遠い記憶、遠い未来。

haco.

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絶望の崖

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山形新幹線の線路上を歩いていた、気づけば「栃木県宇都宮駅」まで着くまでに3ヶ月は経っていた。

瓦礫の灰が、目の前でちらつかせている。

目を瞑ると、咳まで出てしまう始末だ。

「ケホケホ・・・」


東京ほどの被害はないだけあって、廃墟化したコンビニやスーパーが立ち並んでいた。

探せば、食料はなにかありそうだ。

瓦礫の道に足を忍ばせて歩いていくと、途中でつまづきそうになった。

昼間の晴れた日差しを浴びながら、進んでいく。

リュックからマップを出して、近くになにがあるか歩きながら確認してみた。

横断歩道で足を止める。

「この先にありそうね」ため息をつきながらセイカは言った。


「馬場通り」と表記した看板の下を歩いていくと

左右に塞がれたビルの合間に光が差し込んできていた。

陰になる場所と光をかざす場所の温度差は肌で感じるほどギャップがはげしかった。
何年前だろうと思える看板も複数存在していた。

「マルタニショップ」「精米屋」「ブックセンター」

そんな中、コンビニが一つだけ存在していた、

「あったわ、なにか食べれるものあるかしら」

「とりあえず、米は必要ね」


誰もいない店内は静けさだけが広がっている、セイカの声だけが響き渡っていた。

米・お酒コーナーに綺麗な状態でお米が置いてある

「あったわ」

リュックに入っている、米用の袋に詰め替えながら思っていた。

2000年も前であったら、立派な犯罪者になっていただろう。
もう人のいない世界では意味がない。

でも、残してくれた過去にセイカはつい懐かしさに思いふけってしまう。

このところ、そんなことばかりを考えてしまう。

 
           ※

「ねえ、蓮」

「ん?どうしたの?」

ミユの返事に蓮は返した。

「この映画って絶望的すぎない?」

「だって、それがキモじゃないの?この映画の」

休日に、借りてきたDVDを2人で鑑賞していた。

ホラーサスペンス的な要素でしかない映画を蓮が選んだ。
タイトルからして絶望でしかない。

『絶望の崖』

「なんでこれを選ぶのかしら・・」

「だって、ミユだって興味があるふうに言ってたからだろ」

「そりゃあ、まあ嫌いではないけどさ」
「ここまで絶望と思わなかった。」

よくあるゾンビ映画ではあるが、最後まで生き残った主人公は、ほんと崖に立たされて
背後から迫るゾンビたちに襲われるというデットエンドだ。

「でもさ、ほんとにこんな世界になったら、あなただけは生き残れるわよ」

「それは否定できないけどさ」

「言わば反則ね。蓮の存在じたい」




           ※

現在のセイカにとって、ほんとにそうなってしまった。
ミユの言う通り、この世界は自分1人になっていた。

「でもまあ、ゾンビがいたとしたら、友達になれたのかも」

クスっと笑いながら、今立っているコンビニを後にした。

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