上 下
8 / 8
絵里ちゃんとぶよちゃんの時間

絵里ちゃんとぶよちゃんの時間①

しおりを挟む
「ただいまー!」

玄関から元気な声が聞こえてきた。
絵里ちゃんが学校から帰ってきたみたいだ。

お母さんは仕事から早く帰ってきていて、キッチンで夕食の準備をしていた。
お父さんはまだ仕事中だけど、絵里ちゃんは一人じゃない。
ぼくが待っているからだ。

リビングに入ると、絵里ちゃんはランドセルを置いて、すぐにぼくのところに来てくれた。

「ぶよちゃん、ただいま!今日も楽しいことがいっぱいあったんだよ」

と、彼女はぼくを抱きしめながら話しかけてくれた。

お母さんがキッチンから顔を出して、

「おかえり、絵里ちゃん。学校どうだった?」

と尋ねると、絵里ちゃんは

「楽しかったよ!今日もいろんなことがあったの!」

と嬉しそうに答えた。

そして、ぼくをしっかり抱いて、自分の部屋に連れて行った。
部屋にはおもちゃや絵本がたくさん並んでいて、絵里ちゃんが遊ぶのにぴったりの場所。

絵里ちゃんはぶよちゃんをベッドの上に座らせて、「今日は何をしようか?」と考え始めた。


「そうだ、おままごとをしよう!」

彼女は小さなテーブルを準備し、そこにおもちゃの食器や料理を並べた。

「ぶよちゃん、お腹すいてる?今日は特別なディナーを作るからね!」

と楽しそうにぼくに話しかけながら、絵里ちゃんは料理を始めた。


「まずはスープからね。ぶよちゃんはにんじんが好きかな?それともじゃがいも?」

とぼくに聞いてくるけど、絵里ちゃんは自分で

「にんじんがいいよね!」

と答えながら、スープを作る真似をした。


次に、おもちゃのステーキを焼いて、

「はい、ぶよちゃん、どうぞ!」

とぼくの前に置いた。

ぼくはもちろん動けないけれど、絵里ちゃんはぼくも楽しんでいるように感じているみたい。

彼女はぼくに

「おいしい?」

と聞いて、

「うん、すごくおいしいよ!」

とぼくを動かして、にっこり笑った。
部屋には絵里ちゃんの明るい笑い声が響いた。

これはおもちゃだし、ぬいぐるみのぼくは本物の料理は食べれないけど、絵里ちゃんの料理をいつか食べてみたいな。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

【総集編】アリとキリギリスパロディ集

Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。 1分で読める! 各話読切 アリとキリギリスのパロディ集

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

星屑のラプソディー

ミイ
児童書・童話
耳は聞こえたし、口もあった。 ただ聞こえた音を声にする。 その能力が私にはとぼしかった。 私が話し出すと周りはおかしな顔をした。 そんな私が音楽と出会うお話。

処理中です...