そして俺は召喚士に

イル

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46話 形式上の大義名分④

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 夕方というには、まだまだ早い時間帯。
 それでも少し傾き始めた陽の光が、走る電車の中を窓の形で照らす。
 他に誰もいない車両の静けさに、電車の揺れる音が響く。

「ほんとに大丈夫?」
「はい、自分で持ちたいので!」
 ハルルの手元には結構な荷物が並べられている。
 …ほとんどは服屋の後に寄った店の菓子類だが。

「それにしても、あんなに密度の高い場所だったとは…次は下準備してゆかねば。」
 荷物の多さに撤退した、気持ち途中だった心残りが強く見て取れる。
「だからそんな気張って行くところじゃ──」
「ユートさん! 現地情報調べたりできますか!」
 …まぁ、本人がそうしたいなら別にいいか。
「マップなら調べれば出るんじゃないかな…ちょっとスマホ貸して。」
 公式サイトからフロアガイドを開き、ハルルに返す。
「…でも今見るのは、それはそれで待ち遠しくなってつらいですね。」
「俺は別に明日も時間あるぞ?」
「お願いしたいくらいなんですけど…これだけ食べ物あって更にため込むのもよろしくないですし、それに報告書も書かないとですし。」
「そういうとこはしっかりしてんだな。」
「これでも一応、れっきとした役目ですし。」
「でも今回の事とか、例えばどういう内容に? 文化調査というには大分偏ってた気がするんだけど。」
 一呼吸の間を置き、ハルルが返す。
「これまで存在の把握すらされてなかった場所、あらゆる事が未知で風景のひとつすら知ることが困難な地。
 それが向こうから見た、こちらの世界。
 そんな何があるか起こるかわからない場所に長期滞在なんて仕事、受ける人があまりにも少なくて。」
 確かに突然外国へ引っ越す、それ以上の事と考えるとハードルの高さは想像できる。
「だから日常生活の様式や快適さ、こっちの世界の楽しい事や選択肢、そういった情報は人員追加の際の重要な情報になるんですよ。
 だからレポートが発生する限り、経費の出る仕事なんです。」
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