404 / 588
Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
危険な出会いと誘い 中
しおりを挟む「や、やあ、猫呼ちゃん、お、お元気だったかなっ!?」
「うぇ、ウェカ王子さまこそ、ご機嫌麗しゅう……」
ビッキーンという擬音が聞こえて来そうな程に挨拶を交わす猫呼とウェカ王子はガチガチに緊張していた。本来の性格的にはウェカ王子も猫呼もセレネやフルエレと違い、お気楽過ぎるくらに気楽な性格で、誰とでも直ぐに打ち解けて話せるタイプなのに、下手に出会いの場面が危機に陥ったお姫様を助ける王子という、これ以上無いくらいに美化された状況下だった為、お互い本性を出すタイミングを失っていた。それ以上に両者とも嫌われたくないという気持ちも大きく、緊張しまくる再会となった。
「……そ、それで猫呼ちゃんは好きな食べ物は?」
「わ、わたわたしは、私の好きな食べ物!?」
(何が受けるの!? スイーツ、それとも庶民派的に煮干しとかカツブシとか??)
「あ、ゴメン、好きな食べ物とか聞くのダサいかな!? アハハッ」
(ハッ私が長考している所為でウェカ王子に恥をかかせてしまったっ急げ何かあるだろ)
「はい、私が好きな食べ物はウーパールーパーの素揚げです!」
「え?」
「なぁーメアちゃん二人共初々しいなあ、見てて赤面してしまうわー」
「そ、そうですね」
にこにこして二人を見守る瑠璃ィに対して、メアの顔は曇っていた。まだウェカ王子が衣世ちゃん王子と言われ皆から馬鹿にされていた頃、王子の理解者はメア唯一人で彼女も本気でこの頼りない王子を助け玉の輿に入ると信じ切っていた。しかし瑠璃ィが現れ外の世界を知り王子が成長した今、漁村出身の村娘メアは自分自身が王子に遠く及ばない身分違いの存在だという事を強く思い知らされていた。
「メアちゃん……気ィー落とさん時やーまだまだチャンスはあるでー」
「瑠璃ィさん……」
メアは少し笑顔で瑠璃ィを見た。
―フゥーを呼び止めた猫弐矢に戻る。
「君、もしかしてクラウディア人なのかい?」
「貴方達は??」
「僕は猫弐矢、クラウディア元王国から来た外交使節さ」
「同じく神聖連邦帝国から来た貴城乃シューネだ」
二人共年下のフゥーに仰々しくお辞儀をして、フゥーは戸惑った。
「ど、どうも。私は……遠い先祖がクラウディア人らしくて、猫呼さまにネコミミを頂いたばかりで」
フゥーもペコリと頭を下げる。
「えっ猫呼が居るのかい!?」
「はい、あそこにいらっしゃいますよ」
指をさすと猫弐矢がビクッとして振り向いた。
「ああっ本当だっ……誰かと話してるな」
その時、シューネはウェカ王子の横に侍る瑠璃ィキャナリーに気付いてしまった。
(うっ瑠璃ィさまっ? 何故此処にいらっしゃる?? 若君のサポートはどうなった?? まあ良い後で私が行う緊急動議の時に御本人がいる方が面白いか……)
「それよりも君はクラウディア人なのに何故奴隷の首輪をしているのかい?」
猫弐矢は身を屈め優しい声で心配顔で聞いて来た。フゥーはハッとして少し赤面する。
「わ、私は元同盟の敵対国のメドース・リガリァの戦士、国が滅びた時一緒に運命を共にするべき所を猫呼さまやフルエレさまに命を救われたのです。誰も恨んではおりません」
「そうなのかい? でももう首輪は外すべきだね。後で妹の猫呼に言っておくよ、こんな事は良くない」
(えっこの方が猫呼さまのお兄様……)
フゥーは一瞬心ときめいた猫弐矢が猫呼の兄と知って、言い知れない羨ましさを感じた。自分にも家族が居て、こんな優しい兄も居れば人生が変わっていたかもしれないと……
(この子の目……一見大人しい従順な奴隷を装っているが、何か内に秘めた蒼い炎を感じる)
貴城乃シューネはフゥーの一瞬の表情の変化を面白く見ていた。
「で、でも猫呼さまは奴隷の私をこんな晴れの場に出して頂き、それに美しいドレスまで頂いて」
「ふふっ奴隷にも気配り出来る賢い子だって自分をアピールする為かも知れないよ?」
白い仮面を付けるシューネが意地の悪い言い方をした。
「変な事を言うな! 猫呼は裏表の無い子なんだ。本気でこの子を大切にしてるハズさ」
「それはそれは失礼しましたなハハ」
「本当です! 猫呼さまは誰からも人気があって嘘や嫌味の無い御性格の方ですから」
それはフゥー自身が感じる本当の事だった。
「有難う……兄として誇らしいよ」
そう言いながら猫弐矢はフゥーの頭を優しく撫ぜた。
「にゃっ」
クラウディア人の遠い遺伝子が覚醒したのか、ぼうっと赤面して思わず猫声が出る。
(私もこんなお兄様が欲しい……)
そんな事を考えた直後。
「お兄様ーーーっ!! 猫弐矢お兄様~~~っ!!」
猫呼を持て余したウェカ王子が、同じ猫耳を付ける猫弐矢を発見して指をさし、それを見て猫呼が走って来た。
「猫呼っ! 猫呼じゃないかっ会いたかったぞ! アハハハッ」
小さい猫呼はジャンプして兄に抱き着き、二人は回転して抱き合った。二人の中でタカラ山の出来事は夢だったという事になり、今回が公的な絵になる再会という事になった。
「お兄様っ猫名お兄様がっ……酷い事を……ううっ会いたかったです」
猫呼は涙ぐんだ。
「シッその事は外では言っちゃだめだ、今度二人でじっくり話そう。でも今は再会を喜ぼうよ!」
「はいっお兄様」
二人はひと目もはばからず長く抱き合い、その様子をフゥーは何故か冷めた目で眺め続けた。
「おやおや一瞬で取られてしまったね? 面白く無いかい?」
シューネが近寄る瑠璃ィを眺めつつ、フゥーに小声で話し掛ける。
「何ですかさっきから貴方? 私本当は気が強いんですよ」
「ふふっ僕もそういう子の方が好みなんだ。どうだね、兄妹の感動の再会が嫌なら二人で少し話さないか?」
シューネは少し離れたベンチを指をさした。
「変な事するなら人を呼びますよ?」
「ははっこれだけ警備兵だらけで完全に二人きりになんてなれないさ。あくまであの二人から少し遠ざかるだけ」
確かにセレネが厳重過ぎるくらいに各所に警備兵を配置して常に目を光らせている。フゥーは園内なら安全と思い、少しシューネと話す事にした。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる