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第七章 その一
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第七章
翌日、日曜日の朝。
小学四年生の一人息子の優太を少年野球の練習に送り出すため、由紀は一旦7時に起きると、朝食を食べさせ玄関で見送った。そして昨夜の寝不足からすぐにまたベッドに戻り、再び目覚めたのは11時を過ぎた頃だった。リビングルームでは既にコーヒーの香りが漂うなかで吾郎がソファに寝転がりながらタブレットPCでニュースを読んでいた。由紀はマグカップにコーヒーを注ぐとキッチンに立ったまま仲間のお母さん達からの連絡メールに目を通し始めた。二人とも早朝の珍客、信長の今後の話を切り出したいと思いながらも、起きて早々この難題を話題にすることを躊躇い、普段と変わりない日曜の朝を過ごしていた。
その頃布団の中で信長もようやく目を覚ました。
横になりながら部屋を見渡し昨日からの状況が変わっていないことに失望した。
(一体どうしたことか。皆達は今頃どうしているであろう)
天井を見ながら昨日の激動の数々の出来事を思い返した。
(今日こそは一旦国に戻らねば)
ふん、と勢いよく起き上がった信長は、部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
しかし扉が開かない。押せども、引けどもドアはびくともしない。
ドンドンとドアを叩く音に気づいた吾郎が部屋にやってきた。
「おはようございます。良く眠れましたか?」
ドアを開けるためにはノブを回すことを知った。
部屋への出入りさえ不自由する信長は再び郷愁に駆られた。
吾郎がリビングルームに向かう一方、信長は玄関から外へと向かった。
「殿、用足しでしょうか?」
「うむ」
「トイレにお連れいたします。厠をトイレって言うんです。別の国の言葉ですけどね」
吾郎がトイレの明かりをつけてドアを開けると、便座の丸い蓋が自動的に開いた。
そしてここからまた暫く信長の思考は停止する。
「これが便器です。随分おかしな格好に思われるかもしれませんが、この中で用を足してください。大の時はこう、小はこう」
吾郎が実際に身振りを交えて説明を始めた。
「で、終わったらこのボタンを押すと水と一緒に流れます。紙が必要な時はここにありますから。ドアを開ける時はこのレバーを下げれば開きます。分からない事があったら呼んでください」
吾郎がリビングルームに戻って行った。
一人トイレに残った信長は、便座に腰かけながら緊張し息苦しさを感じた。壁に据え付けられた操作板をじっと眺めはしたものの、風呂場の出来事もあり、いたずらに触れることは控えた。相変わらず吾郎の説明は半分も分からなかった。しかしそれを考えても無駄であることを実感していた。
(ここが厠なのか。むしろ良い匂いがするのは何故じゃ)
トイレットペーパーの白さ、薄さと柔らかさに感心し、立ち上がってボタンを押した際の大量に流れ出る水に見入った。信長の時代はただ用を足す場所を厠と言っただけである。すべきことは同じなのに何故かひどく大袈裟に思えた。
「おはようございます」
リビングルームに入って来る信長を由紀は爽やかなあいさつで迎えた。
この男が織田信長本人だとは未だ信じられない。しかし昨夜の振る舞いを思い返すと、吾郎が言った通り危険な人物ではなさそうだった。
となれば、取りあえず我が家の客人としてもてなそうと考えた。
吾郎が信長をソファに座らせたところで由紀は遅い朝食の準備を始めた。
トースト、スクランブルエッグ、野菜サラダ、コーヒー、ヨーグルト。
手際よくテーブルに並べ終えると、
「さあ、食べましょう。」と信長を促し、自らも椅子に座った。
今朝の料理は昨晩とは一転して信長にとって見たことの無い物ばかりが食卓に並んでいた。
