真水のスライム

イル

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レミレニア編

52話 日常の中に②

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「どうしたんですか?」
「分からない、だからまず確かめる。
 ラディ、『崩さないで』ね。」
「分かってます。」
 合言葉…というより、ラディと決めた再意識の為の言葉だ。
 人の姿を崩さないよう気を付けて。反射的に不足の自体を起こさないよう意識喚起。

 予想が合ってたら、この先にあるのはそういうものだ。


 人込みをかき分け、その中心に向かう。
 前がよく見えない中を進み、不意に開けた空間に出る。


 荒らされた屋台、一定の距離を空けて見物する群衆。
 その中心にたたずむ、事の元凶。
「…『銀鞭』…?」
 パッと見の特徴は、いつぞやの「銀鞭の狼」そのものだった。
 しかし背中の鞭は短く武器足り得ず、体躯も明らかに小さく丸っこい。子供だろうか?

 そいつが屋台の在庫の肉を食い荒らしている。非常事態なのは確か。
 だがどうする? ギルドの活動方針にはどう書かれていた?

 などと考えてる内に食い尽くしたらしく、においで辺りを探り始める。
 …確かここまでの道中にソーセージ系の屋台があったはずだ。
 ミニ銀鞭もそのにおいを感知したらしい。

 その方向に向け、群衆目掛けて飛び掛かる。

 考えるような時間は無かった。
 しかしここで刃物を振る訳にもいかない。鞘をあえて外さず、鈍器として剣を振るう。

 剣でミニ銀鞭を受け止める。が、剣を足場に跳躍。
 重い。体格は高さにして成体の半分程度なのに、腕に来る重さは成体のそれに近い。

 間髪入れず屋台の屋根で再跳躍。
 今ので障害とみなされたのだろう。完全にこちらに狙いを定め。

 …あまり好き勝手させるのもよくない。試すか。

 再び剣で受ける。ただし、今回は斜めにだ。
 衝突の瞬間にさらにひねり、崩す。そして右腕の力を抜き、跳躍力も殺す。
 剣は大きく弾かれ、無防備なミニ銀鞭がふわりと宙に浮く。いつもならエンの追撃があるところだ。
 だが今回はさらに一歩踏み出す。

 左手の文字通り二の太刀、短剣がミニ銀鞭を捉える。

 鞘打ちだが、腹にクリーンヒット。その体躯を大きく弾く。
 銀鞭が大きくよろけ、地に落ちる。が、立ち上がり抵抗の意思を崩さない。

 だがそこに振り下ろされる追撃。
 ラディの氷の棍の一撃が、ミニ銀鞭の頭に命中する。


 ミニ銀鞭は立ち上がってはこなかった。
 気絶した? 止めを刺した? どちらでもいい。
 この状況の判断を決めるのは、自分ではない。
「ラディ、見張っといてくれ。救援呼んでくる。」
「了解です。」
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