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II メドース・リガリァと北部海峡列国同盟
北部海峡列国同盟締結 6 舞台のフルエレ、過剰演出のゴーレム部隊が
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雪乃フルエレはしぶしぶとウエディングドレスの様に純白の豪華なドレスに着替えた。そしてセレネの母親も被ったというユティトレッド魔導王国のティアラを装着した。
「ふぅ、この姿のままプラプラする訳にも行かないし、控室で待つしか無いのね……」
フルエレは更衣用テントを出ると、今度は控室テントに向かおうとした。
「ふ、フルエレ君……その姿は? 一体……もしかして誰かと? 砂緒君と??」
アルベルトは花嫁衣裳にしか見えないドレスを見て、何が起こったのかと愕然としていた。
「アルベルトさん……これは列国同盟締結式典の衣装なんです。ユティトレッドに着る様言われたんです」
「あーーあーそうだろうね! びっくりした……はぁ、花嫁にしか見えなくて」
「ですよね、凄い恥ずかしい。アルベルトさんはニナルティナ代表なんですよね」
フルエレは少し赤面して上目遣いに応えた。
「そうなんだ、レナードがもし衣図ライグが居たら怖いから行かないと駄々をこねてしまって」
「そうなんですか……でも……視線が怖いです、そんなに見ないで~~」
フルエレは丸出しの鎖骨や、薄っすらと見える胸の谷間を手で隠した。
「いや済まない! 見てない、見てないですははは、ぼ、僕は魔戦車の様子を見て来る」
「行ってらっしゃい!」
フルエレは赤面しながら手を振った。
「もう後少しですわね、早く済ませて帰りたいですわ……」
あれから七華は侍女達を従え、あても無くフラフラと漂って歩いていた。
「あら、砂緒さま頭が泥だらけですわ、こちらへ」
とぼとぼ歩いている砂緒を見つけて近寄ると、頭の泥や土を払った。
「ありがとう七華……七華と一緒に居るとホッとするよ……誰もそんな事してくれない」
「まあ……砂緒様はいつも皆の為に頑張ってらっしゃるのに……酷いですわね」
「う……凄く優しい、何でこんな素晴らし人を置いて行ってしまったのだろう……」
先程後悔したと言いながら、早速グラグラし始める砂緒。
「時間ぎりぎり……ですが私がお慰めして差し上げましょうか……」
七華が妖しく微笑んだ。侍女が留めようとするが、手を向けて拒否する。七華はすかさず砂緒の腕に抱き着き豊かな胸が押し付けられる。
(あぁこの感じ……久しぶりだぁ……)
「いいんでしょうか? 二人で何処かに行きましょうか」
「そうですわねウフフ」
「良くねーーよ! これだけ時間ギリギリで何処行く気だよ!! 余計な体力使うんじゃねー!」
突然現れたセレネが砂緒の腕を掴んで引っ張り、連れて行こうとする。
「あら、貴方何? 砂緒様のなんですの?? 今この人は私とどこかで休憩するつもりですの」
七華が負けずに砂緒を引き戻す。
「休憩して体力消費しちゃダメだろ! はいはい、砂緒、もう式典が始まるぞ」
「まあ、何この人乱暴だこと」
「ほら、砂緒お前が私だけにって買ってくれたイヤリング、再装着したぞ」
(そんな事言ってません……)
確かにセレネの耳元にはイヤリングが復活していた。
「先程からお前だの砂緒と呼び捨てしたりと、一体貴方乱暴過ぎですわよ。砂緒様はわたしくの様なエレガントな女が好みなのですわ」
セレネがくすっと笑った。
「エレガントって単に色情狂の間違いじゃないんですか?」
七華を敵と認識しているのか、スラスラと言葉が出た。
「しき!? 何ていう言い種なのかしら?? 砂緒様は私が大人にして差し上げたのですわっ」
「あ、あの七華さん、そういう話は白昼では止めた方が……」
「へーーー大人にして差し上げたんですか? でも精神の方はどんどん退化しちゃったみたいですよ、この前も私の手首を掴んでキスしようとして来ましたから」
「セ、セレネさん、その事を何時まで言いふらすのですか? 未遂ですよね」
「まあまあそういうご関係? フルエレを差し置いて色々ありますのね。でもどうやら砂緒様は最後は私に帰って来たいご様子ですわ。ねえ?」
「へーーそうなの? じゃああたし喫茶猫呼にもう帰らなくて良いんだ?」
(何だこの状況??)
