真水のスライム

イル

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シント編

130話 束の間⑥

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 そこに立っていたのは、自分にそっくりの姿だった。
「…それが『試したい事』か?」
 服装も含めた見た目、氷で作り出した短剣の構え方、いずれも鏡を見てるようにすら錯覚してしまう。
「はいです。
 これが、ラディなりの『答え』です。」
 見た目は真似ても、声は元のラディそのままだ。
 なんて考えてる内に、ラディが仕掛けてくる。

「思ったんです。ラディが『ラディとして』活躍するひつようはないって。」
 初撃を受け、弾く。まだ短剣の扱いには慣れてないのだろう、ラディが大きく耐性を崩す。
「どういう事だ?」
「ラディはべつに『名を揚げる』ことには興味はないです。
 でも、英傑としての活動には興味あります。」
 崩されても勢い殺さぬまま、流れるように反撃しつつ言葉を続ける。
「だから思ったんです。セイルさんと一緒でやれないかなって。」
「その思案の結果が、この影武者か。
 ラディとしてはそれでいいんだな?」
 再び弾こうとしたが、その刃は脇に流される。
 そしてそのまま同じ動き、同じ太刀筋で刃同士がぶつかる。
「ラディは英傑活動を体験できれば、それで十分です。」
 鍔迫り合いの刃を弾き、距離を取る。

「…んまぁ、ラディの希望は分かった。
 ただ、どう活かすかとか、考えるべき部分は多いな。
 …けど、」
 一気に距離を詰め一太刀。
 咄嗟ながらに受け流されるが想定済み、速度を落とさずそのまま背後に回り首に短剣を突き立て…の寸止め。
「まずは戦闘術からだな。ついてこれるか?」
「がんばります…!」
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