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ベッドに突っ伏した鬼頭が何やらぶつぶつと言い出したのを見て、離れても大丈夫そうだと判断し、部屋を出た。

(念の為に胃腸薬も持って行こう)

薬を手にキッチンへと移動し、水を用意して冷やす物を探す。

冷えピタはあるのだが、目を冷やすのには全く適していない。
氷枕もあるが、あれは枕だからやはり目を冷やすのには適さない。

「濡れタオルぐらいしかないよなぁ」



キッチンに水と薬を置いてタオルを取りに脱衣所へと向かうと、そこには既に先客が居た。

どうやら、鬼頭が泣きじゃくっている間に事は終わっていたらしく、最悪な事にフェイスタオルを手に取ったタイミングで浴室からクズが出て来てしまった。

「げ」

「声に出てるよ?『お友達クン』」

全裸の男を前にしては心の声も漏れるという物だ。

「………前から思ってたんだけど、俺はアンタの友達じゃねーからそう呼ばないで欲しいんだけど」

「俺の友達な訳ないじゃん。結月の友達だからそう呼んでるだけ。
まさか、自分が友達扱いされてるとでも思ったワケ?」

お綺麗な顔を歪ませて、心底俺を馬鹿にしたような目で見下ろす姿は、例え全裸でも様になっていて思わず感心してしまう。

(さっきの鬼頭もだけど、顔が綺麗な奴は凄いよなぁ)

言ってる事は全くの的外れだけどな。

「思ってねーよ。思ってねーし、実際違うんだから友達とか言われたくねーの。
嫌味で呼ぶなら『結月の』友達クンって言ってくんない?」

主語がないから聞く人によっては俺と猿渡が友達に見えてしまう。
それが堪らなく不快なのだ。

その不快さを隠す事なく睨み返すと、綺麗な顔に刻まれた眉間の皺が濃くなった。

馬鹿にした笑いも消え、口元を引き結んで唇を噛み締めながらあっちも俺を睨んでいる。


垂れた目がこんなにも鋭くなるのを初めて見た。

王子様は怒った顔もお綺麗だし、綺麗な分だけ迫力も怖さも桁違いだ。

いつもならこの顔を前にしたら竦んでしまうかもしれないが、今日のコイツへの嫌悪感がそれを上回っているおかげだろう、真っ直ぐに見つめ返していられる。

何なら殴りたい衝動を堪えているぐらいだ。
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