「えーと、つまり、私は、セレネも七華も大切な人だと……思っています」
「なんだそりゃ……はいもう行くぞ!」
「いーやっ私と休息しますっ!」
元に戻った。
「二人とも目を覚ませ!! そんな物取りあってどうする!?」
「取りあう程の価値のあるブツかしらね?」
見ていたイェラと猫呼があきれていた。
遂に北部海峡列国同盟締結式典が始まる事となった。
「いいですかフルエレさん、カンペに書いた通り、各国の代表者のお名前を順に読み上げて、最後になると突然用意したゴーレム部隊が現れます」
セレネが紙に書いた式次第を読み上げた。
「何それ……」
「その時にフルエレさんは、私が事前に会場に設置した蛇輪に颯爽と飛び乗り、ゴーレム部隊を壊滅させて、さらに鳥型に変形し急上昇して例の金色の粒子をまき散らしながら降下して来て、居並ぶ代表者達の前に現れ、同盟締結の宣誓をします。内容はカンペに書いていますが、短文なので暗記して下さい。分かりましたか?」
セレネは得意げに解説した。
「何それ……ダッサ……ていうかヤラセよね? それでメドース・リガリァへの敵愾心を掻き立てようって事? 酷い話だわ……」
「同盟の結束力を強め、平和な社会を作る為ですから!」
「それに金色の粒子って出そうと思って出る物じゃないわ」
「え、そうなんですか? じゃあ粒子はアドリブでお願いします」
「アドリブでって。砂緒は?」
「あぁ、砂緒なら先程私とずっと一緒にいました。今は七華王女と歓談しています」
「へー」
締結式が始まった。既に事前に各国の官僚や家臣が同盟の詳細を詰め、この締結式は単に一同が介するセレモニーだった。各国の代表は海が見える神殿の、白い大理石で出来た円形劇場にテーブルと椅子を並べ座っていた。
「リュフミュラン国、七華リュフミュラン第一王女殿下。新ニナルティナ公国レナード公代理、為嘉アルベルト殿」
まずは同盟の中核である、名前を呼ばれた二人が立ち上がって一礼をした。
「ラ・マッロカンプ国ウェカ王子」
気絶したままの王子を瑠璃ィとメアが無理やり立ち上がらせ、一礼をさせる。
(ん? ふざけているのか?)
