友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

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「よく分かんねーんだけど、鬼頭と猿渡は円満に別れられたって事か？」

「まぁそうだね。結月とはこれからも仲良くしたいとこだけど、それより……ねぇ？」

射貫く様な猿渡の目にぞくりと悪寒が走った。


距離を詰めて来た猿渡に、翠に抱き締められたままの両手を握られる……先程の鬼頭のように指を絡ませて繋がれてしまう。


「俺も、桃クンが欲しくなっちゃった」


は？

「どんな手を使っても手に入れて俺だけのモノにするから……覚悟してね」


は？

猿渡の言葉を脳が拒否して思考停止している間に、唇に固くて温かい感触がして離れて行った。

やたらと綺麗な顔が近くにあった気がする……


直ぐに離れたから幻覚かな。
翠がやたらと唇をハンカチで擦ってきて痛いけど。


友達の恋人の浮気現場に遭遇したはずが、何でこんな事になってしまったのか。

あいつら、円満に別れたんだよな？


何で別れたばかりの二人からあんな獣みたいな目で見られてんの、俺が。

ずっと兄のように慕っていた翠からはずっと恋愛対象として見ていたと告白されるし。
その上、あんな声まで聞かされてしまうし。


俺のような何処にでもいる普通の男を、こんな美形達が取り合うなんて現実が起こる訳がない

(これは夢だ。白昼夢だ。よし、忘れよう)


鬼頭にシャツの襟を掴まれた猿渡が引き摺られて何処かに行くのを見送りながら、今起きた全てを無かった事にしようと決意した。








そんな決意がすぐに崩れ去る事をこの数分後には思い知る事になる。