信長の戸惑う様子に、吾郎はまず自分で食べ、次にそれぞれが何であるかを説明した。その説明を聞いているのか、聞いていないのか、信長は見様見真似でフォークを使い恐る恐る口に入れては、何か呟いていた。
(餅か?・・・・いやまるで違う)
(鶏の卵か?・・・・随分雑な料理じゃ)
(焦げた茶に牛の乳だと・・・気色悪いのぉ)
(葉っぱを生で食す・・・腹を壊さんのか)
由紀は食事をしながらもさりげなく信長を観察していた。
実は敢えて今朝の朝食にこのメニューを選んだのには訳があった。
戦国時代からやってきた、という事が真っ赤な嘘であれば、食事に際してどこかで現代人の常識をうかつにも見せるはず、と思ったからである。
信長の時代には存在しない料理を出すことで、その反応を見てみたかった。
その反応はというと----。
(やはりこの人は現代人じゃないみたい。食べ方もひどくもどかしいし)
由紀がそんなことを考えている一方、信長は戸惑いながらやっとで口に入れたいづれもがあまり旨くないと感じていた。
家のチャイムが鳴り、優太が練習を終えて帰ってきた。優太は早朝突然現れた不思議な訪問客の事をまだ知らない。
ユニフォーム姿の優太がリビングルームに現れると、吾郎は織田さんだ、とだけ紹介し、早くシャワーを浴びてきなさい、と促した。
「こんにちは」
優太はざんばら髪の中年ミュージシャンのような格好をした信長に軽く挨拶だけするとすぐにバスルームへ向かった。
食事を終えた信長はまず差し迫った問題を解決する必要があった。
「吾郎よ、何度も言うが儂はどうしてこんな事が起きてしまったのか到底わからんのじゃ。いまだに夢のような気がしてならないんじゃ。もっと未来の生活を見たい気持ちもあるんじゃが、話した通り戦の途中で儂一人がいなくなっておるんじゃ。まずは一刻も早く国に戻って、で、また出直してきたいんじゃ」
現代に多少未練を持ち始めたようだった。
「殿、お気持ちお察しいたします。ですけどすぐには難しいと思います」
「すぐには難しいとは?」
「単刀直入に言って、今の科学では簡単には出来ないということです」
「そこを儂が頼んでいるんじゃ。はなから出来ないなどと申すでない」
「申し訳ありません。でも無理だと言わざるを得ないんです」
「何故じゃ?無理と決めつけんでもっと親身になって考えてくれんか」
「殿、今の文明は、失礼ながら殿の時代に比べたら圧倒的に進歩しています。それでも生身の人間が、しかも馬と一緒に時代を行き来するなんて、考えられない出来事なんです。むしろどうしてそんな事が出来たのか不思議でなりません。考えても分からないんです。残念ですが今は元の時代に戻るなど無理だと思って下さい」
「じゃが、現にむら雲と儂はここに居るのじゃ。ここに来れたということは何か帰る策もあって然るべきじゃ。そうは思わんか?」
「理屈ではそうかもしれませんが、本当に現代の科学でも解明出来ないんです。もっと私も調べては見ますけど、一日や二日で解決できる問題じゃないんです。しばらくはここで生活することを覚悟して下さい。この家に居てもらって結構ですから」
「それはおぬしの考えじゃろう。もっと知恵のある者に尋ねてくれても良かろう」
吾郎がむっとした。
「聞かなくとも、誰の目にもこの件は、明らかに異常現象なんです・よ。私だって一通り学校で学んできていますから。考えてもみてくださいよ、歴史の中で人々が時代を行き来してたら、おかしなことになるでしょう?私じゃなくて他の誰かを頼りたいのならどうぞ。勝手になさっていただいて結構ですから」
険悪なムードが流れ始めた。しかし信長も食い下がって引かない。
しばらく吾郎との押し問答は続いた。
「お母さん、お昼ご飯なあに?」
着替えを終えた優太が二階から降りてきた。
