12 / 30
12
12
しおりを挟む
ベッドに突っ伏した鬼頭が何やらぶつぶつと言い出したのを見て、離れても大丈夫そうだと判断し、部屋を出た。
(念の為に胃腸薬も持って行こう)
薬を手にキッチンへと移動し、水を用意して冷やす物を探す。
冷えピタはあるのだが、目を冷やすのには全く適していない。
氷枕もあるが、あれは枕だからやはり目を冷やすのには適さない。
「濡れタオルぐらいしかないよなぁ」
キッチンに水と薬を置いてタオルを取りに脱衣所へと向かうと、そこには既に先客が居た。
どうやら、鬼頭が泣きじゃくっている間に事は終わっていたらしく、最悪な事にフェイスタオルを手に取ったタイミングで浴室からクズが出て来てしまった。
「げ」
「声に出てるよ?『お友達クン』」
全裸の男を前にしては心の声も漏れるという物だ。
「………前から思ってたんだけど、俺はアンタの友達じゃねーからそう呼ばないで欲しいんだけど」
「俺の友達な訳ないじゃん。結月の友達だからそう呼んでるだけ。
まさか、自分が友達扱いされてるとでも思ったワケ?」
お綺麗な顔を歪ませて、心底俺を馬鹿にしたような目で見下ろす姿は、例え全裸でも様になっていて思わず感心してしまう。
(さっきの鬼頭もだけど、顔が綺麗な奴は凄いよなぁ)
言ってる事は全くの的外れだけどな。
「思ってねーよ。思ってねーし、実際違うんだから友達とか言われたくねーの。
嫌味で呼ぶなら『結月の』友達クンって言ってくんない?」
主語がないから聞く人によっては俺と猿渡が友達に見えてしまう。
それが堪らなく不快なのだ。
その不快さを隠す事なく睨み返すと、綺麗な顔に刻まれた眉間の皺が濃くなった。
馬鹿にした笑いも消え、口元を引き結んで唇を噛み締めながらあっちも俺を睨んでいる。
垂れた目がこんなにも鋭くなるのを初めて見た。
王子様は怒った顔もお綺麗だし、綺麗な分だけ迫力も怖さも桁違いだ。
いつもならこの顔を前にしたら竦んでしまうかもしれないが、今日のコイツへの嫌悪感がそれを上回っているおかげだろう、真っ直ぐに見つめ返していられる。
何なら殴りたい衝動を堪えているぐらいだ。
(念の為に胃腸薬も持って行こう)
薬を手にキッチンへと移動し、水を用意して冷やす物を探す。
冷えピタはあるのだが、目を冷やすのには全く適していない。
氷枕もあるが、あれは枕だからやはり目を冷やすのには適さない。
「濡れタオルぐらいしかないよなぁ」
キッチンに水と薬を置いてタオルを取りに脱衣所へと向かうと、そこには既に先客が居た。
どうやら、鬼頭が泣きじゃくっている間に事は終わっていたらしく、最悪な事にフェイスタオルを手に取ったタイミングで浴室からクズが出て来てしまった。
「げ」
「声に出てるよ?『お友達クン』」
全裸の男を前にしては心の声も漏れるという物だ。
「………前から思ってたんだけど、俺はアンタの友達じゃねーからそう呼ばないで欲しいんだけど」
「俺の友達な訳ないじゃん。結月の友達だからそう呼んでるだけ。
まさか、自分が友達扱いされてるとでも思ったワケ?」
お綺麗な顔を歪ませて、心底俺を馬鹿にしたような目で見下ろす姿は、例え全裸でも様になっていて思わず感心してしまう。
(さっきの鬼頭もだけど、顔が綺麗な奴は凄いよなぁ)
言ってる事は全くの的外れだけどな。
「思ってねーよ。思ってねーし、実際違うんだから友達とか言われたくねーの。
嫌味で呼ぶなら『結月の』友達クンって言ってくんない?」
主語がないから聞く人によっては俺と猿渡が友達に見えてしまう。
それが堪らなく不快なのだ。
その不快さを隠す事なく睨み返すと、綺麗な顔に刻まれた眉間の皺が濃くなった。
馬鹿にした笑いも消え、口元を引き結んで唇を噛み締めながらあっちも俺を睨んでいる。
垂れた目がこんなにも鋭くなるのを初めて見た。
王子様は怒った顔もお綺麗だし、綺麗な分だけ迫力も怖さも桁違いだ。
いつもならこの顔を前にしたら竦んでしまうかもしれないが、今日のコイツへの嫌悪感がそれを上回っているおかげだろう、真っ直ぐに見つめ返していられる。
何なら殴りたい衝動を堪えているぐらいだ。
30
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
アルファとアルファの結婚準備
金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。 😏ユルユル設定のオメガバースです。
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
ガラス玉のように
イケのタコ
BL
クール美形×平凡
成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。
親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。
とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。
圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。
スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。
ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。
三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。
しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。
三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる