そして俺は召喚士に

イル

文字の大きさ
上 下
185 / 198

185話 修学旅行中の波乱⑤

しおりを挟む
 ハルバードが操り人形を切り裂き、素材である木の葉に戻って散る。
 こうやって処理したのも、もう5体目だ。
 より高い位置、建物の陰から出て狙撃の射線に入る場所のは最初のと同じようにキリが対処。棍で銃弾を弾き、反撃の射撃で仕留める。
 特に波乱が起きる事も無く、舗装された区域を駆け抜け、山のふもとの林の前に。


 古びた石造りの鳥居と階段、そこを進めば目的の拠点だろうが、あまりにも露骨。
 それでもここで止まる訳にはいかない、とキリが先に踏み出す。

 何かの接近の気配、咄嗟に飛びのくキリ。
 高台から打ち下ろす形で、弾が地面を撃つ。
「…流石にこのまま素直にとはいかないか。」
 そう呟くキリ。見えた弾道の出所を追うと、葉の屋根に遮られている。
「ここ、狙撃ポイントから見えないよな?」
「どうせ操ってる人形が目になってるんだろ。よくある手法だ。」
 なるほど、攻撃ユニットであると同時に、索敵のビーコンみたいなものでもある訳か。
「それを潰せば狙撃は止まるか?」
「この視界じゃ狙撃は無理だろうな。
 けど、索敵範囲が終わってるのはまずはこっち側だ。こうもうるさいと、人形の場所を探れねぇ。」
 確かに木の葉の揺れこすれる音に紛れて、葉人形の音を聞き分けるのは無理だろう。それはキリも同じらしい。
 けど。
「…キリの射程はどれくらいだ?」
「ここから本体まで届くと思う。けど狙うのに時間要るから、本体狙いはできねぇぞ?」
「つまり実質無限と見ていいんだな?」
「まぁ、そうだな、この場においては。」
「なら、プランはある。」

 狙撃の射線が通らない建物の陰、ここにいる内に魔力探知に集中。
 ロロが居る時や満月の夜ほどの精度ではない。が、今の人狼姿を模した状態でも大分探知は利く。
「相手の索敵距離と攻撃射程、同じだと思うか?」
 把握が曖昧だったところを、キリに確認する。
「と、思う。ここまでのは常に一定距離で動き出してた、探知に入ってすぐ自動攻撃ってとこだろうな。」
 だとしたらあっちの索敵距離は大体把握してる。そして、その長さはこちらの方が上だ。

 時間が止まったかと錯覚するような間、を貫く射撃音。
 交差する枝の隙間を、弾丸が通り過ぎる。
 そして不自然な位置にある葉の塊、敵の葉人形を貫き散らす。
「当たった、のか?」
 脇で見ていたキリがぽつりとつぶやく。
「あぁ、反応が消えたから当たったはずだ。」
 キリが妖術で生成したスナイパーライフルを借り、標的との間の直線状に銃口を置き、放つ。
 重力落下や風の影響とかはここでは存在しないようで、狙った方向の一直線を貫いてくれる。
「なんか、銃なんて初めてなのにこうも当たるの、逆に怖いな。」
「実際の射撃の腕より、当てる、当たって当然という意思が大事なんだよ。」
「なるほど、実銃のイメージより、あくまで魔法の延長線上か」
 狙いをつける時にエイム補正でもかかってるかのような吸いつきを感じたが、そういう事か。

 順当に処理が進み、探知範囲内に残り2体、となったところで相手に動きがあった。
「…どうした?」
 様子を見ていたキリの問いに答える。
「反応が動き始めた。撤退してる?」
「待つだけ無駄と判断したんだろうな。
 移動しながら探知、任せられるか?」
「…やってみる。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

処理中です...