも事実である。毎日嘆願書に目を通すという国王が、南方の山村で発生した伝染性の疫病に対し、即座に現地へ最先端医療チームを派遣し、悲劇を最小限で食い止めたという逸話も耳に新しい。
ただ、他人にとってどれほど立派な国王であろうとも、アレクシアにとってはすでに赤の他人以下の相手である。今更、話したいことなど何もない。王太子がよけいな真似をしなければ、彼にすべてを丸投げして知らぬ顔をできたものを、つくづく面倒なことだ。
戦場帰りの三人は、王宮最深部にある豪奢極まりない会議室へ通されるなり、立ち上がった国王に人好きのする柔らかな笑顔で迎えられ――
「ご苦労だったね、アレクシア嬢。ウィルフレッドくん。そちらの少年が、保護したという民間人かい?」
「……ふぅ」
あやうく魔導武器に手を伸ばしそうになったアレクシアは、深呼吸ひとつでどうにか堪えた。ウィルフレッドが「よくできました」と真顔で褒める。
一方、王宮へ来る前に武装解除させた少年は、暑苦しい飛行服を脱いでバックパックにしまっていた。非常に動きやすそうな素材ではあるものの、これといった特徴のないシンプルな衣服だけになると、細身の体つきと相俟って、とてもエース級の戦闘員には見えない。
念のため、もし彼が敵対行動に出た場合には、問答無用で処分するとは言ってあるが、よほど疲れ切っているのか、今にも寝落ちしそうな様子である。敵陣の中枢に連行されているというのに、まったく肝の据わった子どもだ。
そんな彼女たちの様子をにこにこと眺め、国王は言った。
「三人とも、疲れただろう。まずは、座ってお茶でも飲みなさい」
示されたのは、円状の会議卓に三つ並んだ椅子だ。磨き抜かれた会議卓には、国王を中心に半円を描くように、王宮の重鎮たちが顔を揃えている。ローレンスの席は、国王の左隣だ。
彼らと相対する形で用意された席につくと、すぐに温かなお茶と手の込んだ軽食が運ばれてきた。
彼女の右隣に座ったウィルフレッドが、静かな声で問うてくる。
「アレクシアさま。これらに問題はありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ。――おまえも、腹が減っているなら食え。おかしなものは入っていないぞ」
左隣でぼんやりとしている少年に言うと、瞬きをして首をかしげた。
「……腹は、減ってる。けど、眠い」
人間の睡眠欲は、食欲に優先する。そうか、とアレクシアはうなずいた。
「現在、おまえの身柄はわたしの管理下にある。悪いが、処分が決定するまで、わたしはおまえから目を離すわけにはいかない。眠りたいのなら、その辺で転がっていろ」
「……うん」
幼子のような返事をして、少年はのそのそと椅子から降りると、膨らんだバックパックを枕に目を閉じる。すぐに、深い寝息が聞こえてきた。もしかしたら、眠ったというよりも気絶したと言ったほうが正しいのかもしれない。
そのあどけない寝顔だけを見ていれば、本当にただの子どものようだ。ひとつため息をつき、アレクシアは改めて国王に向き直った。
「さて、国王陛下。すでにスウィングラー辺境伯家より、リベラ平原における戦闘の顛末に関する報告はなされていることと存じますが、まずはその報告の補足からさせていただきたく思います」
時間の無駄になるばかりの挨拶を抜きに告げ、アレクシアは相手の答えを待たずに淡々と事実のみを語っていく。
リベラ平原の空に現れた、十二騎の空飛ぶ魔導兵士たち。彼らが装備していた飛行補助魔導武器。空での戦闘と、その結末。
アレクシアは、テーブルの上に奪取してきた戦利品を載せ、感情の透けない声で言う。
「あぁ、ひとつ言い忘れておりました。わたしとウィルフレッド・オブライエンが、日付が変わるまでにシンフィールド学園の敷地内に戻らなかった場合、警告ののち学園の校舎及び訓練施設がすべて破壊されますので、その旨ご承知おきくださいませ」
それまで黙って彼女の話を聞いていた国王たちが、はじめて顔色を変えた。
胃の辺りを押さえてうつむいたローレンスの隣で、立ち上がって何かを言おうとしかけた重鎮のひとりを、片手を挙げて国王が制する。彼は、ひとつ息を吐いて口を開いた。
「アレクシア嬢。まずは、王太子の願いに応じリベラ平原を守ってくれたこと、心から感謝する。何か要望があるのであれば、なんなりと言ってほしい」
その言葉に、アレクシアははじめてにこりとほほえんだ。
「では、国王陛下。お言葉に甘えて申し上げます。わたしは、我々の生命と尊厳をおびやかされることのない、自由な人生が欲しいのです。――王家とスウィングラー辺境伯家が、今後一切わたしとウィルフレッド・オブライエンに関与しないこと。それを、陛下の御名においてお約束していただきたい」
会議室が、静まり返った。一拍置いて、国王が言う。
「それは……無理というものだ。アレクシア嬢」
「なぜです?」
柔らかな声で、彼女は問う。
「わたしがあなた方に望むことは、何もない。ただ、この国に生まれたほかの子どもたちと同じように、自由に生きていたいだけです。そんなささやかな望みを、なぜ叶えていただけないのでしょう?」
それとも、とアレクシアは首をかしげる。
「あなた方がわたしたちにできることは何もないのに、わたしたちにはあなた方のために命をかけろとでもおっしゃるのですか? それは、駄目です。フェアな取引とは言えません」
彼女は、おかしげに肩を揺らした。
「あなたは、本当に王だ。他人に尽くされ、傅かれることを当然だと思っている。なんて、傲慢。高貴なる者の義務に縛られ、弱者を憐み守っていなければ生きていけない。なんて、哀れ。――今、何を考えているのか当ててあげましょうか。きっと、不思議でたまらないのでしょう? 臣下である我々が、なぜ主君であるあなたにおとなしく従おうとしないのか、と」
目を見開いた国王が、小さく息を呑む。
でも残念、と彼女は笑う。
「わたしは、スウィングラー辺境伯に捨てられたときから――この国の臣下であることの誇りを踏みにじられたあの日から、あなたのために命をかけることが、心底ばかばかしくなったんです。あなたは、この国の光そのものなのかもしれない。ですが、あなたを守り、あなたに守られ、あなたのために命をかけるのは、わたしのような不忠者の役目ではないのですよ」
「アレクシア嬢……!」
ローレンスの掠れた呼び声に、アレクシアはゆっくりと首を横に振る。
「もう、終わりにしていただきたい。国王陛下」
そして、かつての主に静かに告げた。
「あなたは、あなたを信じる者たちとともに、あなたの道を征けばいい。わたしには、あなたと同じものは見られない。……お願いです。どうかもう、我々を自由にしてください」
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