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年の差10はナシですか 13
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盆踊りのお囃子と屋台で賑わう通りを避け、
俺たちは人気のないお社の腰掛に落ち着いた。
七穂さんは、絞りの浴衣姿で、首筋を伝う汗が
とてもセクシーだと思った。
下駄ばきだから、いつもよりちょっとだけ
背が高い。
「俺、二十歳の会社員ですけど、ダメですか?」
俺は重ねて七穂さんに返答を迫った。
七穂さんはしばらく団扇で蚊を払っていたが、
「ずるい女」
と呟いた。
それ、歌のタイトルですよね。
おちゃらけるつもりはなかったが、つい
言ってしまうと、七穂さんは苦笑いをして
つづけた。
「日置くんを、しばっちゃった」
それを言うなら、俺のほうじゃないですか?
先生にカレシができたら、俺がガッカリ
するんじゃないかって、思わせたでしょう?
俺はその気持ちを利用していたことを
正直に白状した。
人倫にもとることでなければ、どんな手を使ってでも
先生を俺に振り向かせたかったから。
七穂さんは首を横に振った。
アップにした髪の後れ毛が揺れる。
「10歳も年上の大人がそんなことしちゃ
いけないのよ」
わたしも日置くんが好きなの。
好きになったらいけなかったのに。
一緒に居る時間を作っちゃったりして、ゴメンね。
そう七穂先生は謝るが、
俺はその告白に上気した。
完全に相思相愛じゃないか。
先生、どこに問題が、と俺が言いかけると、
「そう、わたしは教師なの。
日置くんは、」
みなまで言えず、七穂さんははらはらと涙をこぼし、
嗚咽した。
教師が生徒と個人的な関係になったら、
他の生徒がなんと思うだろうか。
最大の裏切りではないのか。
いつもそう考えているのに、
俺に対する気持ちを抑えることができなくて
恥ずかしいと、先生はさめざめと泣いた。
七穂さんは、教師である前に人間でしょう?
先生が生徒に恋したらダメなんですか?
俺は七穂さんを抱きすくめた。
女の子を抱くなんて初めてだから、
どうにも様にならないんだけど、思うさま
腕に力をこめた。
浴衣を通して、見た目より量感のある身体の
柔らかく熱い感触がしっとりと吸い付く。
愛おしさとひとつになりたいという欲求が
渦のようになって身体の芯を貫いた。
七穂さんは俺の腕の中で、小さくなって
震えている。
そして、しばらくして俺から身をはがすと
「ダメなんだよ、わたしは人間である前に
教師だもの」
涙に濡れた笑顔で俺を見た。
初めて好きなひとのために股間に滾らせた血液が、
引いていく音が聞こえるようだった。
こんな切羽詰まった状況でも
妙に冷静になれるもので、なるほど「萎える」とは
こういうことなのかと俺は感心していた。
七穂さんに完膚なきまで拒絶され、
俺は心底落ち込んだ。
好き合っているからこそ残酷だ。
俺たちは人気のないお社の腰掛に落ち着いた。
七穂さんは、絞りの浴衣姿で、首筋を伝う汗が
とてもセクシーだと思った。
下駄ばきだから、いつもよりちょっとだけ
背が高い。
「俺、二十歳の会社員ですけど、ダメですか?」
俺は重ねて七穂さんに返答を迫った。
七穂さんはしばらく団扇で蚊を払っていたが、
「ずるい女」
と呟いた。
それ、歌のタイトルですよね。
おちゃらけるつもりはなかったが、つい
言ってしまうと、七穂さんは苦笑いをして
つづけた。
「日置くんを、しばっちゃった」
それを言うなら、俺のほうじゃないですか?
先生にカレシができたら、俺がガッカリ
するんじゃないかって、思わせたでしょう?
俺はその気持ちを利用していたことを
正直に白状した。
人倫にもとることでなければ、どんな手を使ってでも
先生を俺に振り向かせたかったから。
七穂さんは首を横に振った。
アップにした髪の後れ毛が揺れる。
「10歳も年上の大人がそんなことしちゃ
いけないのよ」
わたしも日置くんが好きなの。
好きになったらいけなかったのに。
一緒に居る時間を作っちゃったりして、ゴメンね。
そう七穂先生は謝るが、
俺はその告白に上気した。
完全に相思相愛じゃないか。
先生、どこに問題が、と俺が言いかけると、
「そう、わたしは教師なの。
日置くんは、」
みなまで言えず、七穂さんははらはらと涙をこぼし、
嗚咽した。
教師が生徒と個人的な関係になったら、
他の生徒がなんと思うだろうか。
最大の裏切りではないのか。
いつもそう考えているのに、
俺に対する気持ちを抑えることができなくて
恥ずかしいと、先生はさめざめと泣いた。
七穂さんは、教師である前に人間でしょう?
先生が生徒に恋したらダメなんですか?
俺は七穂さんを抱きすくめた。
女の子を抱くなんて初めてだから、
どうにも様にならないんだけど、思うさま
腕に力をこめた。
浴衣を通して、見た目より量感のある身体の
柔らかく熱い感触がしっとりと吸い付く。
愛おしさとひとつになりたいという欲求が
渦のようになって身体の芯を貫いた。
七穂さんは俺の腕の中で、小さくなって
震えている。
そして、しばらくして俺から身をはがすと
「ダメなんだよ、わたしは人間である前に
教師だもの」
涙に濡れた笑顔で俺を見た。
初めて好きなひとのために股間に滾らせた血液が、
引いていく音が聞こえるようだった。
こんな切羽詰まった状況でも
妙に冷静になれるもので、なるほど「萎える」とは
こういうことなのかと俺は感心していた。
七穂さんに完膚なきまで拒絶され、
俺は心底落ち込んだ。
好き合っているからこそ残酷だ。
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