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むかし話

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昔々、中学校の頃の三浦宗介は片思いをしていた女性に初めての告白をした。
相手は、創立10年も経つ醤油作り工場の社長の娘。「新谷信子」


最初のときめきは、中学の頃の隣のクラスに一際目立つお嬢様が転校してきたことだった。
他のクラスの男たちも見にくるくらいの美しい女性だった。

木造建ての学校内に走る音にきしむ音だけが鳴り響いていた。
目的は、隣のクラスの転校生。

宗介もこそってタイミングを計らっては廊下越しで見るぐらいしかできなかった。
昼休みも帰宅の時もタイミングを見て、マドンナの顔を見ないと落ち着かないぐらいだった。

家に帰るなり、いつもため息ばかりが部屋じゅうに響き渡る。

「あー、可愛いすぎる。やばいな!この気持ち」宗介はいつもモヤモヤしていた。
会話もしたことがないから特に。

布団の上でバタバタと身体を動かしていると

「うるいさいぞ!宗介!」2階建の家なだけによく下の階まで響くものだ。

父の源四郎が声を挙げられてきた。

口を膨らませながら「あー。オヤジもうるさいなー」小さな声で聞こえないように言う。

気づけば時計の針は夕方17時を指していた。

「隣町まで届けものしてくるが、お前も来るか!」
源四郎は、宗介を誘う。

「一人にさせて!」背中を向けながらもつけはなそうとする。

「知っておるぞ!宗介!お前恋をしてるな」突然、見透かされたように言われた。

「相手はどんな相手だ!言ってみろ」

「オヤジには教えないよ」

2階に上がる、段中で源四郎は顔だけ出していた。

「とりあえず来い!一人で持ちきれないからな」
悩むより、動けと言わないばかりだった。


三浦家、先祖代々で継がれている農家。
源四郎の父から継ぐことを生まれながらにして言われ続けてる。

愛媛のとある自然と川が織りなす景色の中に民家は江戸の頃からあり続けていた。

源四郎は、東京やら福岡やら都会へと出向いては採れたての野菜等を出荷をしにいくついでに息子の宗介を
引っ張り出し、荷物運びをさせることはよくあることだった。

今日も、父の付き添いで仕方なく近場の売り場まで向かうことにした。

「宗介!言いたいことあるなら吐かないといけんぞ!」
草道をかき分けながら、台車をカラカラと動かしながら父ととなり町まで向かった。

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