遠い記憶、遠い未来。

haco.

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桜の下で

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広島県は、福山市まで歩き続けたセイカは少し足を緩めた。

息があがりながら、線路上で座り込んだ。

腕時計の日付を確認すると、3/10の表示になっていた。

春日和の風吹が髪をなびかせた。手ぐしで顔にかかった乱れ髪を自然に流した。

頭に何かがフワっと降りかかると、手に取ってみた。

桜ビラが一枚落ちてきたようだ。

「わあ。キレイ」

周りを見ると桜並木が線路わきに並んでいた。

風にさらされながら、桜は散ってゆき、それでも生き生きと咲き続けていた。

また、この線路の海側に桜風吹が流れていく姿に自然の美しさにセイカは見とれていた。

朝握っておいたおにぎりと漬けておいた沢庵を食べながら、この景色に見とれていた。

海側から聞いたことがある鳴き声が聞こえてきた。

「ボォーー!!」

「この鳴き声は、くーちゃん!」

腰を立たせると望遠鏡で覗き込んでみる。


白い泡があがっている、くじらのくーちゃんの息遣いだ。


「くーちゃん!!覚えてる?私よおー」

届くように叫んでみた。

また鳴き声で返答してくれた。

久しぶりにあうセイカは、海沿いまで走ってゆく。

「大門駅」から町を抜けて、瓦礫に躓きそうになる、それよりも早く会いたかった。あのくーちゃんに。

防波堤まで来るとくーちゃんは、近づいてきてくれた。

「元気だった?」

白い鼻息で返答してきた。

「良かったあ、また会えるなんて嬉しいよ。」

久しぶりに笑顔になっていた。

また白い鼻息を遠くから聞こえてきた。

「え!」

クジラの群れが4頭泳いでいた。

「家族がいるんだね」

「くーちゃんは幸せものだね、家族によろしく伝えておいてね」

また、頼ろうとしたけど。私がいては迷惑になるだろうとセイカは思っていた。

〈また、会えるさ!いつでも、味方だよ〉


「くーちゃんの声なの?」

頭の中に聞こえてきた。

くーちゃんは、群れに戻っていく。

その時、ふと
「まさか、、レンなの?」

あの時、レンは言ってくれた

「また来世で会おう」と。

涙が頬を流れながら、セイカは思っていた。

「私たちは、幾度の歴史の中でも、変わらないままだ、また会おうね、レン」


この旅には意味があったようだ。

二人にある絆があるように。



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