真水のスライム

イル

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レミレニア編

74話 現地調査①

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「ここ、ですね。」
 ラディに案内されて現地到着。
 何の変哲もない街並みの一角が、もはや懐かしい。
「ありがと。ラディはここで待ってて。」
 存在を知られてるラディは、一緒にいたら面倒なことになるかもしれない。今回は一人での行動だ。


 改めて見ると、あまりにも質素過ぎて怪しく見える店の外観。
 他の店は外にも陳列してたり、間口を大きく解放する形状がほとんど、最低でも大きな窓があったして、中の様子が分かり易くなっている。
 しかし問題の場所は「薬屋」とだけ書かれたシンプルな看板のみ。それを片付けてしまったら、周囲の民家と見分けが付かないくらい。


 深呼吸ひとつ。意を決して中に入る。
「やぁいらっしゃい。新顔さんかえ?」
 内装は非常に質素。というより、普通の家に棚を取り付けただけのように見える。
 胡散臭い笑顔の店のおじさんに、咄嗟の思い付きで返答する。
「え、えぇ。知人からここの事を聞きまして。」
「なるほどなるほど、そういう事でしたか。」
 おそらく、ここに来る人の目的は絞られるのだろう。おじさんが慣れた対応で棚に向かう。
 棚には緑色や茶色の粉末の瓶詰が並んでいる。
「ただ、最近仕入れ元がひとつ途絶えてしまってね。在庫も少なく、少々お高くさせてもらいますが、よろしいですかな?」
「はい、値段は問いません。」
「なれば、合う物を確かめる為に、いくらか種類をまとめてお売りましょう。多少割引しますよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「初めてなら色々と入用でしょうに、すまんの。」
「いえ、譲ってもらった物も多いので思ったよりは全然。」
「最近多いですからねぇ、管理の不祥事が。あなたにはそうならないで欲しいものです。」
 あまりに普通に話すから聞き流しかけたけど、これって事の核心ではないだろうか?
 証拠として受け渡す時に、この話も伝えておこう。

「して、その子の体格や食性は?」
 反射的に答えかけたが、流石にそれはまずいと思いとどまる。
 何か一例を想定して答えよう。この間のミニ銀鞭なんかは丁度よさそうだ。
「中型肉食の幼体…狼系ですね。」
「なんと、初めてにして思いきりましたね。」
「中途半端に妥協する方が、後悔しちゃうタイプなので。」
「なるほどなるほど、その若さ、羨ましい限り。」
 そう言いながらも手を動かし、いくらか瓶をチョイスする。
「おそらくどれかは合うでしょう。合うのがあれば、次回からはその瓶のラベル番号でお求めくださいませ。」
 会計を一旦自分の財布で済ませ、そそくさと店を後にした。
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