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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

危険な出会いと誘い 下

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「ふふ、話してくれる気になったかい? お礼に面白い物を見せてあげるよ」

 貴城乃たかぎのシューネは上機嫌になってフゥーに囁いた。

「その言い方、犯罪者にしか見えませんよ!」
「おっとそうだね、気を付けよう」

 等と言いながら二人は猫呼ねここ達と少し離れ、見えない角度にあるベンチに座った。

「………………」
「あの?」
「はい?」

 シューネはフゥーを誘いながら自ら積極的に語る事無く、景色を見ながらぼーっとしていた。

「あの、貴方から誘っておいて、何も話さないなら帰ります」
「おお、それは済まないね。しかしそんな奴隷の首輪を付けられて酷いとは思わないかい? 何でも旧ニナルティナでは域外の帝国に大量の奴隷を送っていたとか。君たちから見て東の地の神聖連邦帝国ではそうした七葉島の風習をとても訝しく見ていて、特に神聖連邦聖帝陛下は悲しんでおられるよ。人間は誰でも誰にも縛られず自由に生きる物であると」
「そんなの絵空事です」

 フゥーは即座にきっぱりと言い切った。

「ふはははこれは愉快だね! どう絵空事なんだい?」
「仮に自由に生きられたとして、人間には美醜や生まれの違いや能力の違いで必ず格差が生まれます。誰でも自由に生きられるなんて、ちょっとメルヘン過ぎて嘘くさいです。そんな事を言いきる人は私信用しない」

 シューネはフゥーの事を見損なっていたと感じた。これは逸材を見つけたと目を輝かせた。

「ふふ、でも実際にニナルティナでは奴隷が居る。けど神聖連邦帝国には奴隷は居ないし域外の帝国にも送らない、抽象的な理想論は兎も角、実際面で違いはあるんじゃないかな?」
「………………でも私は私の不幸を国の制度の所為になんかしない」
「上手くすり替えたね。くくく、君の立派な信条は兎も角ニナルティナの奴隷は大半が不幸だと思うよ」
「そうですね、じゃ帰ります」

 フゥーは頬をぷくっと膨らませてベンチから立ち上がろうとする。

「ごめんっ君と喧嘩するつもりは毛頭無いんだ。そうだ、約束していた面白い物を見せてやろう!」

 立ち上がり掛けたフゥーは一旦腰を降ろした。

「……もし卑猥なモノでしたら躊躇無く大声で叫びます」
「そんな心配をしていたのかい? 面白い物とはコレだよ」

 パカリとシューネはやおら白い仮面を外して素顔を見せた。

「あっ……砂緒にそっくり」
「違う違う、私に奴がそっくりなんだ。逆だよ逆」

 言いながらシューネはすぐに仮面を戻した。

「確かに面白いですね。どうして砂緒と同じ顔してるんですか?」
「それは私が聞きたいくらいだよ。僕の予想では砂緒が神聖連邦を撹乱する為に魔術か何かで顔を変えたと思ってるんだが……前に女装した状態も見たしね!」
「違いますよ。彼はアレで自分の事を美男子と思い込んでるので変装とかでは無いです。彼の生来の素顔だと思いますが」
「なる程……偶然の似た者という事か。まあ年齢的に私が元祖である事は変わらないがね」
「もういいですか?」
「いや、まだだよ。私からの大切なお話とお礼がまだだ」
「お礼?」

 とフゥーが言った直後にシューネの指先がスッと伸びてフゥーの首輪に掛かった。

「あっ何するんですか!? 今度こそ大声を上げますよ」
「安心して、ここをこうしてこうして、ピッピッと」

 カチャッ

「え?」

 直後、フゥーの首輪の封印魔法が解け、カチャリと外れてしまった。

「ふふっどうだい、これで自由だよ。これがお話ししてくれたお礼さ」
「困ります迷惑です! こんな事されても嬉しくありません。猫呼さまやフルエレさまを裏切る事になりますから」

 フゥーは立ち上がって首輪を手で押さえながら猛抗議した。

「そうなのかい? それは困ったね、じゃあこうしようかっ! この〇ロテープでぴっぴっとして、ほら出来上がり!」
「なっ? なんていい加減な人なの!?」

 シューネはフゥーの外された奴隷の首輪に〇ロテープで応急修理をしてしまった。

「それで君に言いたかった事は、君の戦士としての能力、神聖連邦帝国で使ってみないかい?」
「えっ?」
「君に東の地の神聖連邦帝国に来て欲しいって事だよ」
「……お断りします!」
「一生奴隷のままで良いのかい? それにいつか域外の帝国に連れていかれるかもしれないよ?」

 シューネは意地悪く言った。

「そんな事あり得ません」
「いや、君は途中から私の誘いに興味が出始めている。そうだね?」
「勝手に私の気持ち推理しないで下さい! そんな気持ちこれっぽっちもありません!」

 しかし実はシューネの言葉は正しかった。フゥーは途中からこの正体不明の怪しい男の言葉に少し惹かれていた。何故なのか? 確かにフルエレや猫呼は優しかった。その優しさに裏なんて無いとも確信している。でもそれ以上に何故かフゥーはココナツヒメやサッワやスピネルと居た日々に充足感を感じていて、最近それを思い出す事が多かった。それがこのシューネには同じ匂いを感じてしまったのだ。何かヒリヒリとする様な危険と隣り合わせの懐かしい感じがした。

「本当にそうなのかな?」
「………………い、いえ」

 フゥーは素直に自分の気持ちを探ろうと少し考え込んだ直後だった。

「そこまでだっっ!! 女の子を……特に可愛い女の子をいじめる奴はこの砂緒さまが許さん!」

 シューネの前に、紅蓮アルフォードの台詞を丸パクリした砂緒が立ちはだかった。その後ろには腕を組んで睨むセレネも居た。
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