そして俺は召喚士に

イル

文字の大きさ
上 下
90 / 198

90話 季節イベント③

しおりを挟む
 再集合した後、何度目かの挑戦。

 レーシュトンの突進攻撃。駆け抜けた直線上の地面に、氷のトゲを残す。
 それを回避する事1回、2回。
 続く3回目の突進、それを槍のカウンター技で受ける。
 そして派生技で一気に詰め寄る。

 試しにと持ってみた槍だったけど、予想外に好感触。
 アーマーで攻撃を受ける事で威力の上がる斧、タイミングを合わせてのカウンターを多用する槍。コンボルートは覚えなおしだったが、基本の立ち回りは感覚を流用できた。
 自身の体力を削るリスクを背負っていた分、斧の方が威力自体は高い。けど回復に割いた時間もあった分、総合的な火力で言えば見た目ほどではない。
 反面、槍でカウンターに成功すればノーダメージで追撃できる。派生ステップが使いやすいのもあり、立ち回りにかなり余裕を持てている。

 連続突進の3回目は、途中で止まらず壁に激突する。その先は誘導済み、狙い通りの場所。
 大きなよろけモーションの隙に、斧に持ち替え大技を。
 コマ斬り、ぐるぐる回転しながらの連続攻撃。
 モーションもクールタイムも長いが、それに相応しい高火力。

 攻撃が終わらないうちに、レーシュトンが立ち上がる。
 そこで別のスキルのホールドを解く。横からウルフの鋭い噛み付き攻撃。
 長い溜め時間、短い射程。使い勝手の悪さ、その為の誘導。
 それを振りほどくモーションの間に、コマ斬りのフィニッシュ叩きつけ。
 立ち上る砂煙とともに、一桁大きいダメージを叩き込む。


「25パー切るぞ!」
 ショウヤの掛け声と共に、黄色かったボスの体力ゲージが赤になる。
 50%切りのここまでは何度もやってきた。けどここからは初見の領域だ。
 固定行動を警戒し、大きく距離を取る。
 傍ら、召喚をバードに切り替え防御と持続回復のバフを撒く。

 レーシュトンが前足で何度も地面を叩く。
 その度に、地面に氷のトゲが円状に広がっていく。
 近くのままだったら、ひとたまりもなかっただろう。
 反面、高さは無い。キリは空中コンボで攻撃続行。

 10回ほど繰り返したのち、最寄りであるキリの場所、空中にいるキリの真下へと跳躍。
 そして、ドーム状の吹雪攻撃。回避が間に合わず、キリが被弾。
 辛うじて残った体力で、退避していたこちら側へ撤退してくる。
「ごめん、タゲ引きバトンタッチ!」
「了解。」
 入れ替わり、バードのいる場所へ魔力ワイヤー移動し接近。
 ショウヤは火薬矢で火力を出し続けてくれているが、その分ターゲットを引かず、フリーでいる必要がある。
 キリが戻るまでの間、一時的なタイマン状態だ。


 すぐにレーシュトンの行動、ツノの連続振り上げ攻撃。
 それをひとつひとつカウンターで受け流していく。けど行動速度が上がって、反撃に移れない。…本体の方は。
 召喚体をウルフに戻し、バードがいた場所、空中から背中への襲撃。
 と気にしてる間に連続攻撃が止み、カウンターの構えが空振りに終わる
 次の敵の行動、両前足で強く地を叩く。
 その場所を中心に地面が凍り、広域にスリップエリアが広がる。
 こうなるとカウンターはタイミングが狂う。斧へと持ち替える。

 続く攻撃、弾速の早い冷気飛ばしの前兆。
 身構えるが、攻撃は上空へと逸れる。
 それを空中ステップで回避する、キリの戦線復帰だ。
 攻撃アップアイテムのエフェクトの、赤い粒子を纏っている。
「フルバフ入れてきた、行くよ。」
 そのまま斬り込むキリ。ならばとウルフに指示出し、バフの咆哮でさらに盛る。
 と同時に温存しておいた振り上げで頭を狙い、怯みを取る。
 のと並行してウルフに追加指示、ウィークポイントを作らせる。
 すぐに再びバードに切り替え上昇攻撃、本体も跳び斬りで作ったウィークポイントに同時攻撃、連続怯みを取る。
 そして攻撃後硬直をキャンセルしつつバードにワイヤー、上空へと。

 ここでとっておき、割増クールタイムと引き換えに他職から持ってきたエクステンドスキル。
 発動前モーションが、丁度同じ技を使ったキリと被る。
 上空で数度振る斧に、白い龍が追従して。
 龍が堕りゆくのと共に、無意識にスキル名を口にする。

「…天龍堕とし!」

 重力加速度を乗せた斧が残り僅かまで減ったゲージを削り切り、枠ごとゲージが砕ける。
 思わずコントローラーから片手離し握り拳。
 達成感で、その後のイベントムービーは頭に入ってこなかった。

「そだ、写真とろーぜ写真!」
 ムービー開け、そう切り出したのはショウヤだ。
 我に返り、システムログに称号パーツの獲得通知。
 そして討伐時間、制限時間残り3秒を切っていた。


 一通り落ち着いたところで、ポータルから戦闘エリアを出て街へ。
 ゲーム内時間も夜中、真っ暗な中で並木の装飾が地上を照らす。
 そしてBGMも普段と違う物、行くまでは無かった雪が降っている。
「そうか、もう0時過ぎてたか。」
 そうぼそりと言ったショウヤが、言葉を続けた。
「メリークリスマス、だな。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

処理中です...