そして俺は召喚士に

イル

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180話 修学旅行④

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 不意に襲い掛かってくる、左腕から広がる痛み。
 そうか、解決したと安心して把握を疎かにしてしまっていたが、今日がその日か。

「どうした? 誰か呼んできた方がいいか?」
「…ショウヤ、これから起こる事『大丈夫だから』。」
「それってどういう──」
 詳しく伝えられる前に、事態は進む。既に外見的な変化も始まっていて、察したようにショウヤが押し黙る。
 多少は慣れてきても、痛いものは痛い。変化の始点も痛みと同じく左腕からで、染まっていくように灰色の毛が生え爪が変形し。荒くなる呼吸に、次第に動物の唸り声のようなのが混じっていき。
 やがてじんわりとした痛みを残し、波は引いていく。

「すげ…それが噂の『呪い』か。」
 まじまじと見てくるショウヤ、咄嗟に無意識にに掛け布団で身をくるむ。
「どした?」
「いや、なんか…はずい。」
 自分でも理屈付けれない妙な恥ずかしさと共に、大人数部屋だったらと思うとぞっとした。

「古典的な人狼の呪いって聞いてたからどんなイカツイのかと思ったら案外スマートな感じなんだな。」
「実情そんなかわいいもんじゃねぇぞ。
 このせいで大分他人に手間かけさせたし、今だってそんな快適なもんでもねぇし。」
 結果である今だけ見ると、そう見えても仕方ないのだろうか。

 話は一旦落ち着いたが、それでもショウヤの好機の目線はやまない。
「んだよ、まだなにか?」
「いやさ、キリ見てても思った事なんだけどさ。
 やっぱ耳に感情出るもんなんだなって。」
「えっ、そうなのか?」
 尻尾の方はそういうイメージはあるし意識して抑えていたが、耳の方は意識の外だった。
「ほら今もぴくっとしたの、無意識か?」
「まって気付いてなかったんだけど何それ!?」
 更に深く掛け布団に身を沈め、目だけ出してるような状態へと。


「でもまぁ、驚きはしたけど安心したよ。そんな変わってなくて。」
「…俺としては色々変わりすぎてるけどな。
 去年4月まで何も知らない側だったのに、ハルルに出会ってから魔界だの怪異だの。
 んで今や俺自身が怪異側みたいなもんだ。」
「てことは学校で初めて会った時は、オレと立場的に同じだったって事か?」
「事前に偶然ハルルに出会ってたくらいだな、違うのは。キリの幻もまだ見抜けてなかったし。」
「…そうか。」
 何かものうつげな様子ののち、ショウヤが言葉を続ける。
「古典的な人狼って事はさ、噛んだら感染するのか?」
「…振りを裏切るようでアレだがやらねーぞ?
 前提と運が良かったから今は落ち着いてるけど、制御不能の怪物に成り果ててもおかしくなかったくらいだ。」
「単なる興味本位だよ。…半分は。」
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