セレネは訝しく思った。
「ユッマランド美魅ィ王女」
美魅ィと璃凪は仲良く手を握り合って、立ち上がって一礼をした。
「ブラザーズバンド島国御使者殿、シィーマ島国御使者殿」
少し離れた場所にある島国の二国が揃って礼をした。
「我が飛び地の館の主、伽耶クリソベリル殿」
セレネにじろっと見られながら名前を呼ばれた、単なるメイドさんの影武者の伽耶はぎこちなく立ち上がり礼をした。
「最後にわたくし、ユティトレッド魔導王国王女、セレネ」
名前を呼びあげていたセレネは最後に一礼をした。
「それでは一同の皆さま、この場に居並ぶ国々に固い絆を結ぶ証人として一人の少女を呼び寄せております。その少女は数々の奇跡を起こし、悪しき旧ニナルティナ王国を倒し、現在の北部列国に平和をもたらせた最大の立役者の雪乃フルエレ殿で御座います」
セレネが言うと魔法スポットライトが当たり、舞台下の階段をゆっくり昇り純白のドレスに黄金に輝くティアラを被った雪乃フルエレが現れた。内心心臓が飛び出そうな程緊張していたが、表面上は誰にも分らなかった。
「誰だ……」
「……なんと美しい……」
「天使だ……」
ザワザワとなり各国の配下の将軍や家臣や官僚たちが息を飲んだ。過剰演出ではあったが、それ程までにフルエレの美しさは飛び抜けていた。
「何ですの? これは……」
七華は不愉快で顔が歪んだ。
ドドドドドーーーーン
その時突然大きな爆発音が連続で鳴り、古い遺跡の白い大理石のあちこちからパラパラと埃と小石が落ちる。
「何だ!? 何事だ!?」
「きゃーどうしたの!?」
配下の人々が騒ぎ、控える各国の侍女やメイドさん達が慌てふためく。
「皆さまご安心を! これは事前に察知していた敵国の策謀です! 既に防御魔法陣や対策を施してあります。今こそ我らの同盟の決意を示す時ですぞ!」
セレネが腕を上げ、高らかに叫んだ。その時ささっとセレネの耳元に家臣が報告を上げる。
「セレネ様、用意していた以上の膨大な数のゴーレムが発生し、こちらに向かっております! 如何致しましょう!?」
「何?? どれ程なのだ??」
「はい、最初に予定しておりました数の十倍は居ます。このままですと、この会場も危険です。皆に避難の指示を!」
「出来るか! フルエレさんの蛇輪もある! 負ける事は無い。涼しい顔をしておれ!」
「はは……」
セレネも明らかに慌てていたが、何が何でも同盟を成功させたくて、避難の指示を止めた。
「私もSRVⅡルネッサで出る!」
セレネはおじい様に頼んで遂に許可を得た、自分専用の女性型魔ローダー、SRVⅡルネッサを置いている場所に走った。彼女は明らかに焦っていた。放置された各国代表はいきなりのトラブルに不審感を募らせた。
「何でしょうか……フルエレも蛇輪に乗りますか? 一応これを渡しておきます」
砂緒は不安感でいっぱいになっているフルエレの元に一番に走った。
「あ、ありがとう……砂緒ごめん、私いつもないがしろにしてたのに……」
フルエレは俯いた。
「何を言うのですか、私は常にフルエレの幸せばかり考えていますよ」
久しぶりにフルエレから感謝の言葉が聞けてひたすら嬉しい砂緒だった。
「フルエレ君、僕も魔戦車で待機する、君は何かあったら即避難だ!」
「は、はい! アルベルトさんお気をつけて!」
フルエレは砂緒を突き飛ばし、目が星になってアルベルトに手を振った。
「て、おーい!」
突き飛ばされた砂緒は、金色夜叉のお宮的ポーズでフルエレを見ていた。
「でも……私は各国代表を置いて避難なんて出来ない」
「フルエレ、何ですのこれは? 貴方にも責任がありますわよ!」
七華がフルエレに詰め寄った瞬間だった、空にビカッッと異常に眩しい光が光った。その場にいた全員が目を閉じた。そして目を開けた次の瞬間、空に三機の魔ローダーが浮かんでいた。
「何ぃーーーーーーーーーーーーーー!?」
その場に居合わせた人間は空に浮かぶ魔ローダーに度肝を抜かした。しかしそれらの魔ローダーに浮遊能力は無く、瞬間移動した上空からそのまま降下すると、円形劇場を囲む様にずしゃっと着地した。
「きゃーーーーー!!」
「逃げろ!!」
