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第一部 嫉妬と情愛の狭間

第166話 成人の儀 其の三十二★       ──一体誰に仕込まれたのか──

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「……あ…っ、は……ぁ…」


 一度身体の芯に灯った熱は、なかなか消えてくれない。じくじくと肌の裏側を炙るように、いつまでも余韻が残る。
 紫雨むらさめの指が、胎内なかからゆっくりと抜かれていく感触ですら、香彩かさいにとって堪らないものだった。
 じわりと再び灼かれそうになる深い法悦に、香彩かさいは色付いた白い身体を、紫雨むらさめの胸の上で軽くくねらせ震わせる。早く指を抜いて欲しいと思う気持ちと、抜かれてぽっかりと指の形に開く寂しい気持ちが、心の中を複雑に支配する。
 後蕾から離れていく指に、追い縋る様に引く卑猥で透明な糸。胎内なかから溢れ出したそれは、香彩かさいの白い内腿に一筋の線を描いて流れていく。


胎内なかでこうも気を遣るとは。……彼奴め。実に腹立だしいが、上手に仕込まれたものだ」


 欲に掠れた官能的な低い声が紡ぐ鄙陋ひろうな言葉に、香彩かさいはそんな風に言わないでほしいとばかりに、首を横に振った。


「ん? 彼奴ではないと?」
「違っ……そうじゃな……っ、あ…」


 香彩かさいが顔を上げる。
 それを見計らったかのように、紫雨むらさめの熱くて骨張った手が、香彩かさいの白桃のような瑞々しいいざらいに触れた。双臀を卑猥な手付きで撫で回され、一番肉付きの良いところを楽しむように揉み込まれて、織火のように燻り続けている官能に、新たな熱が灯る。
 そんな香彩かさいの様子に、紫雨むらさめがくつりと喉奥で面白そうに笑った。


「ん? 分からないな。しっかりと俺に教えておいて貰おうか、かさい」


 一体誰に仕込まれたのか。


「……っ」


 香彩かさいは恨みがましい目を紫雨むらさめに向け、睨もうとした。分かっていて敢えて言わそうとしている彼を、腹立だしく思う。だがそんな反抗的な目も、紫雨むらさめの征服欲と嗜虐心を擽るだけだということに、香彩かさい自身気付いていなかった。
 臀に触れていた紫雨むらさめの指が、尾骶に辿り着く。そしてゆっくりと尾骶から後蕾、ふぐりから若茎の裏筋を、まるで一本の線をなぞるように、じっくりと触れた。先走りの蜜と花蕾から溢れる蜜によってその場所は、しとどに濡れ、紫雨むらさめが指を滑らせる度に、ちゅくと淫靡な水音を立てる。


「……っ、あ……っ、ん」


 蜜によって濡れた紫雨むらさめの指先が、戯れのようにやわやわと香彩かさいのふぐりを揉み込んだ。その感触を楽しんでいるのか、暫く掌の中で転がされる。力の抜けてしまった身体を何とか動かして、香彩かさい紫雨むらさめの手から逃げるように上へと上がる。だが彼の長い腕と指は、容易く香彩かさいを捕まえて、再びその花蕾に触れるのだ。

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