遠い記憶、遠い未来。

haco.

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目を覚ますと、駅内の外から嵐のように風が荒れていた。
吹きつける風が駅内にも入り込んでくる。

夢から現実に戻ったセイカはその光景に

「そんな・・・。彼が待ってるのに」

瓦礫が勢いよく渦巻き状の風に乗せられて高くあがっていく、
大雨と嵐が轟音をたてながら、行くものを拒むかのように抵抗していた。

「もうすぐ、なのに・・」

悔しさが込み上げてくる。

その時、海の向こうから声が聞こえてくるような音が聞こえてきた。


「ホオーーーーーーーー‼︎」


「この声は・・・・くーちゃん?」


外風の向こう側を目を凝らしめながら見つめていると

海中から煙が待っているのが見えた。

「くーちゃんだわ」

でもこの状況ではまったく進めない。
どうしたら良いか考えてみた。


《さあ・・・来るんだ・・・》

あの夢であった彼の声だ。


「透吾・・・透吾なの?」

その声に導かれるまま、駅内を出た。
吹きつける風に身体が支えられず、身体ごと持って行かれそうだ。

まだ聞こえてくる。あの声が・・・

《身を任せるんだ。さあ・・・・》

風の勢いはさらに増していく。風はセイカの身体を持ち上げながら、空高く舞い上がっていく。


「う・・・!」

目を開けると海の上に浮いている・・・
いや、実際には、竜巻に飲まれている。身体ごと回り続ける。

竜巻はさらに複数の風を作り、さらに大きな竜巻へと変化していく。

セイカは、身を委ねるとそれはある島へと持ち上げられて行った。

「あそこは・・・北海道ね」

「そういうことなのね。これはあなたが作り出している自然の力なのね」

《セイカ・・・君はずっと孤独だった。私の分身としてこの世界を果たしてくれた》

《私は待っていた。ずっと、そのために自分を作り出すことにしたんだ。自然に任せてね》


「作り出す?」

《私自身の身体は、長い期間の安眠が必要だった。そのために私は考えたんだ。合理的に自然的に
働きかけたんだ。私が作ったこの世界で、科学的な力でもう一人の自分を作ることを》

「すべてがあなたの計画だったってこと?」

《そう・・。この世界を正すために》

「なら、なぜ私の家族までも巻き込んだの!」

《それも自然の摂理》

「摂理なんて言わないで・・・失ったものがたくさんあるのに」
涙がこぼれながらセイカは訴え続ける。

《過去はまた作り出すこともできる、僕の手なら》

「そもそもなぜ私なんかを・・」

《私は産まれた時、ただの物質そのものだった。もう一つの物質を作り出したのが君なんだ》

「あの夢の世界でみた、白世界のはじまりのこと?」

《そう・・・元もとが別の物質がぶつかり合ったことがこの世界のはじまりなんだ》


セイカの身体が、次第に、重力の流れに任せながら、北海道の地へと向かっていった。

《さあ・・、あとの話は神居古潭で待ってるよ》

セイカの意識はふっと失っていった。

気づけば、函館の「立待岬」の崖の上に寝ていた。




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