遠い記憶、遠い未来。

haco.

文字の大きさ
上 下
84 / 121

火山地帯

しおりを挟む
6151年、1月。広島市までやっとこれたと安堵していた。

長谷川ミユと出会った最初の場所だ。

ミユが務めていた銀行は、駅から見える街路樹を拔けると左側に見えてくる。
出逢ったあの日は、夏日の昼間。

東京での絶望に満ちた父親との苦闘の日々、自分の存在に否定する日々を味わいながら、東京から逃げてきた。

遠くならどこでいいと思いながら転々とテレポート<瞬間移動>しながら、日本中を駆け巡っていた。
旅をいくつもの重ねながらも心は不安でしかなかった。

どこにも自分の休める安息の地などない。
そんな毎日だった。

そんな時、広島に訪れた時に立ち寄った銀行でミユと出会った。
受付をしていてた。
無垢な笑顔で対応をしていたミユにただ受け流していたが。

あの時、ミユの顔は優しい瞳に優しく言ってくれた。

「ちゃんとご飯食べてくださいね」

この言葉になぜか心が救われたような気がした。

それから幾度も会うことになった。

重ねるたびに、二人の距離を近づいていく。

そして、結婚した。

この地で、この広島で。

冬風を肌に浴びせ、現実に戻されながら寂れた街並みを進んでいく。

「まだ、冷えるわね・・・」

腕時計の日付を見ると「1/15」と表示されてる

「1月かあ・・・寒いのはわかるけど。どこか温めれる場所があるのかしら」

いつものダウンを羽織ってはいる。でも寒さはそれでもこたえる。
腕を腕にがっしりと握り締めて寒さを抑えようとしていた。

「どこかに温泉があればいいなあ。。。」

広島市中央から見る景色を見渡してみた。

倒壊した建物ばかりが目の前に広がっている。

ふと、気になる異形が存在していることに気づいた。

「なんなの?」

リュックから地図を引っ張り出して開いてみる。。

「白木町」の方面にあるはずのない火山が存在していた。

地殻変動の影響なのだろう。

繰り返す地震と津波が収まるまでには2年はかかっていた。

その際に新しい火山が活性化していったのだろう。

聳え立つ火山の高さは、富士山ほどではないが確かにそこに存在していた。

活性化して吐き出してきたマグマの塊が、町全体を平面化にさせていた。

2時間ほどかけて白木町まで進むと、まだ活動化している自然にできた穴場から
白い煙を吐き出していた。左右を見渡して回ると、硫黄の匂いが立ち込める。

セイカは、淡い期待を願っていた。

地殻変動による温められて湧き出る天然温泉があることを。

こういう時ほど「ありがたい」と思ってしまう。火山地帯には地中から湧き出る温水や鉱水から温泉源があるからだ。

冷え切った火山地帯の隅々に少しだけ茂みがあった。

耳にかすかな音が聞こえてきた。

川のせせらぎが。

まるで自然の音楽を耳にするように。

足をさらに進めると温かい熱気が少しだけ肌に刺してきた。

「あった。やっぱり温泉だ!」

石積みで重ねられて囲まれて沸々と湧く泡から湯気が発していた。

寒さにせいで早く入りたい。

裸にタオルが巻いてさらに肌に寒さが冷えついていく。

「さ、さむい・・」

足早に温泉に浸かった。


「やば!温かすぎ!気持ちよすぎ!」

自然にできた温泉に浸かりながら、森林に浴びる木漏れ日がセイカを照らしてる。

小鳥のさえずりと川の流れる音を感じながら、まったりとした。

「なんて美しいの」









しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~

一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】 悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……? 小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位! ※本作品は他サイトでも連載中です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...