Forever Friends

てるる

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OB工藤くん2

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「イノダ、楽しみだね」

工藤くんがさもおもしろいものを見るかのように
あたしの顔に目をやり、言った。
うん、とっても楽しみ!
このために京都に来たと言っても過言ではありません。
バスを降りて、あたしたちは目指すレモン・パイのために、
人混みを縫って、珈琲店に足を運んだ。
期待に胸を膨らませ、覗いてみると、
ショウ・ウィンドウには、シトリンのように
輝くレモン・パイが並んでおりました。
もしここになければ、京都中探したかも。

工藤くんが、笑いをこらえているのが
忌々しいんですけど。


うちらが幹部のとき、カレシは社会人、カノジョは
院に進学していたんだっけ。
まあ、要は遠距離恋愛の同志になっていたんだよね。
工藤くんは先輩たちにもかわいがられていたし、
力也先輩も卒業後は、工藤くんにあたしのお目付け役を
させていたようなところがあった。

さら髪で銀縁眼鏡の工藤くんはスマートで、
うちら同期の女子部員の間でも、女友だちのように人気があって、
みんなとよく馴染んでいた。
「工藤くんとなら、夜ひとつ部屋で過ごしても
何もないよね!」
って、みんな言ってたこれは誉め言葉。
カノジョ持ちの工藤くんの誠実さには、絶大なる信頼があったの。
工藤くんが聴いていい気分になるかどうかは
わからないけど、彼は自分のカノジョさんにさえ
愛されていればそれでOKというオーラを纏っていたから、
有象無象に何を言われても涼しい顔をしていたろうね。
その有象無象の中でも、あたしは何故かちょっと特別だった
みたいだけど。

だから、今でもこうしてふたり向き合わせで座ってる。

最後の夏合宿のときに、あたしが工藤くんの
食べてたソフトクリームを見ていたら、
そのままひと口くれたの、覚えてるかな。
あまりにも自然で、思わず口をつけてしまったけど、
見ていた同期や後輩から、大ブーイングを
受けたよね。
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