その直後からその場は我先にと逃げる家臣や将軍達で恐慌状態となった。
「フルエレ、蛇輪へ」
「ええっ!」
「行かせませんわよ!! 貴方達はここで全員死ぬのですわ!!」
居並ぶ各国の代表者に向けて、瞬間移動してきたココナツヒメの魔ローダール・一と、スピネルの魔ローダーデスペラードサイドワインダーカスタムのそれぞれ巨大な剣が振り下ろされた。
「ふぅ、この姿のままプラプラする訳にも行かないし、控室で待つしか無いのね……」
フルエレは更衣用テントを出ると、今度は控室テントに向かおうとした。
「ふ、フルエレ君……その姿は? 一体……もしかして誰かと? 砂緒君と??」
アルベルトは花嫁衣裳にしか見えないドレスを見て、何が起こったのかと愕然としていた。
「アルベルトさん……これは列国同盟締結式典の衣装なんです。ユティトレッドに着る様言われたんです」
「あーーあーそうだろうね! びっくりした……はぁ、花嫁にしか見えなくて」
「ですよね、凄い恥ずかしい。アルベルトさんはニナルティナ代表なんですよね」
フルエレは少し赤面して上目遣いに応えた。
「そうなんだ、レナードがもし衣図ライグが居たら怖いから行かないと駄々をこねてしまって」
「そうなんですか……でも……視線が怖いです、そんなに見ないで~~」
フルエレは丸出しの鎖骨や、薄っすらと見える胸の谷間を手で隠した。
「いや済まない! 見てない、見てないですははは、ぼ、僕は魔戦車の様子を見て来る」
「行ってらっしゃい!」
フルエレは赤面しながら手を振った。
「もう後少しですわね、早く済ませて帰りたいですわ……」
あれから七華は侍女達を従え、あても無くフラフラと漂って歩いていた。
「あら、砂緒さま頭が泥だらけですわ、こちらへ」
とぼとぼ歩いている砂緒を見つけて近寄ると、頭の泥や土を払った。
「ありがとう七華……七華と一緒に居るとホッとするよ……誰もそんな事してくれない」
「まあ……砂緒様はいつも皆の為に頑張ってらっしゃるのに……酷いですわね」
「う……凄く優しい、何でこんな素晴らし人を置いて行ってしまったのだろう……」
先程後悔したと言いながら、早速グラグラし始める砂緒。
「時間ぎりぎり……ですが私がお慰めして差し上げましょうか……」
七華が妖しく微笑んだ。侍女が留めようとするが、手を向けて拒否する。七華はすかさず砂緒の腕に抱き着き豊かな胸が押し付けられる。
(あぁこの感じ……久しぶりだぁ……)
「いいんでしょうか? 二人で何処かに行きましょうか」
「そうですわねウフフ」
「良くねーーよ! これだけ時間ギリギリで何処行く気だよ!! 余計な体力使うんじゃねー!」
突然現れたセレネが砂緒の腕を掴んで引っ張り、連れて行こうとする。
「あら、貴方何? 砂緒様のなんですの?? 今この人は私とどこかで休憩するつもりですの」
七華が負けずに砂緒を引き戻す。
「休憩して体力消費しちゃダメだろ! はいはい、砂緒、もう式典が始まるぞ」
「まあ、何この人乱暴だこと」
「ほら、砂緒お前が私だけにって買ってくれたイヤリング、再装着したぞ」
(そんな事言ってません……)
確かにセレネの耳元にはイヤリングが復活していた。
「先程からお前だの砂緒と呼び捨てしたりと、一体貴方乱暴過ぎですわよ。砂緒様はわたしくの様なエレガントな女が好みなのですわ」
セレネがくすっと笑った。
「エレガントって単に色情狂の間違いじゃないんですか?」
七華を敵と認識しているのか、スラスラと言葉が出た。
「しき!? 何ていう言い種なのかしら?? 砂緒様は私が大人にして差し上げたのですわっ」
「あ、あの七華さん、そういう話は白昼では止めた方が……」
「へーーー大人にして差し上げたんですか? でも精神の方はどんどん退化しちゃったみたいですよ、この前も私の手首を掴んでキスしようとして来ましたから」
「セ、セレネさん、その事を何時まで言いふらすのですか? 未遂ですよね」
「まあまあそういうご関係? フルエレを差し置いて色々ありますのね。でもどうやら砂緒様は最後は私に帰って来たいご様子ですわ。ねえ?」
「へーーそうなの? じゃああたし喫茶猫呼にもう帰らなくて良いんだ?」
(何だこの状況??)
