遠い記憶、遠い未来。

haco.

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夏の景色

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岡山駅から姫路駅まで徒歩で、16日は経っていた。

ジリジリと暑さが肌に照りついてくる夏の季節、直射日光が当たるために綿生地のチャコールのパーカーを羽織って歩いていた。

動くたびに汗を掻いてくる。影になるところを探しては休んでまた歩き出す。

姫路市街の倒壊したコンビニから、ウォーターのペットボトルを4個ほどリュックに詰めて、休んでは
飲んでいた。

「暑いわ・・・」

太陽の眩しさを手で隠しながら、空を見上げる。

「鳥たちはいいわね。。」

大空を高く舞い上がっている鷹が鳴き声を鳴らしながら、獲物探しに熱心だ。
おそらく、あの時に知り合った子なのかしら?と思いも目を凝らして見る。
焦茶色の特徴のある鷹だったから、印象的だった。ただ、目の前を飛行している鷹は焦茶に白色が少し
混じっている。違う種類の鳥だった。

今頃、どのあたりを飛行しているのだろう。

地に目を戻すと姫路市内の景色は半分が海に占領されていた。
倒壊を繰り返し、何度も津波の影響を受けたのだろう。

マップで見る限り、兵庫県は姫路市に位置していた。目の前には石段がある横の柱に「廣峯神社」
と表記されていた。

石段を上がると、四国方面の方を向いてみた。

姫路城があった形跡も跡形もなく海の中へと沈んでいた。
場所が物語っていた、どれだけの被害をうけていたのかを。

そしてこの場所から向かえるルートは、途中、山を越えなくてはならない。

過酷になることを想定して向かわないと行けない。

北方向へと目指すと、ほとんどが森林化していた。

そしてセイカは思っていた。

東京に向かうほど、街という景色はほとんどが存在していないことを。
おそらく火山の噴火の影響なのだろうか。


歩き続けると、どこからか小川のせせらぎが聞こえてきた。


地図で見ても地形が変わり過ぎているために、コンパスで方向を確認する。

「確かにこの先を進めば北方向だわ。」

川の音を探しながら歩いていると、茂みから開けた場所へと抜けた。
細い銀線みたいにキラキラ光って見える川が森を裂いて流れていた。

「川だわ・・・。少し休憩しようかしら」

暑さのあまりに服を脱ぐと岩からまっさかさまに水にとび込んだ。


「気持ちいいわ・・」


らっこのような体勢で浮き上がると、気持ちいい冷たさを潤すように目を閉じて
感じていた。

時折、谷川の魚の跳ねる音が聞こえては消える。

水面上に起き上がると、髪をかきあげながら水が弾いていた。

髪を絞りながら、頭にかき集めながら小岩の上に人魚姿のように座った。
自然の力で織りなすこの景色に見惚れていた。

ただ、一羽の鷹の高らかな鳴き響きが広がりながら。

この瞬間を噛み締めていた。
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