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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

選定会議開始 緊急動議 下 貴城乃シューネの野望 全・国・版

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「何者なの!?」
「変な白いマスクを付けているわ」
「何様なのだ??」

 居並ぶ王達やそのご婦人達は、いきなり立ち上がって大声を上げた貴城乃たかぎのシューネを訝しがって見、ひそひそと話した。

「無礼だぞ!」
「早く座れ!!」

 血の気の多い武人系の人々は怒鳴り声を上げたが、シューネはフフッと笑みを浮かべたまま一切たじろぐ事は無かった。

「雪乃フルエレ女王陛下、セレネ王女殿下、是非ともこの神聖連邦帝国からの特使のこの私にご発言をお許し下さい」
「何やってんねんな~アイツ~~~」

 綺麗なドレスを着た瑠璃ィるりぃキャナリーは悪目立ちをするシューネを見て頭を抱えた。

「セレネさま如何いたしますか? 排除致しましょうか?」

 魔ローダー部隊の中でメランと共に会場に残ったナリがセレネに耳打ちした。セレネはチラッと特別席に座る雪乃フルエレ女王を見たが、彼女はヴェールの下表情は分からなかった。

「セレネさん私のアピールタイムを奪って酷いでしょう! ま、それは兎も角あのバカ、今度こそ消し炭にしましょうか??」
「二人共止めろ。今日の場は王達が集って衆議して平和的にフルエレさんを女王に共立する日だ。その日に血を見る事は避けたい。奴はそこそこの手練れだ何をするか分からんし、皆の前で切り札の砂緒の雷を出したくもない」

 セレネは一瞬だが逡巡してしまった。

「良いではないかっシューネ殿の発言を聞いてみたい物だ! ちなみに彼は北部海峡列国同盟の創設メンバーである我がリュフミュラン王国の客人ですじゃ、怪しい者ではないぞ」

「お父様!?」

 シューネに続いてリュフミュラン王が立ち上がって七華がビクッとした。

「リュフミュランの客人か……」
「リュフミュランは人口こそ少ないが、居住エリアが点々として広く伝統ある国だからな」

 腐っても鯛では無いが、北部列国では雑魚扱いのリュフミュランだが中部小国群の人々からはいっぱしの大国だと誤解されていた。

「リュフミュラン王め余計な事を……」

 セレネは歯ぎしりした。

「セレネさま、此処は一つ同盟の懐の広さを示されては?」

 今度はセレネの親戚に当たるユティトレッドのヒューゴーがリュフミュラン王に同調した。

「ヒューゴー貴様……おじいさまの名代で来ておいて……」

 セレネはリュフミュラン王にも増して、身内からの裏切りに等しい行為に内心烈火の如く怒った。

「セレネ、いいじゃない聞いてあげましょう」
「フルエレさん……」

 フルエレが小声で許可して、セレネは渋々従う事とした。セレネは声を出さず、腕を振った。

「発言の許可痛み入りますぞ、美しきセレネ王女殿下!」
「世辞は良い、手短に話せっ!」

 セレネは終始むすっとして返した。

「はい、では。先程から言っておる通りわたくし、はるか東の海を越えた神聖連邦帝国からこのセブンリーフに外交使節として参った次第。しかし此処に来て分かった事は、リュフミュラン王等優れた一部の方を除いて井の中の蛙が多い事多い事」

 ピシッ

「コイツ、死にたいんですかね?」

 シューネの不用意な発言で会場の空気が凍り付いた。スナコちゃんもホワイトボードを忘れ険しい顔になった。

「なん……だと?」
「はっはっはっこれは冗談が過ぎましたな。本気にしないで下さいよセレネ嬢。それは兎も角、私が提案したい事は、この女王投票に重要なファクターが抜けておるという事です」
「ほ、ほう、それは何かな?」

 セレネはワナワナと怒りで打ち震える手を抑えながら聞いた。

「それは候補者の中に我が神聖連邦帝国聖帝陛下の御息女、姫乃ソラーレ殿下の名前が入っておらぬ事!」

 両手を広げて自信たっぷりに言い切ったシューネに、会場はポカーンとなった。

「ははははははは、何なのですかこの者は?」
「何を言うかと思えば」
「姫何さまか知りませんが、セブンリーフと関係無いではないか!」

 会場のあちこちから笑い声が起きた。

「だまらっしゃい! それが井の中の蛙と言うのです!!」

 シューネの声に再び会場がシーンとなった。

「ほ、ほう、また言うか? 一体何がどうして姫乃という女性を候補者の中に入れる事が重要なのだ?」

 セレネは実は内心興味が出て聞いてしまった。

「よくぞ聞いて下さった。貴方方セブンリーフの人々は常に西の海を越えた域外の帝国ばかりを見ている。しかしそれは間違いだっ! セブンリーフと中心の洲、いや貴方達から見て東の地は同じ一つの言葉を話す輩なのです。その事を忘れてはいけない」
「ほほう、御高説痛み入る。しかしその姫乃殿下とやらのお姿が無いではないか?」
「これは異な事を、姿が無いと言うならば、アイイ殿や伽耶殿とやらもこの場におらぬのに候補者に名を連ねておるではないかっ!」

 セレネは一瞬絶句した。最初から呼ぶ気も無い者を賑やかしの為に候補者の名に連ねたのは自分自身だった。

「それもそうね……」

 会場の誰かが呟いてセレネは歯ぎしりをした。

「それは……」
「私の提案はもう一つあります」
「何だまだあるのか!?」
「実は姫乃殿下ともう一人候補者にしたい女性がおります。それは我が神聖連邦を構成する重要な王国クラウディアと並ぶ、スィートス王国の正統なる後継者、瑠璃ィキャナリー様です!! 彼女はこの会場におられますっ!!」

 言いながら、シューネは遠くの席に座る瑠璃ィキャナリーに掌を向けた。

「いやーやーーー!! 恥ずかしいわぁーーーシューネのアホ、いきなり何を言うねんな!?」

 瑠璃ィは柄にもなく両手で顔を覆ってしゃがんだ。

「瑠璃ィ、覚悟を決めろ! ちょっと立って目立って来い!! お前王女とか凄いヤツだったのカッ」
「瑠璃ィさん良かったじゃないですかっ! いつも目立つの好きじゃないですかっ!!」

 メアとウェカ王子は事の重大さを知らずにいつもの調子で瑠璃ィを煽った。


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