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192話 トリック・オア・トリート③
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ロロを追い、林の奥の方へと。
幸い、反応の進行方向はこちらとすれ違う形。取り逃す事は無さそうだ。
待ち伏せの手もあったが、その考えに至った時には既にロロが接触していた。
木々の隙間から見える、動く何か。土の塊だろうか。
近寄るにつれ、全容が見えてくる。自分より少し背の高い、人の形だ。
この間戦った奴の操る葉人形を思い起こさせられる。噛み付いたロロを振り払う所作も、人間の動きそのものだ。
ロロに気を取られていた土人形だが、こちらにも気が付いた。
「へぇ、ついに見つかっちゃったか。」
思考に直接、思念が響葉として響く。発信源はこの土人形だろう。
「どういうことだ?」
「いや、いくらあたしが隠密行動だからといってさ、誰にも気付かれなさすぎると、それはそれでなんか怖くなってくる心理ってあるじゃん?
だからよかったよ、こうして見つけてくれてさ。」
確かにこうして目の前にしても、魔力探知の方ではかすかに感じ取れる程度の存在感。
って、問題はそこじゃない。
「お前は誰だ?」
「んー、あえて言うなら黒幕の手先、ってとこかな?」
意外にも素直な答えが、無骨な造形の操り人形と似合わないひょうきんなそぶりと共に返ってくる。
「じゃあ、最近の怪異異常の原因はお前か?」
「かもね。だとしたらどうするつもり?」
否定の言葉は無い、なら。
「お前を止める。」
「だよねー、そう来ると思った。
けどさ、考えて見なよ。こうして古い妖怪とか解放して、あんたらがそれを倒して、この辺の魔力が高まってるわけじゃん?」
地域的な妖力が高まってるとはソウクロウからも聞いてた話。
それ自体が狙い。ゴーストファインダーや、こうした実地活動は、あくまでその手段という事か?
「このまま魔力に溢れて、あんたが困る事ある?
その内ああいう妖怪共は、街中まで活動を広げ、その存在は一般に認識される。
で、そういう幻想じみたもんが一般常識になれば、魔術だの妖術だのもわざわざ隠す必要も薄くなる。
あたしら的に表立って魔術使えるの、便利じゃね?」
それは、ちょっとだけ同意してしまった。
持続力を上げる為に普段から人狼姿を纏って慣らしていて、今や逆に普段の状態に不便さを感じ始めている。
それを日常的に活用できるようになったとしたら、それは便利だろう。
「…その為なら、無関係な所に被害が出てもいいと?」
「それは君が堂々と戦って守ればいいじゃない。
好きだから今もやってるんだろ? そういうヒーロー的な活動をさ。
それに、どうせ君自身は自衛できるんだし、大した問題にはならないだろう?」
確かに個人としては、そんな困る事は無い。けど。
「魔力の提供者は全部壊したいらしいけど、あたし的には今の世界がスクラップ&ビルドされるのはつまんないしさ。
あたしの果たすべき義理は魔力の充満、その為の怪異の解放だけ。その後の邪魔者を排除しろとまでは言われてないんだよね。
別に手伝えとは言わないし、ちょーっと見逃してくれるだけで互いに面倒増やさず済むんだよ?」
否定の言葉が見つからない、そもそも否定する理由があるのか。そんな考えに迷い込んだところに、ロロの呼びかけで我に返る。
浮ついた思考が一度落ち着いてしまえば、敵対か甘言か、返答は明白だった。
「…そもそもお前を信用できない。そうやって正体を隠しての交渉なんて。
俺からすれば、お前は奔放な危険要因だ。」
「いいねぇそういう初々しい正義感。
けど、乗ってくれないならおさらばしとくよ。もう用事は済んだし。」
「待て!」
そう言い、去ろうとする土人形を反射的に追おうとする。もしかしたら、まだ情報を引き出せるかもしれない。
けど、やってくる第三者の音。割り込んだ巨体が、行く手を阻んだ。
幸い、反応の進行方向はこちらとすれ違う形。取り逃す事は無さそうだ。
待ち伏せの手もあったが、その考えに至った時には既にロロが接触していた。
木々の隙間から見える、動く何か。土の塊だろうか。
近寄るにつれ、全容が見えてくる。自分より少し背の高い、人の形だ。
この間戦った奴の操る葉人形を思い起こさせられる。噛み付いたロロを振り払う所作も、人間の動きそのものだ。
ロロに気を取られていた土人形だが、こちらにも気が付いた。
「へぇ、ついに見つかっちゃったか。」
思考に直接、思念が響葉として響く。発信源はこの土人形だろう。
「どういうことだ?」
「いや、いくらあたしが隠密行動だからといってさ、誰にも気付かれなさすぎると、それはそれでなんか怖くなってくる心理ってあるじゃん?
