遠い記憶、遠い未来。

haco.

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しぶき

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6150年9月、歩き続けてようやく海門海峡まで着いた。

海の香りを感じながら、歩いているとまた現実に戻された。  

「え、」

最初の一言がこれだった。

架かってある巨大な橋は、倒壊していた。

海から崩れた柱が突き出していた。

道路そのものも全く海の底へと沈んでいた。

それもそのはずだ、大地震に巨大な津波に破られれば崩れる。

いくすべを失くして、絶望的だった。

セイカはふとテレポートができるか試してみたが、まったく反応しなかった。

「せめて、出来れば良かったのに・・・」


疲れていた足からヘトヘトと崩れて座りこんでしまっていた。

遠くに見える本土に目を向けて
「そんなあ~」

悲しくて仕方がなかった。


セイカはため息混じりに悩みながらも考えてみた。
どこかに船舶があるはずだ、とりあえず日本海の沖周りを歩いて探してみた。

ほとんどの船は横に倒れていた。

防波堤に倒れてるのも目立つように存在していた。

密集した状態で船が15体ほどぼろぼろに寄り添いながら壊れていた。

「ぐう~」

そういえばまだなにも食べてなかったことに気付いた。

腕時計を見ると昼の13時になろうとしている。

浜辺で折りたたみイスを開いて、バーナーを出した。

途中で倒壊されたスーパーから水にも被害されていなかった米を仕入れていたので、1人用ステンレスの鍋に水と米を入れて沸かして30分ほどでご飯が出来た。

炊いたばかりのご飯を器に入れて、レトルトのみそ汁との組み合わせで、日を遮れる木の下でゆっくりと食べていた。

ここから見える海は街は倒壊したとしても美しさを持っていた。
自然の景色はどこでも一緒だ。

食べ終わると、近くの川で器の汚れを洗いにいくことにした。

川のほとりまで歩くと、流されて川海の合間で崩れている家が並んでいた。
さらに奥地に進むと川が枝分かれていた。

なるべく細い川を歩くと、そこで足をおろした。
器を洗いながら、映し出された自分の姿を見ていた。

どこからどこまでもセイカの姿だ。蓮だった姿形はまったくない。

ガッチリした体系だったはずなのに、今は小柄化していた。
胸の膨らみもあり、なぜかコンプレックスを感じていた。

今まで見てきたセイカの記憶がそうさせたのかもしれない。

そんなときだった。

遠くからなにが水しぶきを立てる音が聞こえてきた。

洗い終わった器をリュックに入れて肩にかけながら歩きはじめた。

海まで近づいていくとさっきと同じ静寂に満ちていた。

「なんだ・・なにもいないじゃん」

残念そうな顔をしながら歩いていると


「ザブーーーン‼」

水しぶきとともに現したのは、クジラだった。

「うわ!」

思わずびっくりして腰を抜かしいた。

そうか・・・海の生物は、普通にいるんだと改めて思っていた。


やはり生で見るクジラはでかい、圧巻していた。

浜辺を歩きながら、見ているとクジラはセイカについてきてるようだった。

鳴き声を慣らしながら。
 
「私になんでついてくるのかしら」

先程の防波堤の所まで来ると防波堤に寄り添うようにピタリと動きを止めた。

「私を乗せてくれるの?」

また鳴き声で応答をした。

クジラはセイカの考えがわかるようだった。

そういえばサファリでもいろんな動物と触れ会ってきたんだった。

動物達は、セイカの存在を知っているようだ。

この星の創造主であることを。

「そうか・・・。」

思いつくことはあった。


また鳴き声が響き渡ると

「わかったわ。隣の島まで送ってくれる?」

また鳴き声で返答をした。

「ありがとう」

セイカは、クジラの背中に乗って、本土へと向かった。
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