由紀が優太の食事を作りにキッチンに向かうと、吾郎は信長との堂々巡りの問答を切り上げ、優太に話しかけた。この風変わりな客は大昔の時代からやってきたらしいこと、しかしそれは現代の科学からしたらあり得ないことで、それを調べる間しばらくはこの家に一緒にいることになるだろう、と説明すると、優太は最初こそ目を丸くしながら驚いた様子だったが、その後は別段疑うそぶりも見せず無邪気にこの珍客の訪問を喜んだ。車庫には馬もいるという。動物好きの優太にとって格好の遊び相手ができて喜びは更に増した。
そして我が家に信長がいることを友達には話さないよう付け加えた。口に出したところで恐らく誰も信用しないであろうが、昨日の事件も有り、再び騒動を起こすことを避けたかった。
吾郎が優太と話している間、帰る術が無いと言われた信長は、遠く昔の昨日を思っていた。
(今頃皆で儂を探しておるかもしれん。
このままここに居ったら儂は死んだことになるに違いない。
ようやく天下が見えてきたんじゃ、一刻も早く戻らねば今迄儂がやってきたことが水の泡じゃ。じゃがはたしてそれがいつになるやら)
一人で考えに耽っていると吾郎が改めて息子の優太を紹介してきた。
信長は現代の子供にどう接して良いかわからず不器用な愛想笑いを浮かべたまま優太の顔をじっと眺めた。
(儂らの子供達に比べ何と利口そうな。
ここでは儂も子供同然なんじゃ。いや、それ以下かもしれん。
なにせ未だこの世の中の勝手がまるで分かってはおらん。
しかし国に帰るためには何か手を打たねばならん。
吾郎は無理と言っても、何か策があるはずじゃ。
まずは儂自身がこの世界をもっと深く知ることか。
その上で儂自身も他人任せでなく策を考え出さねば)
信長は吾郎に顔を向けた。
「吾郎よ。今すぐ国に帰ることが難しいことは承知した。だが、そのままにしておくわけにもいかんのじゃ。儂がいないことが知れたらまた戦が始まるんじゃ。この現代とやらの文明を儂に分かるように説明してはもらえぬか。もっとこの世界を知った上で、帰る方法を自分でも考えてみたいんじゃ。わからん事だらけのこの儂に色々教えてくれんか」
「・・ええ、それはまあ喜んで。何でも聞いてくださいよ。きっと現代の文明にびっくりすると思いますよ。今はとにかく凄いんですから。でも何度も言うようですが、それでも帰る方法は、、、」
翌日、日曜日の朝。
小学四年生の一人息子の優太を少年野球の練習に送り出すため、由紀は一旦7時に起きると、朝食を食べさせ玄関で見送った。そして昨夜の寝不足からすぐにまたベッドに戻り、再び目覚めたのは11時を過ぎた頃だった。リビングルームでは既にコーヒーの香りが漂うなかで吾郎がソファに寝転がりながらタブレットPCでニュースを読んでいた。由紀はマグカップにコーヒーを注ぐとキッチンに立ったまま仲間のお母さん達からの連絡メールに目を通し始めた。二人とも早朝の珍客、信長の今後の話を切り出したいと思いながらも、起きて早々この難題を話題にすることを躊躇い、普段と変わりない日曜の朝を過ごしていた。
その頃布団の中で信長もようやく目を覚ました。
横になりながら部屋を見渡し昨日からの状況が変わっていないことに失望した。
(一体どうしたことか。皆達は今頃どうしているであろう)
天井を見ながら昨日の激動の数々の出来事を思い返した。
(今日こそは一旦国に戻らねば)
ふん、と勢いよく起き上がった信長は、部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
しかし扉が開かない。押せども、引けどもドアはびくともしない。
ドンドンとドアを叩く音に気づいた吾郎が部屋にやってきた。
「おはようございます。良く眠れましたか?」
ドアを開けるためにはノブを回すことを知った。
部屋への出入りさえ不自由する信長は再び郷愁に駆られた。
吾郎がリビングルームに向かう一方、信長は玄関から外へと向かった。
「殿、用足しでしょうか?」
「うむ」
「トイレにお連れいたします。厠をトイレって言うんです。別の国の言葉ですけどね」
吾郎がトイレの明かりをつけてドアを開けると、便座の丸い蓋が自動的に開いた。
そしてここからまた暫く信長の思考は停止する。
