上 下
303 / 588
III プレ女王国連合の成立

蹴りたい砂緒か 上

しおりを挟む

「分かりましたっじゃあもう跳ね返しは必要無いですから、取り敢えず操縦席に戻して下さい!」
『……え、誰をですか?』

 この非常時にメランに一瞬の溜めがあった事で、彼女が微妙に不機嫌になっている事を感じた。

「あの、メランさん非常時ですよ、急いで下さい?」
『……はい』

 あからさまに暗い返事と共にメランは砂緒をル・ツーの操縦席にひょいと投げ入れた。

「兎幸、メラン席代わって下さい。あメラン魔力だけは出し続けて! それと兎幸、イェラのマーカーはどれ?」
「はいは~い、これだよん!」

 砂緒のル・ツーはすぐさまイェラの前に立ちはだかった。

『全機に次ぐ、長距離爆撃は無い物として、以後ル・ツーも盾役に入る。十一機で盾役とし、残り残存五機の皆さんは引き続きアタッカーを続けて下さい。混乱せずに冷静に対処すればなんて事の無い相手です!!』
『ハッ!!』
『おおっ司令官殿も盾役だぞっ!!』
『気合を入れろっ』

 その間も二発程の発射があったが、全て盾役が跳ね返していた。やはりY子の西側のミャマ地域軍十機よりも、十五機のSRVプラス、ル・ツーの合計魔ローダー十六機では余裕があった。

『ココナツヒメさま、敵が立ちはだかって!!』
『ちいっ結界装置も設置して行っているし容易に接近出来ないじゃないっ』
『寝転びましょう!』
『え?』
『最初からプローン姿勢で瞬間移動して現れて、脚の間から発射しましょう』
『何だかかっこ悪いけど背に腹は代えられないわ。分かったわ、一旦退きますわっ!!』

 ココナツヒメとサッワは、長距離射撃場へプローン姿勢を取る為に一旦戻った……

『あれっ消えたっ!?』
『司令官消えましたっ!?』
『防いだからか?』

 危機が一旦去って、一瞬余裕を取り戻すSRV隊だった。

「メラン、Y子殿に警戒の連絡を!」

『……Y子さん、こちらの部隊に現れてた半透明が消えました、そちらにまた現れるかもしれません、気を付けて下さい』
『わかったわっ!』

「伝えました」
「あれ、メラン何か怒ってます??」

 一瞬間があった。

「分かります?」
「あのー何で怒ってるんです??」
「砂緒さん私が告白してから私の事便利使いしてませんか??」

 ギクッとする砂緒。

「い、いえーそんな事ありませんよー」
(そ、そう言えばセレネにも似た様な事言われましたね……)

「私にイェラさんを守れ守れってちょっと酷くないですか?」
「いや、でもイェラは地上兵全部隊の指揮官ですよ?」

 砂緒もカチンと来てしまい、少し言い返す。

「あーそーですか、じゃイェラさんに魔ローダー操縦してもらえばどうですか?」
「メランさんってそういうタイプだったのですか? イェラは魔力無いの知ってますよね? 何をそんなに怒る事があるのでしょうか」
「もう良いです。セレネさんとフルエレさんには負けても仕方ないと思ってましたけど、それからさらに他の女の人の世話までさせられるなんて思ってませんでした!」

 メランが目を閉じて首を振りながら言った。

「メランって結構難しい子だったんですねえ」
「え、何なのその言い方……酷い」
「じゃ、私降ります」
「はい、どうぞ」
「ふ、二人共やめなよ~~~」

 本当にハッチを開けた砂緒を兎幸が割って入って仲裁しようとした直後だった。

 ダーーーン!!
 遠くの足元付近から大きな発射音がした。

『何だ!?』
『寝転んで発射しやがった!!』
『そこまでするか??』

 一旦長距離発射ポイントまで戻ったサッワとココナツヒメは、サッワのレヴェルをプローン姿勢の寝かしたままとし、中腰のココナツヒメのル・ワンがレヴェルの肩を掴んでそのまま瞬間移動をした。突然足元に寝転んだ状態で出現し、脚と脚の間からほぼ地面に並行に散弾を発射して地上兵を狙ったのだった。最初から地面にめり込んでしまう散弾もあるが、SRVに全て防がれるよりは効果があった。この一撃で多数の死傷者を出してしまった。

『アタッカー斬り込め!!』
『行けっ!!』

 シュンッ!!
アタッカー達が到達する寸前、二機はまたしても姿を消した。

『ココナさま、あと二発です……』
『あと二発か~~~ル・ツーの足元に居る人間達が指揮官臭い、まずフェイントで他所に出現して発射、直後にル・ツーの足元に出現して最後に発射で離脱だよ!!』
『はい、わかりました。外しません!!』

 プローン姿勢のまま魔ローダーの足元の間から発射してすぐさままた元の位置に戻り、相談を済ませると再び瞬間移動をした。

「もう良いです、やっぱり私降ります!!」
「あっ砂緒さん!?」

 しかし砂緒はメランに怒って、前言通りル・ツーから飛び降りてしまった。

 シュンッ!!
 まず砂緒達とは離れた位置に出現するココナツヒメ達。

『また出たぞっ!!』
『座れっ!!』
『サッカーのキーパーみたいに!』

『遅いよっ!!』

 バンッ!!
また低い位置からの発射で今度は一気に千人以上の犠牲者が出てしまった。

「ぎゃーーー」
「うわーーーー!!」
「助けてくれっ!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...