そして俺は召喚士に

イル

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115話 「かつての仲間」の助力を経て④

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 あれから数日。
 相変わらず子供ドラゴンの心境は読み解けない。

 今日もこうして四方を建物で囲まれたグラウンドで駆けまわり、そして疲れたのか丸くなって休み。
 それを見守るのが割り当てられた役割だが、特にあちらから干渉してくる事は無く。
 けど元気にはなってきているし、少なくとも敵対の意思は見えないのは一安心。

 ただ、もしも仮に、こいつが敵対してきた場合。そういう危険性を考慮して、監視の意味も込めて俺に担当させてるのだろう。
 だけどもしそうなった場合、正直俺に勝てる自信は無い。
 今もこうしてウルフを出してセルフで戯れてはみているが、どうしてもただの遠隔操作、咄嗟の動きにはぎこちなさが出てしまう。
 対して、あっちは多少なりとも野生暮らし経験持ち。魔力面は不明としても、立派な牙や爪は武器として十分すぎる。

 「敵ではない」と判断してくれてるならいいんだけどなぁ。
 もし「敵足りえない」と思われてるだけだとしたら……。


「様子どう?」
 こちらに来るエンの声、そして隣に腰掛ける。
「…俺、未だにあいつの事が分からない。この状況や俺に対して、どう思ってるのか。」
「でしょうね。私も似た苦労の経験はあるし。」
「似た経験?」
 ふと思い出した事、まだ聞いた事が無かった。ナナノハが「竜に恩義」がどうとかって言ってた話。それが関係してるのだろうか?
 少しの思考時間ののち、エンが話し始める。
「そういえば、まだちゃんと自己紹介できてなかったね。
 私はエン。今は勉学の為に滞在してるけど、本来は旅人なの。相棒の竜と一緒にね。
 だからあくまで一例だけど、その竜との付き合い方の一例に関しては誰よりも深い、だから分かる事もある。」
「じゃあエンから見たら、あいつの様子ってどう見えてるんだ?」
「そうね、あくまでユートとのこの距離感、付かず離れず、でも常にそこにいる状態。それにこだわり…心地よさを感じてるのかも?」
 その気持ちは分からなくもない。通話だけ繋げて各々別々の作業をしてる時間、そんな感じだろう。

「だとしても、それをずっと? この数日間で。」
「考え方の基準が大きく違うの、竜って。
 大事な物に対して一途すぎるというか、融通が利かないというか。
 皆が皆って訳ではないだろうけど、ここの竜人ドラゴニュート達も、その考え方に近い人は多いかな。
 だから私達からすれば理解できないところも多い。でも何を大事にしてるか把握して、妥協点を見定める、ってのが私達のやり方。
 ただ、それをするにはあの子はまだ幼すぎるね。私でも感情を読むのに憶測が入っちゃう。」
 ここまでの話を全て合ってると仮定すれば、あの子は現状維持を求めてるし、わざわざそれを壊そうとはしないだろう。
 けど、こちらから寄るのも同様に、その距離感を壊す事になってしまう。
「…親探しとかは、やっぱ難しいか?」
「無理でしょうね。血縁に疎い種族だし、特定すらも。」

 なんにせよ、あいつが現状に満足してるのなら、それでいいか。
 あの調子から今更敵対の意思は無いと思いたいし、俺が帰った後でもここの人達なら悪いようにはしないだろう。
 そんな心配をよそに、子供ドラゴンはのんびりとしてて──


 突如鳴り響く鐘の音。
 ただ事ではない、と一瞬で分かる程の。
 何事だと辺りを見渡してると、2階の窓からナナノハが飛び降りてきて。
「緊急事態です!
 ヒュージ・フラベラの群れ、来ます!」
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