「これが便器です。随分おかしな格好に思われるかもしれませんが、この中で用を足してください。大の時はこう、小はこう」
吾郎が実際に身振りを交えて説明を始めた。
「で、終わったらこのボタンを押すと水と一緒に流れます。紙が必要な時はここにありますから。ドアを開ける時はこのレバーを下げれば開きます。分からない事があったら呼んでください」
吾郎がリビングルームに戻って行った。
一人トイレに残った信長は、便座に腰かけながら緊張し息苦しさを感じた。壁に据え付けられた操作板をじっと眺めはしたものの、風呂場の出来事もあり、いたずらに触れることは控えた。相変わらず吾郎の説明は半分も分からなかった。しかしそれを考えても無駄であることを実感していた。
(ここが厠なのか。むしろ良い匂いがするのは何故じゃ)
トイレットペーパーの白さ、薄さと柔らかさに感心し、立ち上がってボタンを押した際の大量に流れ出る水に見入った。信長の時代はただ用を足す場所を厠と言っただけである。すべきことは同じなのに何故かひどく大袈裟に思えた。
「おはようございます」
リビングルームに入って来る信長を由紀は爽やかなあいさつで迎えた。
この男が織田信長本人だとは未だ信じられない。しかし昨夜の振る舞いを思い返すと、吾郎が言った通り危険な人物ではなさそうだった。
となれば、取りあえず我が家の客人としてもてなそうと考えた。
吾郎が信長をソファに座らせたところで由紀は遅い朝食の準備を始めた。
トースト、スクランブルエッグ、野菜サラダ、コーヒー、ヨーグルト。
手際よくテーブルに並べ終えると、
「さあ、食べましょう。」と信長を促し、自らも椅子に座った。
今朝の料理は昨晩とは一転して信長にとって見たことの無い物ばかりが食卓に並んでいた。
信長の戸惑う様子に、吾郎はまず自分で食べ、次にそれぞれが何であるかを説明した。その説明を聞いているのか、聞いていないのか、信長は見様見真似でフォークを使い恐る恐る口に入れては、何か呟いていた。
(餅か?・・・・いやまるで違う)
(鶏の卵か?・・・・随分雑な料理じゃ)
(焦げた茶に牛の乳だと・・・気色悪いのぉ)
(葉っぱを生で食す・・・腹を壊さんのか)
由紀は食事をしながらもさりげなく信長を観察していた。
実は敢えて今朝の朝食にこのメニューを選んだのには訳があった。
戦国時代からやってきた、という事が真っ赤な嘘であれば、食事に際してどこかで現代人の常識をうかつにも見せるはず、と思ったからである。
信長の時代には存在しない料理を出すことで、その反応を見てみたかった。
その反応はというと----。
(やはりこの人は現代人じゃないみたい。食べ方もひどくもどかしいし)
由紀がそんなことを考えている一方、信長は戸惑いながらやっとで口に入れたいづれもがあまり旨くないと感じていた。
家のチャイムが鳴り、優太が練習を終えて帰ってきた。優太は早朝突然現れた不思議な訪問客の事をまだ知らない。
ユニフォーム姿の優太がリビングルームに現れると、吾郎は織田さんだ、とだけ紹介し、早くシャワーを浴びてきなさい、と促した。
「こんにちは」
優太はざんばら髪の中年ミュージシャンのような格好をした信長に軽く挨拶だけするとすぐにバスルームへ向かった。
食事を終えた信長はまず差し迫った問題を解決する必要があった。
「吾郎よ、何度も言うが儂はどうしてこんな事が起きてしまったのか到底わからんのじゃ。いまだに夢のような気がしてならないんじゃ。もっと未来の生活を見たい気持ちもあるんじゃが、話した通り戦の途中で儂一人がいなくなっておるんじゃ。まずは一刻も早く国に戻って、で、また出直してきたいんじゃ」
現代に多少未練を持ち始めたようだった。
「殿、お気持ちお察しいたします。ですけどすぐには難しいと思います」
「すぐには難しいとは?」
「単刀直入に言って、今の科学では簡単には出来ないということです」
「そこを儂が頼んでいるんじゃ。はなから出来ないなどと申すでない」
「申し訳ありません。でも無理だと言わざるを得ないんです」
