せんせい、僕に描き方を教えてください

前略、花吹雪の通学路より

お変わりありませんか。
きっと元気に研究に打ち込んで
いらっしゃることでしょう。
僕も教員として楽しく学校生活を送っております。

長の無沙汰の後、突然のお便り失礼します。

卒業生を送るのは、毎年感慨深いものですが、
今回は、感激もひとしおです。
偏差値40の工業高校から、公立大学に進学する
生徒を送り出しました。
3年間、職員が一丸となって支え、手塩にかけて
育て上げた生徒です。
あまりにもよくできる生徒だったので、
先生たちが進学させたくなったのですが、
彼も僕らの期待によくよく応えてくれました。
（元々彼なりの事情があって、進学を
断念していたようなので、それが実を結んだ
と言えます）

僕はいつも子どもの可能性というものに
前向きな感情を抱いていますが、
今回、改めてその思いを強固にしました。
もはや信念の域にまで高まっています。
また4月には新しい生徒たちが入学してきます。
どんな化け方をするのかと思うとわくわくします。

突然のお便りを不審に思われるであろうと
思いつつも、どうしても筆をとらずにいられなかったのは、
この喜びを分かち合うひとが欲しいと思ったときに、
思い浮かんだのは、あなただったからです。

本当にかわいくていい生徒で、この3年間は
かつてないほど充実していました。
こんな機会にめぐり合うことができて、
何に感謝していいかわからない。
だから教職はやめられません。
あなたもきっと試験管とにらめっこしながら
セレンディピティに目を輝かせていることでしょう。
是非、そうあって欲しいです。

そもそもこの便りが届くか、目を通していただけるか
どうかもわかりません。
それでも、僕はあなたに聴いて欲しかった。
この思いを伝えたいと思える相手が居てよかったと思っています。

ありがとう


テル彦