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命の種
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早朝、炊きたての白米を握り、3食分のおにぎりを作った。
おにぎり以外のおかずは、あまり保存が効かないため、なかなか手に入らない。
ただ、一つだけの願望があれば少しレパートリーが増えるかもしれない。
動物が生存しにくいこの世界。イノシシや豚などの生き物は存在しなくなった。
その為に必要なのは人間が残していった冷凍室。
冷凍室は災害にあった場合でも、密閉状態であれば水は入ることはないはず。
ある程度の精肉や野菜が眠っているかもしれない。
昨日、調べたルートで行くとこの公園からさらに北方向に向かうと、スーパーがあることを示していた。
そこに行けば、食料があるかもしれないとセイカは思った。
リュックを肩にかけながら歩いていく。
真備総合公園を抜けると、目の前に茂みが広がっていて茂みの隙間
から建物の瓦礫が散乱していた。
瓦礫をうまく横切りながら過ぎていくと生い茂っていた木々も少し青空を見渡せるようになってきた。
今日という日の澄み渡る青空の下でいつものような風景を見渡しながら瓦礫の中を歩いていった。
時折、桜風吹が通りかかると少し肌寒さと暖かさが混じりながらも感じていた。
もう、春の訪れも終わり頃だとセイカは感じていた。
走行していくと茂みを拔けると、団地跡が残っていた。
倒壊した建物がドミノ倒しで支え合っているが、ほとんどが砕けていた。
おそらく、かなりの広範囲に団地があったのだろう。
瓦礫の隅々に自然の根っこが絡みついていた。
瓦礫の隙間から動く影が見えた。
「キキ・・・」
「なんなのかな?」
「おサルさんのような鳴き声に近いような」
セイカは、腰を低くして近づいてみた。
瓦礫まで近くと、影は逃げていった。
「キキ・・・」
「気づかれたかあ」
その時だった。
瓦礫上に小さな存在が座っていた。
昔、動物図鑑で調べたことがあった。
「ホンドテン」と言われるイタチ科の動物が座っていた。
見た目は、猫と犬を足した顔にも近いが、近づいてみると
首をかしげてきた。
「キキキ・・・」
「可愛い!!」
「あなた達はどこから来たの?」
言葉で伝えれなくてもセイカは動物達の心の声を聞くことができる。
「そうかあ・・・動物園にいたのね。」
2000年前の大型津波の中で流れに流されてたどりついたのが、この地。
それでも子孫繁栄を繰り返してずっと生き続けてきた。
イタチ科の動物は水難には強いことは確かだった。
イタチ科の動物といえばラッコもそうだ。
セイカに近づいてくるとセイカの首もとに顔をうずくめてきた。
「くすぐったい!」
久しぶりに動物と触れていて嬉しい気持ちになった。
「他にも生存している動物たちはいるのかな?」
心の中に聞いて見ると、返答はなかった。
ただ、食べ物には困っていなかったようだ。
ネズミだって生きていたし、昆虫なども食用としているイタチ科とすれば、困らないはずはない。
「キキキ・・」
気づくと、3、4匹、集まってきた。
おそらく家族なのだろう。
遠くから呼んでいる、おそらく親なのだろう。
群れをなして、元の場所へと戻っていくと肩に乗っていた、ホンドテンも親元に戻っていった。
セイカはこの世界での明るい未来が少し見えたような気がした。
この世界は、新しい「命の種」を作っている。
もうすでに、人間のいない新世界になっていることを。
おにぎり以外のおかずは、あまり保存が効かないため、なかなか手に入らない。
ただ、一つだけの願望があれば少しレパートリーが増えるかもしれない。
動物が生存しにくいこの世界。イノシシや豚などの生き物は存在しなくなった。
その為に必要なのは人間が残していった冷凍室。
冷凍室は災害にあった場合でも、密閉状態であれば水は入ることはないはず。
ある程度の精肉や野菜が眠っているかもしれない。
昨日、調べたルートで行くとこの公園からさらに北方向に向かうと、スーパーがあることを示していた。
そこに行けば、食料があるかもしれないとセイカは思った。
リュックを肩にかけながら歩いていく。
真備総合公園を抜けると、目の前に茂みが広がっていて茂みの隙間
から建物の瓦礫が散乱していた。
瓦礫をうまく横切りながら過ぎていくと生い茂っていた木々も少し青空を見渡せるようになってきた。
今日という日の澄み渡る青空の下でいつものような風景を見渡しながら瓦礫の中を歩いていった。
時折、桜風吹が通りかかると少し肌寒さと暖かさが混じりながらも感じていた。
もう、春の訪れも終わり頃だとセイカは感じていた。
走行していくと茂みを拔けると、団地跡が残っていた。
倒壊した建物がドミノ倒しで支え合っているが、ほとんどが砕けていた。
おそらく、かなりの広範囲に団地があったのだろう。
瓦礫の隅々に自然の根っこが絡みついていた。
瓦礫の隙間から動く影が見えた。
「キキ・・・」
「なんなのかな?」
「おサルさんのような鳴き声に近いような」
セイカは、腰を低くして近づいてみた。
瓦礫まで近くと、影は逃げていった。
「キキ・・・」
「気づかれたかあ」
その時だった。
瓦礫上に小さな存在が座っていた。
昔、動物図鑑で調べたことがあった。
「ホンドテン」と言われるイタチ科の動物が座っていた。
見た目は、猫と犬を足した顔にも近いが、近づいてみると
首をかしげてきた。
「キキキ・・・」
「可愛い!!」
「あなた達はどこから来たの?」
言葉で伝えれなくてもセイカは動物達の心の声を聞くことができる。
「そうかあ・・・動物園にいたのね。」
2000年前の大型津波の中で流れに流されてたどりついたのが、この地。
それでも子孫繁栄を繰り返してずっと生き続けてきた。
イタチ科の動物は水難には強いことは確かだった。
イタチ科の動物といえばラッコもそうだ。
セイカに近づいてくるとセイカの首もとに顔をうずくめてきた。
「くすぐったい!」
久しぶりに動物と触れていて嬉しい気持ちになった。
「他にも生存している動物たちはいるのかな?」
心の中に聞いて見ると、返答はなかった。
ただ、食べ物には困っていなかったようだ。
ネズミだって生きていたし、昆虫なども食用としているイタチ科とすれば、困らないはずはない。
「キキキ・・」
気づくと、3、4匹、集まってきた。
おそらく家族なのだろう。
遠くから呼んでいる、おそらく親なのだろう。
群れをなして、元の場所へと戻っていくと肩に乗っていた、ホンドテンも親元に戻っていった。
セイカはこの世界での明るい未来が少し見えたような気がした。
この世界は、新しい「命の種」を作っている。
もうすでに、人間のいない新世界になっていることを。
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