「えーと、つまり、私は、セレネも七華も大切な人だと……思っています」
「なんだそりゃ……はいもう行くぞ!」
「いーやっ私と休息しますっ!」
元に戻った。
「二人とも目を覚ませ!! そんな物取りあってどうする!?」
「取りあう程の価値のあるブツかしらね?」
見ていたイェラと猫呼があきれていた。
遂に北部海峡列国同盟締結式典が始まる事となった。
「いいですかフルエレさん、カンペに書いた通り、各国の代表者のお名前を順に読み上げて、最後になると突然用意したゴーレム部隊が現れます」
セレネが紙に書いた式次第を読み上げた。
「何それ……」
「その時にフルエレさんは、私が事前に会場に設置した蛇輪に颯爽と飛び乗り、ゴーレム部隊を壊滅させて、さらに鳥型に変形し急上昇して例の金色の粒子をまき散らしながら降下して来て、居並ぶ代表者達の前に現れ、同盟締結の宣誓をします。内容はカンペに書いていますが、短文なので暗記して下さい。分かりましたか?」
セレネは得意げに解説した。
「何それ……ダッサ……ていうかヤラセよね? それでメドース・リガリァへの敵愾心を掻き立てようって事? 酷い話だわ……」
「同盟の結束力を強め、平和な社会を作る為ですから!」
「それに金色の粒子って出そうと思って出る物じゃないわ」
「え、そうなんですか? じゃあ粒子はアドリブでお願いします」
「アドリブでって。砂緒は?」
「あぁ、砂緒なら先程私とずっと一緒にいました。今は七華王女と歓談しています」
「へー」
締結式が始まった。既に事前に各国の官僚や家臣が同盟の詳細を詰め、この締結式は単に一同が介するセレモニーだった。各国の代表は海が見える神殿の、白い大理石で出来た円形劇場にテーブルと椅子を並べ座っていた。
「リュフミュラン国、七華リュフミュラン第一王女殿下。新ニナルティナ公国レナード公代理、為嘉アルベルト殿」
まずは同盟の中核である、名前を呼ばれた二人が立ち上がって一礼をした。
「ラ・マッロカンプ国ウェカ王子」
気絶したままの王子を瑠璃ィとメアが無理やり立ち上がらせ、一礼をさせる。
(ん? ふざけているのか?)