「何故じゃ?無理と決めつけんでもっと親身になって考えてくれんか」
「殿、今の文明は、失礼ながら殿の時代に比べたら圧倒的に進歩しています。それでも生身の人間が、しかも馬と一緒に時代を行き来するなんて、考えられない出来事なんです。むしろどうしてそんな事が出来たのか不思議でなりません。考えても分からないんです。残念ですが今は元の時代に戻るなど無理だと思って下さい」
「じゃが、現にむら雲と儂はここに居るのじゃ。ここに来れたということは何か帰る策もあって然るべきじゃ。そうは思わんか?」
「理屈ではそうかもしれませんが、本当に現代の科学でも解明出来ないんです。もっと私も調べては見ますけど、一日や二日で解決できる問題じゃないんです。しばらくはここで生活することを覚悟して下さい。この家に居てもらって結構ですから」
「それはおぬしの考えじゃろう。もっと知恵のある者に尋ねてくれても良かろう」
吾郎がむっとした。
「聞かなくとも、誰の目にもこの件は、明らかに異常現象なんです・よ。私だって一通り学校で学んできていますから。考えてもみてくださいよ、歴史の中で人々が時代を行き来してたら、おかしなことになるでしょう?私じゃなくて他の誰かを頼りたいのならどうぞ。勝手になさっていただいて結構ですから」
険悪なムードが流れ始めた。しかし信長も食い下がって引かない。
しばらく吾郎との押し問答は続いた。
「お母さん、お昼ご飯なあに?」
着替えを終えた優太が二階から降りてきた。
由紀が優太の食事を作りにキッチンに向かうと、吾郎は信長との堂々巡りの問答を切り上げ、優太に話しかけた。この風変わりな客は大昔の時代からやってきたらしいこと、しかしそれは現代の科学からしたらあり得ないことで、それを調べる間しばらくはこの家に一緒にいることになるだろう、と説明すると、優太は最初こそ目を丸くしながら驚いた様子だったが、その後は別段疑うそぶりも見せず無邪気にこの珍客の訪問を喜んだ。車庫には馬もいるという。動物好きの優太にとって格好の遊び相手ができて喜びは更に増した。
そして我が家に信長がいることを友達には話さないよう付け加えた。口に出したところで恐らく誰も信用しないであろうが、昨日の事件も有り、再び騒動を起こすことを避けたかった。
吾郎が優太と話している間、帰る術が無いと言われた信長は、遠く昔の昨日を思っていた。
(今頃皆で儂を探しておるかもしれん。
このままここに居ったら儂は死んだことになるに違いない。
ようやく天下が見えてきたんじゃ、一刻も早く戻らねば今迄儂がやってきたことが水の泡じゃ。じゃがはたしてそれがいつになるやら)
一人で考えに耽っていると吾郎が改めて息子の優太を紹介してきた。
信長は現代の子供にどう接して良いかわからず不器用な愛想笑いを浮かべたまま優太の顔をじっと眺めた。
(儂らの子供達に比べ何と利口そうな。
ここでは儂も子供同然なんじゃ。いや、それ以下かもしれん。
なにせ未だこの世の中の勝手がまるで分かってはおらん。
しかし国に帰るためには何か手を打たねばならん。
吾郎は無理と言っても、何か策があるはずじゃ。
まずは儂自身がこの世界をもっと深く知ることか。
その上で儂自身も他人任せでなく策を考え出さねば)
信長は吾郎に顔を向けた。
「吾郎よ。今すぐ国に帰ることが難しいことは承知した。だが、そのままにしておくわけにもいかんのじゃ。儂がいないことが知れたらまた戦が始まるんじゃ。この現代とやらの文明を儂に分かるように説明してはもらえぬか。もっとこの世界を知った上で、帰る方法を自分でも考えてみたいんじゃ。わからん事だらけのこの儂に色々教えてくれんか」
「・・ええ、それはまあ喜んで。何でも聞いてくださいよ。きっと現代の文明にびっくりすると思いますよ。今はとにかく凄いんですから。でも何度も言うようですが、それでも帰る方法は、、、」
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