だからよかったよ、こうして見つけてくれてさ。」
確かにこうして目の前にしても、魔力探知の方ではかすかに感じ取れる程度の存在感。
って、問題はそこじゃない。
「お前は誰だ?」
「んー、あえて言うなら黒幕の手先、ってとこかな?」
意外にも素直な答えが、無骨な造形の操り人形と似合わないひょうきんなそぶりと共に返ってくる。
「じゃあ、最近の怪異異常の原因はお前か?」
「かもね。だとしたらどうするつもり?」
否定の言葉は無い、なら。
「お前を止める。」
「だよねー、そう来ると思った。
けどさ、考えて見なよ。こうして古い妖怪とか解放して、あんたらがそれを倒して、この辺の魔力が高まってるわけじゃん?」
地域的な妖力が高まってるとはソウクロウからも聞いてた話。
それ自体が狙い。ゴーストファインダーや、こうした実地活動は、あくまでその手段という事か?
「このまま魔力に溢れて、あんたが困る事ある?
その内ああいう妖怪共は、街中まで活動を広げ、その存在は一般に認識される。
で、そういう幻想じみたもんが一般常識になれば、魔術だの妖術だのもわざわざ隠す必要も薄くなる。
あたしら的に表立って魔術使えるの、便利じゃね?」
それは、ちょっとだけ同意してしまった。
持続力を上げる為に普段から人狼姿を纏って慣らしていて、今や逆に普段の状態に不便さを感じ始めている。
それを日常的に活用できるようになったとしたら、それは便利だろう。
「…その為なら、無関係な所に被害が出てもいいと?」
「それは君が堂々と戦って守ればいいじゃない。
好きだから今もやってるんだろ? そういうヒーロー的な活動をさ。
それに、どうせ君自身は自衛できるんだし、大した問題にはならないだろう?」
確かに個人としては、そんな困る事は無い。けど。
「魔力の提供者は全部壊したいらしいけど、あたし的には今の世界がスクラップ&ビルドされるのはつまんないしさ。
あたしの果たすべき義理は魔力の充満、その為の怪異の解放だけ。その後の邪魔者を排除しろとまでは言われてないんだよね。
別に手伝えとは言わないし、ちょーっと見逃してくれるだけで互いに面倒増やさず済むんだよ?」
否定の言葉が見つからない、そもそも否定する理由があるのか。そんな考えに迷い込んだところに、ロロの呼びかけで我に返る。
浮ついた思考が一度落ち着いてしまえば、敵対か甘言か、返答は明白だった。
「…そもそもお前を信用できない。そうやって正体を隠しての交渉なんて。
俺からすれば、お前は奔放な危険要因だ。」
「いいねぇそういう初々しい正義感。
けど、乗ってくれないならおさらばしとくよ。もう用事は済んだし。」
「待て!」
そう言い、去ろうとする土人形を反射的に追おうとする。もしかしたら、まだ情報を引き出せるかもしれない。
けど、やってくる第三者の音。割り込んだ巨体が、行く手を阻んだ。
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