セレネは訝しく思った。
「ユッマランド美魅ィ王女」
美魅ィと璃凪は仲良く手を握り合って、立ち上がって一礼をした。
「ブラザーズバンド島国御使者殿、シィーマ島国御使者殿」
少し離れた場所にある島国の二国が揃って礼をした。
「我が飛び地の館の主、伽耶クリソベリル殿」
セレネにじろっと見られながら名前を呼ばれた、単なるメイドさんの影武者の伽耶はぎこちなく立ち上がり礼をした。
「最後にわたくし、ユティトレッド魔導王国王女、セレネ」
名前を呼びあげていたセレネは最後に一礼をした。
「それでは一同の皆さま、この場に居並ぶ国々に固い絆を結ぶ証人として一人の少女を呼び寄せております。その少女は数々の奇跡を起こし、悪しき旧ニナルティナ王国を倒し、現在の北部列国に平和をもたらせた最大の立役者の雪乃フルエレ殿で御座います」
セレネが言うと魔法スポットライトが当たり、舞台下の階段をゆっくり昇り純白のドレスに黄金に輝くティアラを被った雪乃フルエレが現れた。内心心臓が飛び出そうな程緊張していたが、表面上は誰にも分らなかった。
「誰だ……」
「……なんと美しい……」
「天使だ……」
ザワザワとなり各国の配下の将軍や家臣や官僚たちが息を飲んだ。過剰演出ではあったが、それ程までにフルエレの美しさは飛び抜けていた。
「何ですの? これは……」
七華は不愉快で顔が歪んだ。
ドドドドドーーーーン
その時突然大きな爆発音が連続で鳴り、古い遺跡の白い大理石のあちこちからパラパラと埃と小石が落ちる。
「何だ!? 何事だ!?」
「きゃーどうしたの!?」
配下の人々が騒ぎ、控える各国の侍女やメイドさん達が慌てふためく。
「皆さまご安心を! これは事前に察知していた敵国の策謀です! 既に防御魔法陣や対策を施してあります。今こそ我らの同盟の決意を示す時ですぞ!」
セレネが腕を上げ、高らかに叫んだ。その時ささっとセレネの耳元に家臣が報告を上げる。
「セレネ様、用意していた以上の膨大な数のゴーレムが発生し、こちらに向かっております! 如何致しましょう!?」
「何?? どれ程なのだ??」
「はい、最初に予定しておりました数の十倍は居ます。このままですと、この会場も危険です。皆に避難の指示を!」
「出来るか! フルエレさんの蛇輪もある! 負ける事は無い。涼しい顔をしておれ!」
「はは……」
セレネも明らかに慌てていたが、何が何でも同盟を成功させたくて、避難の指示を止めた。
「私もSRVⅡルネッサで出る!」
セレネはおじい様に頼んで遂に許可を得た、自分専用の女性型魔ローダー、SRVⅡルネッサを置いている場所に走った。彼女は明らかに焦っていた。放置された各国代表はいきなりのトラブルに不審感を募らせた。
「何でしょうか……フルエレも蛇輪に乗りますか? 一応これを渡しておきます」
砂緒は不安感でいっぱいになっているフルエレの元に一番に走った。
「あ、ありがとう……砂緒ごめん、私いつもないがしろにしてたのに……」
フルエレは俯いた。
「何を言うのですか、私は常にフルエレの幸せばかり考えていますよ」
久しぶりにフルエレから感謝の言葉が聞けてひたすら嬉しい砂緒だった。
「フルエレ君、僕も魔戦車で待機する、君は何かあったら即避難だ!」
「は、はい! アルベルトさんお気をつけて!」
フルエレは砂緒を突き飛ばし、目が星になってアルベルトに手を振った。
「て、おーい!」
突き飛ばされた砂緒は、金色夜叉のお宮的ポーズでフルエレを見ていた。
「でも……私は各国代表を置いて避難なんて出来ない」
「フルエレ、何ですのこれは? 貴方にも責任がありますわよ!」
七華がフルエレに詰め寄った瞬間だった、空にビカッッと異常に眩しい光が光った。その場にいた全員が目を閉じた。そして目を開けた次の瞬間、空に三機の魔ローダーが浮かんでいた。
「何ぃーーーーーーーーーーーーーー!?」
その場に居合わせた人間は空に浮かぶ魔ローダーに度肝を抜かした。しかしそれらの魔ローダーに浮遊能力は無く、瞬間移動した上空からそのまま降下すると、円形劇場を囲む様にずしゃっと着地した。
「きゃーーーーー!!」
「逃げろ!!」
その直後からその場は我先にと逃げる家臣や将軍達で恐慌状態となった。
「フルエレ、蛇輪へ」
「ええっ!」
「行かせませんわよ!! 貴方達はここで全員死ぬのですわ!!」
居並ぶ各国の代表者に向けて、瞬間移動してきたココナツヒメの魔ローダール・一と、スピネルの魔ローダーデスペラードサイドワインダーカスタムのそれぞれ巨大な剣が振り下ろされた。
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