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瓦礫の街
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線路を歩いていると、久しぶりに匂ってくる海の香りを鼻に吸い込んだ。
潮の匂いと秋晴れの紅葉の匂いが絡みあっていた。
肌にヒヤっとした感触を感じてくる。
砂利道を踏みながら、進んでいくと長府八幡町内に入ってきた。
もう何百年になるのだろう。
ミユと一緒に長府八幡町に行ったものだ。
近くのそば屋に立ち寄り、ボートレースまで見に行った。
ミユは賭け事は嫌いなところがあった。
でもボートレースだけはよく見にいっていた。
賭けることなく、ただ見ているだけで楽しいと言っていた。
その帰りに、新下関駅に戻り、駅弁を準快速の電車で食べては福岡まで満喫して帰っていった。
今では、人一人いない街並みに変わり果てている。
あの時の笑顔は今でも忘れられない。
地図を見ながら、どこかにアウトドア店がないか探してみた。
指で辿っていくと市内に一件だけあった。
そこまで歩くには、1時間半ほどは掛かる。
近辺に総合公園があるが今はどうなっているのか、わからないがテントを張れるかもしれない。
それに準備をしないといけないことがあった。テント用具だ。
以前に使っていたテントはやぶれもあり、傷んでいた。
そろそろ新しいのに変えないと。
予定を決めながら、歩幅を広げて海沿いの道を歩いていく。
1kmほど歩いていくと海側から津波の影響を受けて、列車が軽く線路に乗ったまま傾いていた。下線の鉄線がよじ曲がっていた。
ボロついた列車の隙間から、木の根っこが絡みついていた。
車体には苔が張り付いている。
周りの町並みもほとんどが、倒壊していた。
やはり、店も崩れている可能性がある。
1時間ほど歩いて、総合公園までたどり着いた。
瓦礫による被害は少なかった。
とりあえず今日は、公園でテントを張ろう。
時計を見ると16:30。
慣れた手つきで骨組みを立てて、カバーを掛けた。
「よし!これでよし!」
「このあたりを少し探索してみようかしら」
セイカは、ある程度ものだけをリュックに詰め込み出掛けた。
まずは地図に記されていたアウトドア店。
総合公園の入り口に戻ると交差点がある、ここからそんなに離れてない位置に店があるはずだ。
大道路の真ん中を歩きながら、左右をぐるっと見渡しながら探した。
「あっ!ここだ!」
「bears shop」と表示されたカントリー調の看板が倒れていた。
建物は瓦礫の山となっていた。
敷地内に入ると用具は散乱していた、テントコーナーのプレートを発見した。瓦礫の石をどかしながら、1人用のテントを探してみる。
長い筒の中に骨組みとカバーがセットにしてあるのを見つけた。
頑丈な上に、まったく損傷した形跡もない。
これは使えそうだ。
あとはガスボンベだ。
目的の物を揃えると新品のリュックに詰め込み、テントまで戻った。
日が沈んでは、暗い中で、バーナーに火を灯して20時頃には食事を終わらせて、詰め込んできた水で容器を洗った。
ふと、洗いながら持ってきた、山内透吾の記録ノートのことを思い出した。
焚き火に当たりながら、椅子に腰をかけてまた、続きを読もうとスケジュールを立てていた。
「よし!」
ペラっとページを開いた。
潮の匂いと秋晴れの紅葉の匂いが絡みあっていた。
肌にヒヤっとした感触を感じてくる。
砂利道を踏みながら、進んでいくと長府八幡町内に入ってきた。
もう何百年になるのだろう。
ミユと一緒に長府八幡町に行ったものだ。
近くのそば屋に立ち寄り、ボートレースまで見に行った。
ミユは賭け事は嫌いなところがあった。
でもボートレースだけはよく見にいっていた。
賭けることなく、ただ見ているだけで楽しいと言っていた。
その帰りに、新下関駅に戻り、駅弁を準快速の電車で食べては福岡まで満喫して帰っていった。
今では、人一人いない街並みに変わり果てている。
あの時の笑顔は今でも忘れられない。
地図を見ながら、どこかにアウトドア店がないか探してみた。
指で辿っていくと市内に一件だけあった。
そこまで歩くには、1時間半ほどは掛かる。
近辺に総合公園があるが今はどうなっているのか、わからないがテントを張れるかもしれない。
それに準備をしないといけないことがあった。テント用具だ。
以前に使っていたテントはやぶれもあり、傷んでいた。
そろそろ新しいのに変えないと。
予定を決めながら、歩幅を広げて海沿いの道を歩いていく。
1kmほど歩いていくと海側から津波の影響を受けて、列車が軽く線路に乗ったまま傾いていた。下線の鉄線がよじ曲がっていた。
ボロついた列車の隙間から、木の根っこが絡みついていた。
車体には苔が張り付いている。
周りの町並みもほとんどが、倒壊していた。
やはり、店も崩れている可能性がある。
1時間ほど歩いて、総合公園までたどり着いた。
瓦礫による被害は少なかった。
とりあえず今日は、公園でテントを張ろう。
時計を見ると16:30。
慣れた手つきで骨組みを立てて、カバーを掛けた。
「よし!これでよし!」
「このあたりを少し探索してみようかしら」
セイカは、ある程度ものだけをリュックに詰め込み出掛けた。
まずは地図に記されていたアウトドア店。
総合公園の入り口に戻ると交差点がある、ここからそんなに離れてない位置に店があるはずだ。
大道路の真ん中を歩きながら、左右をぐるっと見渡しながら探した。
「あっ!ここだ!」
「bears shop」と表示されたカントリー調の看板が倒れていた。
建物は瓦礫の山となっていた。
敷地内に入ると用具は散乱していた、テントコーナーのプレートを発見した。瓦礫の石をどかしながら、1人用のテントを探してみる。
長い筒の中に骨組みとカバーがセットにしてあるのを見つけた。
頑丈な上に、まったく損傷した形跡もない。
これは使えそうだ。
あとはガスボンベだ。
目的の物を揃えると新品のリュックに詰め込み、テントまで戻った。
日が沈んでは、暗い中で、バーナーに火を灯して20時頃には食事を終わらせて、詰め込んできた水で容器を洗った。
ふと、洗いながら持ってきた、山内透吾の記録ノートのことを思い出した。
焚き火に当たりながら、椅子に腰をかけてまた、続きを読もうとスケジュールを立てていた。
「よし!」
ペラっとページを開いた。
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