真水のスライム

イル

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レミレニア編

89話 救出作戦②

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 しばらくぶりの森は、妙に心地よかった。

 探知できた魔物は大きめに距離を取って回避してきたが、眷属に出会わなかったのは単純に幸運だった。
 濃度が高い所に来ても、意外なほどに不調は無かった。多少の息苦しさはあるが、それでも最初の時と比べれば、軽いものだ。
 あるいは、エンの進行がいつもよりも速いからだろうか。エンにとっての目標達成が見え、気が急いているのだろう。

 「関門の獅子」のテリトリーを抜けたのか、雑草が再び姿を見せ、次第にその背も高くなっていく。
 自分の背と同じくらいの草の合間を抜け出し、川沿いを進み。
 上流で枝分かれし細くなった川を渡り、更に北へ。
 途中で立ち止まり周囲を探り、曲がって再び林の中へ。
 暫く進んだその先、「横たわる角塔」はそこにあった。


 木が少なく開けた場所に散らばる、いくつもの四角い灰色の建造物。
 大小様々な建造物は、孤立していたり、重なりあっていたり。
 材質は石のようにも見えるが、石をここまで加工できる技術は聞いた事が無い。

 興味と焦燥感とは裏腹に、エンが立ち止まり周囲を警戒する。
 そこから警告に至るまで、さほど間は無かった。
「セイル、真上!」
 反応し、咄嗟に剣を振るう。捉えはしなかったが軌道が逸れ、すぐ脇を何かが掠め、再び浮上する。

 軌道の先の上空で、大型の猛禽が様子をうかがっている。
 エンが先手を撃つが、流石に距離が遠く、ひらりとかわされる。こちらの消耗を待っているのだろう、仕掛けてくる気配は今のところ無い。
 どこかに去る様子も無く、このままでは下手に動けない。

 それでも手を緩めず撃ち続けるエンの光線の合間を、ラディの氷の矢が貫く。
 撃ち落とすには至らなかったが、翼の端をかすめる。

 流石に回避の限界と判断したのだろう、今度は向こうの手番。眩い光を放ち、辺りを包む。
 残り続ける強い光、まともに目を開けていられない。
 だが羽ばたく音が聞こえる。これなら、薬屋前での経験を活かせる。
 音を頼りに周囲の状況をイメージし、直感で剣を振るう。
 少しの重み、辛うじて捉えた?
 音が空へと向かいはじめ、光が収まってくる。

 すかさずラディが掴みかかる。速度が落ちてる相手に、水の触手が伸びる。
 そこにエンも雷の一撃。咄嗟で威力は乗らなかったが、2方向に気を配る余裕などなく命中、一瞬動きが止まる。
 その隙をラディは逃しはしなかった。距離がギリギリだったようだが、どうにか足の先を掴む。

 エンからの警告、少し距離を取る。
 事前に決めてた大技の一つ。高出力の雷がラディに向けて撃たれ、ラディの腕を伝って相手に命中する。

 既に致命傷には見えたが、念の為剣でも急所を貫いておく。
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