あの頃の夏には

haco.

文字の大きさ
上 下
12 / 17

めぐる季節を超えて

しおりを挟む
恵美の職場は、市役所に隣接する私立図書館で事務を行っていた。
図書館周辺は、自然公園が広がっていて、ランニングをして身体を動かしている人たちも多く見られる。
小柴駅から隣町まで着くと、近所とは違っていて都会な場所なだけあって
海の香りさえも感じない、若者の街と言ったところだった。

どこにでもありふれたような景色の中を恵美は歩いて図書館まで向かった。

図書館の自動ドアが開いて挨拶をした。
「おはようございます!」室内に響き渡るぐらいの思いっきりの声を上げた。

「おはよう!恵美ちゃん。いつも元気ねえ」館長の長谷さんが言った。
白髪と長い髪を後ろで纏めている。目立つほどの白髪で老眼をかけてる館長は、館内のブラインドを光をかざす為に開けた状態にしていた。

「恵美ちゃんも手伝って」

「はい」

広い館内のブラインドを開ける工程だけでもかなりの作業になっていた。

【美術・古書コーナー】の近くのブラインドを開けると本にも光が差し込んでくる。
少し埃が舞う本と光に引き込まれていく姿をいつも見ていて、この場所に恋焦がれていた。

「んー。気持ちいい」手を天井につく勢いで伸ばしてこの窓から見える外の景色を見た。

「優斗さん、おめでとう!」遠くの地に向かって夢人の彼に向けて言った。

「彼氏いるの?」通りかかってきた館長に言われると

「え!違います!」手を振りながら誤魔化すようにすると
「友達というか・・・」

誤魔化せれてないのに、館長は気づいている。

「あの。。。館長ってミステリーとかって信じますか?」

「え?唐突ねえ」

「私。。信じてもらえるか分からないけど、夢人がいるんです」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

処理中です...