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創作ことはじめ

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俺には姉がふたり居る。
5歳違いの上の姉は子どもが生まれるまで
私立高校で講師をしていた。
子どもが幼稚園のとき、元の学校にひと月だけ非常勤に呼ばれ、
奇蹟のような体験をしたことを、興奮気味に
語ってくれて、事実とは奇なるものであるなあ、と
思ったことだ。
ドラマやマンガだと、そんな設定ないわーという
ミラクルやご都合主義のようなことが、
意外とリアルで起こってしまうことがある。
あまりにもできた話だったが、素敵なことだと
思ったので、食指が動いたわけだ。


「じゃあ、あのエピソードだけが事実なわけですか」


「まあ、そうだな」


「その後、どうやって小説として肉付けを
していったんですか?」


質問の仕方がうまいなあ。

しかし、ハテ。
どうしたのだっけ。
興が乗ってすいすい描けてしまったという
記憶しかない。
そういうときは、独り善がりになっているか、
客観的に面白くて筆が走るか、どちらかな気がする。
佳いものに仕上がっているかどうかは、
読者が決めることだろう。


「なんか憑かれてる感じ?」


「疲労ですか?」


「くだらないボケをするなら、もう話してやらん」


「せんせいこそ、適切な表現で説明をしてください。
そんな曖昧模糊としたことで、生徒に伝わると
思ってるんですか?」


ヘイヘイ。
じゃあ、がんばって記憶をたどりましょう。


「まずはキャラですよね?」


うん、まあ、そうだな。
どんなキャラにするかで、物語の方向性が
決まるといえよう。

これは小説というより、マンガの技法かもしれんが、
キャラが立っている小説のほうが、俺は好きだ。
あまりにも文学しいものは苦手。

キャラクタ小説は、その人物がそこに現れた瞬間に
物語が動き出す。


姉が非常勤に呼ばれたのは、ひと月、4時間のみ。
担当の先生が急病で倒れ、他のクラスはなんとか
他の先生たちでカバーできたのだが、どうしても
その4時間だけ埋められなかったという。
なんせ、凄まじい女子クラスであったそうだから、
姉は相当面喰らったようだ。
幸い、以前勤めていたとき教えた子の
年の離れた妹が居て、その子が援けになったそうだが。


おっと、予鈴だ。
授業、授業!


「じゃあ、せんせい、また明日!」


いや、その前に世界史の授業があるけどな。
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