遠い記憶、遠い未来。

haco.

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ひと時の場所

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夏から秋に変わる時期には自然は変わりなく紅葉へと染まっていた。

街並みも建物よりも自然の力の方が優っている。
原宿の竹下通りだったはずの道も今ではすっかり朽ち果てていた。

瓦礫の山の合間を歩いていくと、人工石ではない天然石に変わってきた。

「ほんとにここ、竹下通りだったのかしら」

どの場所を切り取っても、岩と自然だけが存在している。

息を呑みながら、歩いていく。

「ごく・・・」

持っていたボトルももうほとんど尽きている。

歩く度に、喉が渇いていた。

「どこか、湧水ないかしら」

耳を澄ましてみるが、河川の音がまだ聞こえてこない。
ただ、鳥たちの囀りだけが聞こえてくるだけだ。



3時間かけて歩いていると、茂みの奥から硫黄の匂いが久しぶりに漂っていた。
この匂いはどこか、天然温泉が沸いているのかもしれない。

コンパスとマップで確認をしてみる。

方向からするとこの凸凹道をもっと先に向かうと、温泉地にたどりつく。
つまり、旅館があったのかもしれない。



「はあはあ・・・見えてきた」

湯気が立つ場所が目立つように見えていた。

自然の流れで削れていった岩肌からサラサラと流れる水たちが下流へと流れる度に湯気が
立っていた。

1年振りの温泉。
心の中では「入りたい」衝動へと動かされる。

自然に湧き出ていた天然温泉がO形に作り出された岩にしっかりと溜まっていた。

吹き出す汗をやっと洗い流せる。

服を脱いで、身体をゆっくりとお湯に入った。

「ふあ~、気持ちいい」

周りには、廃旅館があることから、もしかしたら
旅館内にあった天然温泉だけがずっと流れ続けていたのかもしれない。


いつのまにか、「心」は満たされていた。



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